日本相撲協会は人材不足

大相撲夏場所(5月12日初日、両国国技館)が始まるが、その前に郵送(4月30日)されてきた会員情報誌「月刊テーミス」(5月号)が報じた「八角日本相撲協会理事長『続投』に不安増すー宮城野は復権狙うが二所ノ関の改革に期待が」と題した記事を読んで下さい。

千代の富士貴乃花も潰しー

日本相撲協会の役員改選がこのほど行われ、八角理事長(元横綱北勝海)の続投が決まった。

2015年11月に急逝した故・北の湖前理事長の後継となってから実質5期目の長期政権だが、協会は公益財団法人であるにもかかわらず、八角は理事長就任会見もしなかった。協会を通じて「引き続き、大相撲の伝統文化の継承、土俵の充実を使命として(中略)協会を取り巻く、様々な課題に取り組みます」とコメントしただけだ。

だが、近年の大相撲は未曽有のピンチを迎えている。今年初場所には力士総勢が600人を割った。45年ぶりの非常事態だ。そして3月春場所前には、史上最多45回の幕内優勝を飾った宮城野親方(元横綱白鵬)が、一番弟子の北青鵬(引退)の暴行の協会への報告を怠ったとして、師匠と弟子全員を伊勢ケ濱へ転籍させた。

八角体制になってから、不祥事のオンパレードだ。この状況でも長期政権が続く理由は「ポスト八角」になるべき人材が全くいないことに尽きる。いや八角が潰していったからである。

協会の理事長は横綱大関経験者であることが条件の一つだ。八角理事長の兄弟子だった前・九重親方(故・元横綱千代の富士)も理事長候補の一人だった。

国民栄誉賞も受賞し支持者も多かったが、協会在職中の不祥事を理由に失脚し16年に死去。葬儀の際には九重部屋に通夜2千人、告別式1千人が参列したが、協会に対しては八角理事長の席は用意されたものの、他の理事は立ったままの参列だった。遺族は協会関係者からの献花も辞退した。

次に理事長候補として期待された貴乃花親方も失脚した。協会に対し茶屋制度などの改革を訴え、執行部との対立を招いた。八角は徹底して貴乃花排除に動き、最後は貴乃花が部屋所属力士の不祥事の責任を取る形で協会を退職した。

その意味では4月に亡くなった曙(元横綱)も執行部に入閣していい人材だった。外国人力士初の横綱昇進を決め、日本に帰化した。大相撲の国際化を何度も執行部に訴えて本場所を米国でやりたいという構想も持っていたが、年寄株の手配ができずに退職した。晩年は「ハワイで相撲道場を開きたい」と語っていたという。

ーモンゴル勢は巻き返しへ?ー

歴代最長の理事長は昭和の大横綱栃錦(春日野親方)の7年14年だが、彼には功績がある。

それは1985年に両国国技館を無借金で建設したことだ。当時の国鉄に蔵前国技館を143億円で売却し、両国の土地代(約94億円)を含む新国技館の総工費は150億円だった。その後、協会は何度か財政面の危機を経験したが、それを乗り切ったのは両国国技館の不動産という〝信用″があったからだ。

一方の八角には功績と呼べるものが見当たらない。65歳の定年を迎えるまでの残り2期4年は理事長続投が可能だが、春日野理事長の就任期間記録は更新できない。

宮城野部屋を巡る不祥事では、取り潰しの意見もあった部屋を「無期限閉鎖」にすると決定した。だが八角が任期満了となる4年後には、宮城野を筆頭にモンゴル勢が再拡大する可能性が高い。

宮城野はそれまでは我慢し、静かに反撃のときを待つ考えのようだが、万が一そうなれば朝青龍日馬富士相撲協会を退職した「モンゴル人元横綱」が一気呵成に相撲界に再び上陸してくる絵も見えてくる。

いま八角執行部の最大のミッションは、モンゴル勢に対抗し「ポスト八角」を育成することに他ならない。現時点では大の里ら日本人力士を育てる二所ノ関(元横綱稀勢の里)が筆頭だが、日本人力士を強くしない限り、八角は歴代最低の理事長になる。

