夢を持ちたいJR北海道へ

福島県新潟県を結ぶJR只見線は、一部が豪雨災害で11年間普通になり、2022年に全線で再開した。それに対して、16年8月に北海道を襲った台風によって甚大な被害を受け、一部不通になっていたJR北海道根室線富良野新得間(81・7㌔)が昨日(3月31日)、「ありがとう根室線」というヘッドマークを付けた4両編成の車両が走行して最終日運行を終えた。そういうことから、久しぶりにJR北海道のことを書きたくなったので、まずは3月30日付「読売新聞」のシリーズ「JR考/第13部次代へ3⃣」から紹介する。

〈経営再建「非鉄道」次第ー駅ビル開発■新興企業に投資〉

北海道で今年もローカル線が姿を消す。31日、JR根室線富良野新得)が最終運行日を迎える。

テレビドラマ「北の国から」の第1話で、主人公の黒板五郎が純と蛍を連れて降り立った駅として知られる布部駅(富良野市)も含まれる。脚本家・倉本聰さん直筆の看板が立つ木造の駅舎も廃駅となる。

JR北海道がローカル線を廃止するのは、この10年間で7路線に上る。距離にして東京ー仙台間の約350㌔・㍍に相当する。

それでも経営を立て直すのに十分ではない。国土交通省は15日、JR北に対し、JR会社法に基づく3回目となる監督命令を出した。赤字ローカル線の見直しを含む経営改善の取り組みが不十分だと判断し、2026年度末までに抜本的な改善策を求めた。

JR北が「単独では維持が困難」とする路線は他に8路線ある。国防上重要だと指摘される宗谷線花咲線なども含まれる。8路線の営業赤字は毎年130億円超。これまで廃止した路線以上に経営の重荷になっている。

「次の3年間が課題解決の最後の機会と認識している。関係地域と持続可能な仕組み作りに取り組んでいく」

JR北の綿貫泰之社長は険しい面持ちで国交省の村田茂樹鉄道局長から命令書を受け取った。

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暗雲がすでに漂い始めている。総事業費2500億円を投じる札幌駅南口の再開発だ。

駅直結の複合商業施設「JRタワー」の2棟目を今年中に着工し、28年度の完成を目指していたが、JR北は2月15日、ビルの開業が最大2年遅れるとの見通しを明らかにした。建設資材や人件費が高騰しているためで、規模の縮小も検討する。綿貫社長は「工事費の高騰と人手の確保がかなり厳しい」と苦悩の表情を浮かべた。

ビルは地上43階、高さは道内最高の245㍍。商業施設や高級ホテル、オフィスの入居を想定し、非鉄道事業の柱とする計画だった。

JR北は、30年度の北海道新幹線の札幌延伸にあわせて経営自立する青写真を描いている。国から受ける年間300億円規模の財政支援の期限も30年度末までとなっている。鉄道事業の赤字を圧縮し、駅ビルやホテルなどの非鉄道事業の31年度の売上高を、18年度から5割増やして1200億円に引き上げる計画だ。再開発が遅れれば、経営自立の目算は狂う。

JR北海道の抜本的な改善策を求められている8路線(数字は2022年度の赤字額)

石北線新旭川ー網走)…▼48億4800万円

宗谷線(名寄ー稚内)…▼26億7700万円

釧網線(東釧路ー網走)…▼16億600万円

富良野線(富良野旭川)…▼11億3200万円

花咲線(根室ー釧路)…▼11億3200万円

根室線(滝川ー富良野)…▼11億300万円

室蘭線(沼ノ端ー岩見沢)…▼10億6900万円

日高線(苫小牧ー鵡川)…▼3億6400万円

〈貨物専用で存続ー函館線/住民に恩恵なし〉

北海道新幹線の札幌延伸に伴ってJR北海道から経営分離される函館線(函館ー長万部)。本州と北海道を結ぶ唯一の在来線ながら沿線自治体が財政負担を懸念して存続に消極的だった。廃線の瀬戸際にあったが、国の介入で一転、貨物専用線として残る可能性が浮上した。国土交通省が昨年11月に有識者を集めて検討に乗り出した。2025年度をめどに提言をまとめる。

貨物列車しか走らない場合、沿線住民に恩恵はほぼない。影響を受けるのは遠く離れた本州の消費者や道内の畜産産業者だ。誰が保有主体を担い、毎年数十億円規模とされる維持管理費用を負担していくかが最大の焦点となる。

会議では「食料安全保障や国防の面から新たな財源を確保する考え方もあっていい」との意見も出た。鉄道は誰のためにあるのか。新たな問いを投げかけている。

JR北海道の収益構造(コロナ禍前の2019年度連結売上高1672億円)を大ざっな数字で紹介すると、収入は鉄道運輸部門が850億円、非鉄道運輸部門(小売り、不動産賃貸、ホテル、その他)が800億円で、一方の支出は、設備費などの固定費が多くかかるということで、営業経費が1300億円(札幌圏700億円、黄色8線区200億円、北海道新幹線200億円、設備投資200億円)である。つまり、鉄道運輸部門の赤字は450億円で、これを鉄道事業の赤字を埋めるための資産「経営安定基金」の運用益250億円と国からの財政支援で補っているので、経営構造では年間200億円の赤字が続いている。また、記事によると、JR北海道としては非鉄道運輸部門の収入を現在の800億円から1200億円に引き上げる計画のようだが、問題は如何に利益率を上げるかだ。というのも、現在の利益額は50億円から100億円くらいであるからだ。

そもそも1987年の国鉄の分割民営化に際しては、JR北海道の営業収入は900億円、営業経費が1400億円であったので、その赤字分500億円を「経営安定基金」6822億円の運用益で埋めていく計画であった。ところが、当初は「年7・3%」の運用益500億円で埋めていたが、2000年度以降は200億円台にまで減少したため、新たに国から財政支援を受けるようになった。

以上の経緯を知って、北海道開発費6500億円、そして道路事業費2300億円という金額を知ると、JR北海道が国や自治体の支援を受けて存続を目指す赤字8区間(通称・黄色線区)の赤字額130億円なんか、大した額ではないと考えませんか。そうです、大した金額ではないので、吾輩はもう10年前から「JR北海道の赤字額は北海道開発予算で補填せよ」と訴えているのだ。だって、札幌~稚内、札幌~網走、札幌~根室間の鉄路を廃止することができる筈がないではないか。

話をぶり返すが、そろそろ黄色8線区の存廃議論を終了してはどうですか。もっと前向きに、ルートの変更、軌道の強化、車両の新製などを掲げて、夢のある高速化を実現してはいかがでしょうか。そうであれば、社員にとってもモチベーションが向上し、若手の退職者増大を招かないし、利用者も必ず増大するという相乗効果が期待できるからだ。鉄道専門家も鉄道が公共インフラであることから、路線単体の収支だけで存廃を決めてはならないと言っているではないですか。ましてや、黄色8線区は北方4線(宗谷、石北、石勝・根室、釧網の各本線)として北海道の重要な「基幹路線」でそう簡単に廃止できない以上、全ての特急列車の最高時速が130㌔という夢のある高速化に驀進してほしいのだ。