宇都宮市のLRT建設の問題点と期待面

宇都宮市芳賀町が計画している、LRT(次世代型路面電車)の動向を遠くから眺めていた。その理由は、もともと鉄道ファンであることと、宇都宮市が魅力ある都市に変貌して欲しいからだ。このLRTの起工式が、連休明けの5月にも行われるという。

宇都宮市が計画しているLRTとは、宇都宮駅東口と芳賀町の工業団地(本田技研北門)の14.6キロを結ぶもので、開業は4年後の2022年3月。総事業費は約458億円で、半分は国が負担し、残りは宇都宮市が206億円、芳賀町が23億円支出する。

ところが、このLRT建設に対して、意外にも市民の多くが反対し、我が輩の知人も反対しているので、これまでLRT問題に触れないできた。しかしながら、国と県から整備計画が認可され、起工式の日取りも決まった以上、我が輩の見解を明らかにする。

先ずは、反対派の反対意見から紹介する。

○栃木県は、人口千人当たりのクルマ保有台数は全国2位。誰がLRTに乗るのか。赤字になることは間違いない。

○僕の周りには、賛成者はいません。その理由として、肝心のホンダ社員が利用しないと聴いているからです。また、クルマを生産している社員が、クルマに乗らないハズがありません。全ホンダ社員を強制的に通勤に使用させない限り、赤字になることは間違いない。

○つくづく残念なのは、一昨年の宇都宮市長選挙で、現職の市長が僅か六千票で勝ったことだ。対立候補者に、民進党が付かなければ勝っていた。これでは、自分の子孫に借金を残すだけです。

次いで、鉄道ファンとして、期待面を書きたい。宇都宮市は、北関東の最大都市(人口約50万人)である以上、それなりの公共交通手段があっても良い。人口規模で、宇都宮市の半分の都市にも、それなりの公共交通機関が存在していることから、宇都宮市にもLRTが建設されても何ら問題ない。

第二点は、学生時代に四国や九州の県庁所在地を訪れた際、路面電車が地元のお城の横を走る風景は今でも忘れられない。それだけ、路面電車には風情があり、大都会に溶け込む交通機関と思う。その意味では、宇都宮市にも相応しいし、観光資源にもなる。

第三点は、反対派は、事業費と建設後の営業経費の赤字を心配しているが、それほど心配する必要はない。全国の大都会には、博物館、図書館、美術館、歴史館などの公共施設が整備されているが、そのほとんどは赤字を度外視して運営されている。つまり、そのような感覚でLRTを見ると、多少の赤字でも許される。

このほか、我が輩の友人からの意見も紹介したい。

「以前、熊本市に居住したが、同市はお城と路線電車と古い街並みと新しいアーケード街が、実に良く調和した素晴らしい街だ。宇都宮市に路線電車が整備されたら、さらに風格ある都市になると確信・期待出来る。路面電車は自動運転の先取りで、レールに沿って動くので事故が少ない。完成したら、路面電車のある街を楽しんで欲しい」

一方、宇都宮市のLRT建設には、大きな課題 がある。それは、宇都宮駅付近での東西横断で ある。宇都宮駅は在来線が地上を、新幹線は高 架3階を走行していることから、高架下に大きな空間があってもおかしくない。ところが、宇 都宮駅付近には、将来の都市計画を展望した大 きな空間がないのだ。即ち、LRT整備計画 は、急に出てきた可能性があるのだ。

昨年9月、宇都宮市南図書館に赴いた際、たまたまLRTの広報活動をしていた宇都宮市職員三人と対話する機会があった。その際のやり取りを紹介したい。

私「私は以前、宇都宮市に住んでいたので、土地勘もある。だから、LRTの建設には賛成である」

宇都宮「ありがとうございます」

私「だが、問題点もある。当初は、繁華街の賑わいを取り戻すことから、宇都宮駅西口から桜通り十文字までの約3キロを建設する計画であった」

宇都宮「その通りです。しかし、その後、朝の通勤時に混んでいる駅東口から清原工業団地方面を最初に建設することになった。整備後、西側への延伸も計画しています」

私「いずれにせよ、いつかは駅西側まで路線が敷設される。そこで問題なのが、宇都宮駅の横断である。普通に考えると、どこか新幹線ガード下に未開通の通路があるハズだが、どこを捜してもない。地元の新聞を見ると、駅北側を大きく迂回して、西側に出るルートが掲載されていた。あのルートであれば、東西の乗客が駅の向こう側近辺に行く場合、駅前で降りて歩き出すと思う」

宇都宮「そういうことになりますね。だから今、駅の二階部分を通過することを検討しています」

私「駅二階に乗降口を建設する場合、建設費が増すし、高いところを通過するので危険が増す。それに、駅二階部分に、電車の乗降口を建設するスペースがあるのか」

宇都宮「だから、現在検討しているのです」

私「どうしても、東西の横断部は、最短距離で建設するべきだ。新幹線のガード下の柱を取り除くことは、技術的に難しいのか」

宇都宮「……」

私「それから、東武宇都宮駅とも繋ぐべきだ」

宇都宮「当然、考えています」

私「そうですか。さらに、足利銀行本店までではなく、少なくとも大谷観音がある観光地まで伸ばすべきだ。そして、出来れば、JR日光線に乗り入れれば、観光路線としても期待出来る」

宇都宮「私たちも、そのように考えています」

私「それを考えるとLRTには夢がある。しかしながら、なぜ故に、駅の東西経路のガード下を開けておかなかったのか。ある面、宇都宮市というか、栃木県は計画性がないと思う。君たちに言ってもしょうがないが…。だいたいLRTの話しも急に出てきた話しでしょう」

宇都宮「1990年代から計画していたことです」

私「私が住んでいた時には、地元のバス業者が『仕事を失う』と反対していると聴いていた。今は、賛成しているのか」

宇都宮「バス業者も賛成しています」

私「それにしても、計画性が無さ過ぎる。今度、80歳以上の土木部長などの元幹部に会ったら、私の疑問点を尋ねてみてはいかがですか。宇都宮市のLRT整備は、全国の鉄道関係者が注目しているし、私のような鉄道ファンも関心を持っている。成功することを願っています」

宇都宮「ありがとうございます」

以上のような対話を行ったが、この対話から宇都宮市のLRT建設における課題が見えてきましたか?いずれにしても、国費を投入する以上、素晴らしいLRTが走り出すことを願いたい。そうそう、LRT構想は、東京の豊島区、長野市静岡市、神戸市でも浮上しているので、なおさら宇都宮市のLRT整備計画に関心を持つ人が多いことも紹介します。