ここに書かれていることは、昔からの相撲ファンであれば知っていることだし、さらに最近の出来事も大相撲の元関脇貴闘力(鎌苅忠茂=56)のユーチューブチャンネル「貴闘力部屋ー相撲再生計画」を視聴していれば、知ることができる内容である。しかしながら、いろいろと忙しい御仁は知らないと考えたので、あえて最近の大相撲界の状況を把握してもらうために取り上げた次第である。

八角理事長の新体制は、3月25日に国技館で開催された理事会で決定されたが、ひところ芝田山親方(元横綱大乃国)とか、春日野親方(元関脇栃乃和歌)が理事長選に出るのではないかとの噂があった。しかしながら、何らかの卑劣な思惑が動いたのか、あっさりと八角親方の理事長が決まった。

八角親方の行動を見てくると、あの鈴木宗男議員の腰巾着として生きてきた人物と言える。思い出すのは、八角親方横綱時代に鈴木議員に連れられて、予算編成中の大蔵省を夜中に訪れて、差し入れたことがNHKの報道番組で流れた場面だ。つまり、当時から同じ十勝出身者ということで、何かにつけてあの鈴木議員と行動を共にしてきた。

また、今回の役員改選で協会ナンバー2の事業部長に春日野親方が起用されたが、この親方は若い時分からいろいろと問題を起こしている。最近では、自らゴルフ用具で弟子を殴ったとか、弟子の暴行を隠蔽していたという話が出ているが、吾輩が覚えているのは女性問題である。力士時代に、週刊誌かスポーツ紙に取り上げられていたが、部屋での朝稽古が終わった後に、怒りに燃えた若い女性が栃乃和歌の髪の毛を引っ張りまわしたという話である。何らかの問題を若い女性との間で引き起こしたようだ。

そもそも力士というものは、体が大きくて素行が悪い(本人たちの証言)ということで、一般人に比べて手間がかかる人たちだ。かいつまむと、力士の中には若い時分の家庭環境が劣悪で、力士という職業を得て真っ当に生きる素手を得た人が含まれているからだ。そういうことを考えると、相撲というスポーツは若者の健全な成長を促す手段として大いに社会に貢献していると言える。

力士を取り囲む環境を見てみると、如何に多くの人たちが優しく見守っているかがわかり、それを知ると相撲関係者は常に謙虚に生きなければならない。ところが、貴闘力のチャンネルでは「八角一派は解散しろ!現役親方衆から不満が爆発!」と題して、協会を65歳で定年退職した陸奥親方(元大関霧島)、花籠親方(元関脇大寿山)、尾車親方(元大関琴風)の〝八角グループサウンズ″という3人組が、再雇用されて高額の所得を得ているというのだ。それも仕事もしないで、協会役員ということで現役の親方衆より多い所得というが、今の世の中で通用するのかと言いたい。そして、こんな実態を世間が知ると、力士たちを優しく見守る人たちの目が逆に厳しくなることを自覚するべきである。

話は八角理事長に戻るが、今の執行部には将来のビジョンがなく、そのために相撲界の未来を暗くしている。そういう意味で、いろいろと難しい人間であることは知っているが、貴乃花相撲協会に復帰し理事長として協会をリードしてもらいたい。このままの調子でいくと、相撲は国民的なスポーツとは見なされず、文化としても存在していけなくなるからだ。

 

後記ー22年4月の定年退職後から再雇用で参与(再雇用される親方衆は給料が正規雇用の7割に減るが、それでも5年で約4000万円にのぼる)となっていた元大関琴風の尾車親方(67)が、任期満了の70歳を待たずに5月11日付けで退職した。しかし、報道機関は「熱意ある後進に道を譲る」という美しい内容で報じたが、実は貴闘力のチャンネルによって退職に追い込まれたことは明らかである。その意味では、この実態が日本相撲協会とマスコミとの関係を示していると言える。