JR石北本線の現状と路線存続へ

JR北海道の現状を知りたいので、6月21日発売の月刊誌「鉄道ジャーナル」(8月号)を購入した。その号では「北海道夏の陣」としてJR北海道を特集し、最初のページで5月9日(火)の網走発(午前5時57分)特急「オホーツク2号」の旅行記石北線特急にキハ283系が再起ー新装『オホーツク2号』の足取りは如何に」が掲載され、その中で北見駅から遠軽高校に通う生徒たちの通学状況が書かれていた。

〈通学の高校生も特急に乗る〉

6時46分、北見着。さすがに20人ほどが列を作っており自由席からの下車も1人確認できた。私が乗っていた1号車にも5人乗ってくる。自由席の列に数人の高校生が交じっていたことには、ちょっと驚く。結論から言うと遠軽の高校へ通う生徒。特急でも1時間弱かかる長距離通学だった。時刻表を確認してみると、この時間帯に北見から遠軽まで直通する普通はなく、北見7時30分発の4652Dは西留辺蘂止まり。遠軽7時54分着の4650Dは生田原始発で、常紋峠を越える区間が結ばれていない。通学のためには「オホーツク2号」に乗るしか方法がないのであった。

こうしたダイヤは最近生じた例かと思って古い時刻表をさかのぼってみたが、昭和30年代から、北見より遠軽へ向かえる朝の普通列車遠軽着9時30分頃の列車しかなかった。このスジも現在、廃止されており、北見10時27分発の特別快速「きたみ」が普通の始発列車だ。教育環境の変化からか、いつしか北見から遠軽へ通う生徒が散見されるようになっても普通を増発するほどでもなく、朝一番の急行、特急で対応してきた経緯があると察せられる。

JR北海道は特急定期券「かよエール」を全道にわたって発売しているが、これは単なる利用促進策ではなく、一部の区間では通学のための命綱になっている実情を垣間見ることができた。そもそも室蘭〜札幌〜旭川エリアを除き、「かよエール」は通学用しか発売されていないことに今さらながら気づく。

以前から北見や美幌から遠軽高校に通う生徒(吹奏楽ラグビー・野球各部員)たちのことを書いてきたので、吾輩の文章を読んできた貴殿は、別段驚く内容ではないと思う。しかしながら、都内から取材に訪れた記者には、オホーツク沿線での通学実態を知って多少驚いたようだ。なぜなら、それなりの都市から郡部の高校に特急列車で通うのだから…。

このほか、「編集後記」の中の「今月号の誌面」として、石北本線について次のように書いている。

石北線では札幌から直通の「オホーツク」が2往復、旭川折り返しとして札幌側とは函館線の特急電車にリレーする「大雪」が2往復設定されていますが、「大雪」の閑散期には全区間運休という思い切ったダイヤもやむを得ないと思わせる実態です。沿線をみれば北見を中心とする道東エリアと旭川エリアに挟まれた一帯は人口の少ない山間で、途中駅の多くが次々に廃止されてきた区間である一方、線形の問題もあって網走〜旭川間に4時間弱を要する長い旅となることが一因にあるかもしれません。地域の輸送とは別に、収益に関与する部分が大きく、沿線の観光開発などとも関わりの深い特急列車の都市間輸送をどう盛り上げていくかという視点も見落とせません。札幌〜旭川〜網走間は約375㎞あり、現状は特急で5時間余りですが、北海道新幹線が札幌まで開業しても石北線にはほとんど影響がないと考えられるだけに、独自の観光列車などこれまでとは違った取り組みが必要になってくるのではないでしょうか。

やはり、誰でも距離に比べて長時間の網走〜旭川間(237㌔)の長旅には、疑問を持つようで、だから吾輩は以前から「新石北トンネル」や「新常紋トンネル」の建設を訴えている。さらに、全国的にも珍しいスイッチバック遠軽駅を、現在の位置から郊外の「道の駅遠軽森のオホーツク」付近に移動して、少しでも時間短縮に繋げてほしいとの提案もしている。しかしながら、一向に国や道から「北海道開発予算」(毎年約5500億円で、うち道路整備に約2000億円)を投入しての建設計画が出てこないのである。

これに関しては、公共交通専門家も同じような意見のようだ。最近、北見市内で開催された「オホーツク圏活性化期成石北本線部会」で、北大大学院の岸邦宏教授がオホーツク沿岸住民への石北線の利用促進に関するアンケートに基づく研究成果を発表し、その中で列車の座席の幅や間隔を重視する回答が多かったほか、利用を促すには列車内の快適さ向上と、課題は多いが″高速化である″とした。至極当然の結論であるが、それよりも鉄道事業は本来、収支が合うものではなく、図書館や道路と同様に「社会的インフラ」と位置付けることを共有したいと思う。

ところで、半年前からカナダ在住の「鉄道解説系ユーチューバ」の鐵坊主(てつぼうず)氏の動画投稿サイト「ユーチューブ」を見ているが、いやはや当人の鉄道に関する知識には関心してしまう。その当人の「ユーチューブ」(題名「JR北海道42駅の廃止検討、その背景」)を2日前にも見たが、5月に動画取材のために来日し、石北本線の沿線を取材したという。その中で「石北線に乗ればわかるが、上川から遠軽までは人が少ないところを走り、遠軽から向こうはわりかし大きな街が続くんです。今回初めて遠軽駅に降りたんですが、自分が思っていたよりも大きな町なので、ちょっとビックリしました。もっと小さな町と思っていました。紋別ではなく、隣町の湧別町までバスで移動したが、それなりに人が住んでいた」という解説をしていた。

それに関連するが、以前から「ユーチューブ」で遠軽町を取り上げた動画を見ていると、乗用車で街中に入ると「大都会、遠軽の中心部に入ってきました」などと″おちょくった″コメントをする者がいた。その時には「何が大都会だ」と小馬鹿にしたコメントに笑ったが、もしかしたら遠軽町に対する認識が不足し、実際に訪ねてみて驚く人が多いのかもしれない。皆さんも「百聞は一見に如かず」なので、ぜひ一度遠軽町に立ち寄ってみて下さい。