瀬古選手が日本歴代50 傑から消えた

2月28日開催の「第76回びわ湖毎日マラソン」で、鈴木健吾選手が2時間4分56秒の日本新記録で初優勝したが、吾輩は余りこのレースを注目していなかったので、23㌔付近からテレビ観戦を始めた。ところが、20人近い選手が日本記録を上回るハイペースでレースを展開していたので、途中から目が離せなくなった。レースは36㌔過ぎに、給水のボトルをつかみ損ねた鈴木選手が一気にペースを上げ、35〜40㌔のスプリットタイムを14分39秒(ラストの5㌔は14分24秒)に上げたので、その辺から日本記録を破れるのか、また4分台の記録が出るのか、さらに後続選手が多数なので、瀬古利彦選手の記録(2時間8分27秒は当時〈86年〉歴代2位)が日本歴代50傑(2019年末で30位)から消えるのか、等々と考えながらテレビ観戦していた。

結果はご存知の通り、見事に鈴木選手が4分台で優勝し、後続の日本人選手も6分台が4人、7分台が9人、8分台が13人、9分台が13人と、計40人がサブテン(2時間10分突破)しての歴史的なレースとなった。今大会の記録に、瀬古選手の記録を当てはめると23位というのだから驚いてしまう。その驚きは、昨年12月の日本選手権男女1万㍍の時と同じで、今大会も気温10度前後、向かい風も少ないという絶好の気象条件に恵まれたことにある。その外の要因としては、靴底にカーボンファイバーの板を埋めたことで足に伝わる反発力が増し、加速がつく「厚底シューズ」と呼ばれる靴の影響が、記録の押し上げに貢献したことは間違いない。

ということで、今大会の上位5人が日本歴代10傑に入った。さらにネットで調べると、今大会上位選手の記録が日本歴代50傑に17人が、100傑には24人が名を連ねることになり、50位の記録は2時間8分13秒で、100位は2時間9分10秒ということになった。

さて、瀬古選手の記録はというと日本歴代57位になったので、わずか1年2カ月間で30位から下げたことになる。このほか、日本歴代100傑の中には、20世紀の記録が15人(他85人は今世紀の記録)しか入っていないが、このスピード感を考えると、20世紀の記録で最上位12位の記録(2時間6分57秒)も、あと20年程度で歴代50傑から消える感じを受ける。

ところで、世界陸連によると、鈴木選手の記録は世界歴代57位タイ。男子100㍍9秒台は世界で145人、歴代58位タイが日本記録を大きく上回る9秒93である。また、マラソンの5分切りの58人の内訳を見ると、アフリカの強豪国のエチオピア33人、ケニア22人が占める。そのほかの3人(トルコ、バーレーン、ベルギー)は、いずれもアフリカ大陸をルーツに持つ選手であることを考えると、如何に鈴木選手のアフリカ系選手以外で初の4分台が“価値ある記録"であるかが分かる。

最後にもう一つ、トップ競技者としては限界説もささやかれていた川内優輝選手(今大会10位、109回目のフルマラソン )のことを取り上げたい。川内選手の今大会前の自己記録(2013年のソウル国際で出した2時間8分14秒)は、一昨年末では日本歴代25位であったが、今大会で自己記録を8年ぶりに47秒更新(2時間7分27秒)したことで、歴代20位まで順位を押し上げた。もしも、記録を更新できなかった場合には、歴代50位まで下げるところであったので、33歳のプロランナー・川内選手には、まずは良かった、良かった、といいたい。