宇都宮LRTの将来が楽しみだ

9月26日の夜、インターネットを見ると栃木県の地元紙「下野新聞」がタイトル「栃木・LRT開業1カ月、平日利用約1万3千人で安定、休日は予測の5倍」と題して、8月26日に新規開業した路面電車「宇都宮芳賀ライトレール線」(路線愛称「ライトライン」)の利用状況を報じていた。

次世代型路面電車(LRT)の宇都宮芳賀ライトレール線は26日、開業から1カ月を迎えた。1日当たりの乗降客は、平日が通勤・通学客を中心に約1万2千~1万3千人で安定して推移。土日祝日は1年目の需要予測を大幅に上回る平均約1万6千人の出だしとなっている。開業以降、地域連携の交通系Cカードtotra(トトラ)の発行枚数は急増し、約9200枚が発行された。乗客のICカード利用率は93~94%まで高まっている。

需要予測は開業1年目が平日1万2800人、土日祝日4400人。運行会社の宇都宮ライトレールによると、開業1カ月は平日はほぼ予測通りなのに対し、土日祝日は4、5倍の利用が続いている。9月3日には最多の約2万人を記録。敬老の日を含む3連休は1日当たり約1万6千人が乗車した。沿線でサッカーJ2栃木SCのホーム試合があった日は、増便も出た。

ただ土日祝日はLRTに乗ることだけを目的にする「開業特需」が含まれ、今後は徐々に減っていくとみられている。同社担当者は「土日祝日の利用促進策を強めていきたい」と話す。11月にも一日乗車券を販売する予定という。

トトラの発行枚数も開業を機に増えている。カードを管理する関東自動車によると、新規発行はこれまで週に100~200枚ほどだったが、22日まで開業1カ月弱で約9200枚が発行された。同社担当者は「LRTに乗るためにトトラを購入した人が多い」と推測する。

ライトレールによると、開業直後は現金払いへの対応などでダイヤが乱れたが「現金払いが減ってきて遅延の幅は縮まっている。平日はほとんどない」。ICカード利用率は開業直後から90%程度あったが、93~94%まで増えたという。

宇都宮市によると、トトラは発行開始から8月末までに累計約12万8千枚が発行され、市内の中高生にも約3万5千枚が無料配布されている。自動的に小児運賃が適用される小児用トトラも「発行手続きを行う人が増えている」と説明。引き続き、利用案内のパンフレットを配るなどして周知を図っていく考えだ。

昔、栃木県の県庁所在地・宇都宮市(人口約51万人)に居住していたこともあり、以前からJR宇都宮駅と栃木県芳賀町の「芳賀・高根沢工業団地」間14・6㌔を約48分で結ぶ「芳賀・宇都宮LRT」(宇都宮LRT、ライトライン)については、大いに関心を持っていた。ネットでも、路面電車として75年ぶりに全線新設したことや、使用する車両(3車体連接のHU300形で定員約160人・座席は50人分設置)は黄色と黒の流れるようなデザインであることから、多くのユーチューバーが乗車して動画配信している。これらを含めて、開業1カ月間の利用状況(乗客総数は約42万人で、当初予測の1・4倍)が盛況であることから、今後JR宇都宮駅西側への延伸に向けて弾みが付く可能性が出てきた。

宇都宮市民や「宇都宮LRT」に関心を持っている御仁は知っているが、LRT整備には多額の費用がかかるということで、2016年11月20日投票の宇都宮市長選挙(投票率41・53%)では大きな争点となった。その結果、推進派の現職が投票数の51・8%を獲得、一方の反対派の対立候補は48・2%も獲得し、その得票差は約6200票と接戦で、辛くも現職が勝利した経緯があるからだ。それくらいLRT整備(「公設型上下分離方式」)には、車中心の生活を送る市民から反対の声が多かったので、開業にたどり着いたことを大変喜んでいるのだ。

改めて「宇都宮LRT」建設に反対する革新系「市民団体」の意見を紹介すると、事業費が約458億円と膨大であること、工業団地の工場には宇都宮駅から通勤用の送迎バスが頻繁に運行されているので「バスで十分ではないか。空気を運ぶことになる」とか、道路の幅が狭くなるので「車の渋滞が激しくなる」ということで反対した。さらに当初の事業費が、資材費高騰などで約684億円(半分は国からの補助金、83億円は栃木県、残りを宇都宮市芳賀町が負担)と約1・5倍に上振れしたことも、革新系「市民団体」が開業日まで反対行動を起こすことになった。

今後の「宇都宮LRT」は、まずは2030年代前半までにJR宇都宮駅東口から東北本線の線路を跨ぐようにして宇都宮駅西口に出て、それから西側の繁華街を通り県教育会館付近までの約5㌔を計画通り延伸開業できるかにかかっている。つまり宇都宮駅を跨ぐ工事は、在来線の上と新幹線の高架の下を通るような形になるので、難工事が予想されて事業費が大幅に増加するからだ。だが、これが整備されると東武宇都宮駅への乗り入れ、さらに観光地の大谷地区やJR日光線への乗り入れで日光駅に至ったり、また清原地区から真岡市内への乗り入れも考えられる。そう考えると、使い勝手の良い公共交通が街づくの土台になる以上、宇都宮市はLRTを軸とした公共交通ネットワークで、非常に魅力的な都市に変貌することは間違いないと思う。

※後記-宇都宮市は9月28日、定例記者会見でLRTの車両HU300形に用いられている愛称「ライトライン」を、路線名称「宇都宮芳賀ライトレール」、事業名「芳賀・宇都宮LRT」へ拡大するとした。ライトラインは、4万人以上が参加した投票アンケートを経て2021年3月に車両愛称として決定した。