宇都宮LRTの純利益は5700万円

宇都宮市民として、昨年8月26日に開業した芳賀・宇都宮LRT(宇都宮LRT、ライトライン)の運行状況を熱心に見つめてきた。そんな中の6月6日の夜、インターネットを見ると栃木県の地元紙「下野新聞」電子版が、タイトル「LRT開業初年度、5700万円の黒字/運賃収入は7億円超/23年度決算公表」と題して、前日の5日開催の株主総会の決算概要を報じていた。

次世代型路面電車(LRT)を運行する宇都宮ライトレールは5日、開業初年度となる2023年度の決算概要を公表した。運賃収入など鉄道事業の売り上げはLRTが開業した昨年8月26日からの約7カ月間で7億3900万円となり、最終的なもうけを示す純損益は5700万円の黒字。それぞれ当初計画の1・46倍、2・96倍となった。累計利用者数も2カ月早いペースで推移しており、好調ぶりが決算にも表れた。

この日の株主総会を受けた概要版。23年度1年間の支出と宇都宮市芳賀町からの負担金収入を除いた、売り上げと経常利益、純利益、利用者数を公表した。

売り上げは定期券や一日乗車券など運賃収入からなる鉄道事業が7億3900万円、広告収入やグッズ販売といったその他事業が5500万円。人件費などの支出を引いた経常利益が8400万円、さらに法人税などを引いた最終的な純利益が5700万円だった。

当初計画で5億円だった運賃収入は2億3300万円増。一方で支出は電気代の高騰などがあったものの、純利益は当初計画の1900万円に対し3800万円増となった。乗用車が接触する事故も何度かあったが、LRTの車両修繕費は保険で賄ったという。開業年度が最後となる両市町からの負担金収入は、予算時点では1億7700万円を計上している。

利用者数は3月末までに、1・23倍の累計約271万人を記録した。直近では5月が1日平均で平日が約1万5千~6千人、土日祝日が約1万人で推移しており、6月4日時点で累計362万人となっている。

運賃収入は、開業初年度の結果を基に1年間で計算すると、翌年度以降の見込みも超える。同社担当者は「たくさんの方に利用いただいた。このペースを維持していけば」と話している。

毎晩、動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信されたものを見ていると、宇都宮LRTに乗車した人の動画は、どれもこれも乗り心地を絶賛するものばかりである。また、報道機関も当初の計画以上に乗客数が多いことを報じていたので、間違いなく利用者数も純利益も大幅に計画を上回ると予想していた。しかしながら、23年度はわずか7カ月間であったので、どのような数字になるか多少は心配していた。

その決算概要を見ると、当初計画では5億600万円の運賃収入を得て、純利益は1900万円の黒字を見積もっていたが、純利益は想定の3倍の黒字となった。つまり、運賃収入と純利益は事前の想定を上回って、それぞれ1・46倍、2・96倍になったのだ。それはそれは、大きな喜びと言わざるを得ない。

また、他の報道機関が報じた内容を参考にすると、LRTの月間利用者数は、開業以来今年1月を底に35万人から40万人ほどで推移していたが、4月は開業以来最多の42万1613人(5月13日発表)に達した。この数字は、開業直後の昨年9月の39万9411人を更新し、初めて40万人を超えたものだ。その結果、利用者数は当初計画(220万人)より23%多い271万7000人を記録しているので、開業1年間の利用者数は累計約500万人、純利益は約1億円になると予想できる。しかし、この数字がどのくらい重みがあるのかは良くわからない。

というのは、東京都の中央区、豊島区、江東区静岡県静岡市岐阜県大垣市、石川県金沢市京都市大阪府堺市兵庫県伊丹市島根県松江市香川県高松市などが、今後新たに路面電車を導入しようとしているらしいが、なぜかこれらの自治体の中から一向に追随する動きが見えないのだ。こうなったら気長に待つしかないが、人口減少時代に突入している中では、計画倒れに陥る自治体が出てくるのではないかと心配している。

 

※参考記事ー6月7日付「下野新聞」電子版

〈「世界も注目」宇都宮と芳賀を結ぶLRT/各国から視察続々/全線新線、列車はバリアフリー

次世代型路面電車(LRT)が世界各国から注目を集めている。開業以降、39カ国の行政、経済、報道関係者ら計約100人が視察に訪れており、6日はモロッコザンビアセネガルの駐日大使ら関係者8人が列車に乗るなどして最新の交通システムを体験した。

一行は、LRTの概要説明を受けた後、宇都宮駅東口停留所から清原地区市民センター前停留所まで約30分間乗車。交通系Cカードを使って乗り降りしたり、舎内で運転士の訓練状況や橋の建設費などを質問したりしていた。

ザンビアのトバイアス・ムリンビカ大使は「列車の揺れが少なかった。わが国でも宇都宮市のような方法で、LRTを中心とした都市開発をしてみたい」と感想を語った。

宇都宮市LRT整備課協働広報室の安保雅仁室長(52)は「75年ぶりの全線新設開業や列車のバリアフリーが注目を集めているのでは」と、相次ぐ視察を歓迎していた。