芳賀・宇都宮LRTの整備の行方

月刊誌「鉄道ジャーナル」は、2〜3年に一度北海道の鉄道を特集するので、この時には購入するが、まさに2月20日発売の4月号はそれに該当する。特集「凍てつく北の鉄路」(9〜57ページ)では、北海道新幹線の建設工事を見る、最北端最後の砦ー孤高の一本道、オホーツク純情街道238のタイトルで掲載し、昔を思い出す記事が多く、満足する内容であった。

しかし、もう一つ見逃せない記事「宇都宮ライトレールの工事をたどるー『開業1年延期』と『事業費1・5倍』発表」があったので、今回はそちらを取り上げることにした。

昨年2020年9月にはレールの敷設工事が報道公開されており、てっきり工事は順調に進んでいると思っていた。

JR宇都宮駅と宇都宮東郊の芳賀町を結ぶ、軽量軌道交通(LRT)の「芳賀・宇都宮LRT」(宇都宮ライトレール線)。全長14・6㎞に及ぶ軌道を宇都宮市芳賀町が整備し、第三セクターの宇都宮ライトレールが両市町から施設を借りて電車を運行する。着工時は来年2022年3月の開業を予定していたが、全国紙や地元の下野新聞は1月19日、用地買収の遅れから1年遅れの2023年3月になると報道。事業費も大幅に増えることが明らかになった。

(中略)

家に戻ってニュースを見ると、宇都宮市が詳細を発表していた。総事業費は458億円とされていたが、宇都宮市の負担は412億円から603億円、芳賀町の負担も46億円から81億に増え、合計で1・5倍の684億円。宇都宮市の場合、軟弱地盤への対応で47億円増え、鬼怒川周辺や野高谷地区の高架橋、車両基地などで橋脚の基礎抗を長くしたり、地盤改良の必要が生じたりしたことが大きい。ほかにも買収面積の増加、豪雨災害対策として車両基地の盛土と擁壁の追加、安全性向上策として歩道のバリアフリー化なども増額の要因に。さらに新型コロナウイルスの影響で用地買収の契約が遅れており、未買収率(2020年12月時点)は宇都宮市が10%、芳賀町が25%。整備区間の工事も約2割と未着手の状態で、そのため開業が1年遅れるという。

工事の遅れや事業費の膨張が続発していた1970〜1990年代を知る者としては、正直やむを得ない面もあると思う。用地の交渉は相手のいる話だし、土木工事も実際に掘ってみないと分からない部分がある。とはいえ大型の公共プロジェクトに厳しい目が向けられる時代になったいま、ただ単に「やむを得ない」で通り過ぎるわけにもいかない。

宇都宮市宇都宮駅の西側(桜通り十文字方面)への延伸も計画しており、宇都宮駅の東口から西口へは同駅北側を高架で迂回するルートを2020年11月に決めている。しかし今回のような大幅な増額があった以上、市民は西側の整備に厳しい目を向け、場合によっては計画自体の是非にかかわってくるかもしれない。

近い将来、宇都宮駅を越えて西側に抜けられるのか、それとも「幻の鉄路」として、私が西側の未成ルートを取材することになるのだろうか。

記事の最後は、宇都宮駅の西側のルートを「幻の鉄路」として、私が取材するのか、と随分と悲観的な言い回しで終わっている。その背景として、記者は芳賀・宇都宮LRT建設に対して、予想以上の地元住民の反対があったことを知っているのだ。

吾輩が総事業費が1・5倍になったというニュースを知った時、東海道新幹線の建設経緯を思い出した。というのも、当初1725億円の工事費見積額が最終的には3800億円になり、当時の国鉄総裁・十河信二が全責任(三河島事故東海道新幹線の建設予算超過)を取って辞任(昭和38年5月)したからだ。しかしながら、東海道新幹線の工事費に関しては、当初から総額三千億円以上必要であることは分かっていたが、国会で予算を通すために工事費を低く押さえた。だから十河氏は、今では「新幹線の父」と呼ばれているが、芳賀・宇都宮LRTも同じような背景があったのではないと想像したのだ。

吾輩は、以前に宇都宮市に居住していたことや、鉄道好きということもあり、宇都宮市のLRTの建設には注目してきた。そして、当初は街中の賑わいを復活するために、宇都宮駅西側のLRTの建設に期待していた。ところが、宇都宮市の友人は次のように語るのだ。

宇都宮市東口から芳賀町までのLRT建設は、芳賀町にあるホンダ(自動車・バイクメーカーとして知られる本田技研工業の工場施設や研究施設がある)が「朝の通勤の混み具合を解消してほしい。そうでないと、栃木県から撤退する」と脅されたことから始まった事業である。その話しは、ホンダ狭山工場の廃止で、関連下請け会社と従業員(2〜3万人)が移った時だから、もう20年前の話しです。だから、宇都宮駅西口の事業は、あくまでも付録の話しです。この裏話は、宇都宮市民なら誰でも知っていることで、そのため宇都宮市長もこの話題には触れないようにしている。ー

確かに、芳賀・宇都宮LRTの終点の予定地が「本田技研北門」であるから、ホンダを意識していることは、地元の住民であれば誰でも知っているが、そこまでホンダ側からのプレッシャーを地元自治体が受けていたとは知らなかった。いずれにしても、ここまで工事が進んでいる以上、工事を中止するわけにはいかないので、風格ある宇都宮市発展のために、芳賀・宇都宮LRTの完成を楽しみ待ちたいと思う。