5月27日付「読売新聞」は、11ページ全面で「過疎地の公立高 統廃合限界ー小規模化 開設科目に制約」との見出しで、次のように報じた。
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■加速する少子化
加速する少子化が、地域の高校教育の基盤を揺るがしている。過疎地が進む地域では公立高校の定員割れが常態化しており、統廃合が進むと、さらなる人口流出の要因になるとして、地元自治体の危機感は強い。小規模化した高校で学習の質をどのように維持していくかも課題となり、遠隔授業の拡充なども検討されている。
〈1学年1学級〉
文部科学省の学校基本調査によると、全国の公立高校の生徒数は昨年約193万人で、最多だった1989年の半数以下に減った。公立高校の数も87年の約4200校から約3500校に減少。過疎地を中心に高校の統廃合が進む。高校進学率が99%に達する中、公立高校が全くない市町村は全国で約3割に上る。
政府の推計では、全国の15歳人口は22年の107万人から、36年時点で81万人に落ち込み、24%減少する。「これ以上の統廃合は困難で、通える範囲に高校がなくなってしまう」(中部地方の高校長)という地域も少なくない。
各都道府県の教育委員会は、「1学年4〜8学級」(160〜320人)といった公立高校の「適正規模」をそれぞれ示してきたが、過疎化が著しく近隣に他の高校がない地域については弾力的な対応が目立つ。その結果増えているのが1学年に1〜2学級しかない小規模校で、文科省の調査では全国の公立高校の1割を超える。小規模校は教員の配置が限られ、学習環境の確保が課題となる。高校教育は専門性が高く、選択科目の幅も広い。教員が少なければ多様な科目を開設しにくく、生徒の進路希望に合った指導も難しい。
〈進路に配慮〉
北海道教委は今春、5年ぶりに改定した高校再編の指針で「望ましい学校規模は1学年4〜8学級」「1学年が2学級以下の高校は順次再編整備を進める」という文言を削除した。1996年に275校あった公立高校は統廃合などで210校に減り、道立高校の約3割で1年生が1学級という現状を踏まえた対応だ。
高校の1学級の定員は40人で、道教委は2年続いて入学者が20人未満になれば原則として統廃合を検討する方針だが、過疎地域などは「2年続けて10未満となった場合」に条件を緩和している。今年度は23の道立高校で入学者が20人を下回り、7校で1桁だった。「近隣に他校がない地域の統廃合は慎重に考えなければならない」と道教委は苦しい状況を説明する。
(以下、省略)
★北海道立高校の1学年(1年生)の学級数
○1996年度…1学級8%、2学級22%、3学級10%、4学級以上59%ー計244校
○2023年度…1学級29%、2学級14%、3学級11%、4学級以上45%ー計187校
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以前から遠軽高校を通じて、北海道の過疎地・オホーツク管内の状況を紹介してきたので、御仁は既に過疎地の現状は把握していると思う。それにしても昨年の15歳人口が全国で107万人というのだから、吾輩の年代が約210万人であるので、ちょうど半分ほどに減少している。だが、昨年の出生数は80万人を割り込んでいるので、人口構成を考えると本当に少子化の渦中に巻き込まれるのは、これからである。
ここからは4年前にも書いたが、陸上競技が好きなので「オホーツク支部高校陸上競技大会」(5月18〜20日、北見市)の現状を書く。この大会は、今年8月のインターハイ(全国高校総体)に向けて、全国各地で5月末に開催する第1ラウンド「都道府県大会」と同じで、北海道でも同じ主旨で「支部大会」(10支部)が開催される。ネットで調べると、今年は参加校は18校で、参加選手は男子が196名(4年前238名)、女子が104名(同118名人)というから、過疎地の児童20人、30人の小学校の「運動会」や「学芸会」を思い浮かべた。つまり、女子は20種目もあるので、参加選手が忙しく多種目に出場する姿だ。そして、参加選手は「全道大会」出場枠が5〜7位なので、出場した選手はほとんどが第2ラウンドに進出するというわけである。
要するに、選手が多かった昔の支部大会は「全道大会」に出場するための“選考会"という意味合いがあったが、今では単なる「記録会」と言える状況だ。だから、せめて3位以内の選手を「全道大会」に出場させるべきだと考えたのだ。今の制度では、インターハイを目指す有力選手は、レベルの低い選手と一緒に予選に出場することになり、疲労やケガに繋がらないかと心配しているのだ。
その一方で、「全道大会」に出場する選手は参加料として1名1500円支払う必要があるので、もしかしたら「北海道高校体育連盟」を維持・運営するために必要な経費かもしれない。そうであれば、運営費を確保するために参加者を絞らないで、1種目60人出場させている可能性もあり、その点は良くわからない。
少子化に関しては、約20年前にこんな話を聴いたことがある。キャリア官僚として中央省庁に勤めていた友人が「人事院の知人と話をしたところ、その知人が『最近の上級職Ⅰ種試験では、上位の成績は問題がないが、下位の方で合格する者の成績が相当劣っている。受験生が減ると、こんなことになる』と言っていた」というのだ。やはり、少子化が進むと、下位の方の合格点が下がるのは当然のことだ。
そう言えば、司法試験も2005年から合格者を約500人から約1500人に増やしたが、これも司法研修所の卒業試験での不合格者の割合が高いことで、司法試験合格者の「質の低下」を懸念する声が出ている、ということを新聞で読んだことがある。そういう意味で、高校の部活動も司法試験も、少子化や合格者増加によって、色々と悪影響が出てきているようだ。しかし、逆の見方をすると、今の若い人にはチャンスが広がっており、やはり最低限の適正な競争は必要であることを示している。