下宿整備に邁進する遠軽町

北海道の道立高校では、3月1日には卒業式、3月18日には合格発表があり、これで2023年度の行事が全て終了した。そこで、今後の遠軽高校の見通しを考察したいので、まずは2月17日付け「北海道新聞オホーツク/遠軽紋別版」の見出し「遠軽高に新下宿整備ー25年度入居予定 部屋不足解消へ」を読んで下さい。

遠軽吹奏楽ラグビー、野球など部活動の活躍で全道から新入生が集まる道立遠軽高の下宿希望者が増えていることに対応するため、町は、2025年度の入学者から入居できる新たな下宿を整備する方針を固めた。財源には東京在住の町出身者から「故郷の若者のために役立ててほしい」との申し出があった高額寄付2億4千万円の全額を充てる。新年度予算案に下宿整備補助金として盛り込む予定。

〈町出身者が2・4億円寄付〉

町によると、遠軽高生向けの下宿は現在7棟ある。定員は計98人だが、すでに現在の下宿生は101人おり、一部で1部屋を複数で使ってもらうなどしてしのいでいる。

このうちの1棟(定員12人)は、町が民間に整備費8500万円を全額補助し、22年度に町有地に建てたばかりだ。

新年度の下宿生は本年度比26人増の127人と見込まれるが、3月で卒業する3年生の下宿生は24人で、定員オーバーの状態はより深刻化する見通しだ。

うれしい悲鳴が上がる現状について、佐々木修一町長は「新たな下宿整備は急務だが、これまでにも多額のお金をかけており、財源の確保が大きな課題だった」と胸の内を語る。

そんな中、東京で飲食業、ホテル、ITなど多業種を展開する「長谷川トラストグループ」の長谷川芳博会長=町出身=が、下宿建設費として2億4千万円の寄付を町に申し出た。北海道新聞の取材に対し、長谷川会長は「故郷に暮らす学生たちのお役に立てれば。町に貢献する人材が増えるきっかけにしてほしい」と話した。

町はこれをもとに、下宿整備補助金を地元経済界人でつくる「遠軽高校下宿を支援する会」(高橋義詔会長)へ支出し、町有地に建てる方向だ。支援する会が新しく建設する下宿は、定員30人規模で、玄関を男女別にする。部活動以外の目的で入学した生徒も入居できるようにする予定。

少子化で地元の新入生が減少する中、遠軽高の「5間口(1学年5学級)維持」は、町をはじめ地元の重要課題で、同高は町外の中学生に向けたPR活動に力を入れてきた。

遠軽高に対する多額の寄付金に関しては、吾輩は2013年10月25日付けで「1億2500万円」と題して文章を作成している。文章の内容は、「佐呂間町出身者で遠軽高校OB(73歳・会社経営者)が、佐呂間町の町立診療所に1億円、更に遠軽高校の室内練習場整備資金として2500万円を寄付した」というもので、当時の北海道新聞の記事を紹介した。その寄付金によって、13年春の「第85回選抜高校野球大会」に21世紀枠で初出場した際の寄付金(寄付金総額1億400万円、余剰金4200万円)の一部を加えて、現在の野球部の室内練習場を建設している。母校愛が強い先輩が多く、誇りに思います。

さて、北海道新聞の記事に戻ると、遠軽町湧別町及び佐呂間町以外から遠軽高校に通学するために遠軽町内に下宿する1、2年生は77人ということになり、新年度には127人に増加するというのだから、新1年生で下宿生になるのは50人ということになる。今年の入学試験では、定員200人(1学年5学級)に対して志願者は170人であるので、学区外志願者は29・4%ということになる。つまり、地元出身者の新入生は約7割ということなので、逆の見方をすると今後の生徒数が心配になってきた。

というのも、別に地方の生徒数減少は遠軽高校だけの話ではないが、少子化問題は全国的な課題になっているからだ。具体的に数字を挙げると、出生数が100万人を割ったのは2016年、昨年の23年は75万8631人になり、わずか7年で25%近く減っているのだ。そこで、ネットで遠軽町の出生数の推移を調べたところ、住民基本台帳(日本人住民)の数字が掲載されていた。

1970年ー558人、75年ー446人、78年ー403人、79年ー408人、80年ー373人、81年ー324人、82年ー353人、83年ー315人、84年ー295人、85年ー323人、86年ー279人、87年ー290人、88年ー260人、89年ー245人、90年ー240人、91年ー248人、92年ー229人、93年ー239人、94年ー205人、95年ー215人、96年ー235人、97年ー224人、98年ー229人、99年ー181人、2000年ー208人、01年ー204人、02年ー197人、03年ー224人、04年ー215人、05年ー188人、06年ー151人、07年ー181人、08年ー163人、09年ー172人、10年ー186人、11年ー152人、12年ー161人、13年ー160人、14年ー159人、15年ー135人、16年ー152人、17年ー118人、18年ー127人、19年ー115人、20年ー90人、21年ー87人、22年ー103人、23年ー66人。

以上の人数を知ると、昨年の出生数が極端に減少し、今年入学する09年生まれが172人(年度別ではないので注意)であることが解る。そして、今年の志願者である中学3年生のデーターが公表されていないので、遠軽町立中学校の各1年生当時の生徒数で代用すると、遠軽中ー58人、遠軽南中ー61人、生田原中ー7人、丸瀬布中ー2人、白滝中ー6人、安国中ー4人の総計138人ということになる。つまり、この13年間で34人減少している。ちなみに、地元になる湧別中ー26人、上湧別中ー23人、佐呂間中ー43人となっている。

結論から申し上げると、遠軽高の入学者数はあと10年くらいは学区外志願者によって、5間口(定員200人)を維持できるが、その後は下宿生を大幅(1学年100人)に増加させなければ無理であることが解る。そういう意味では、主に吹奏楽局、ラグビー部、野球部などの生徒たちを財政的に支える遠軽町には、今からその対策を講じてほしいのだ。頑張れ、遠軽町