遠軽高校入学者の実態

いよいよ今年度が始まり、久しぶりに遠軽高校のことを書きたくなった。4月1日に遠軽町民に配布された「広報えんがる」(4月号)をネットで見たところ、驚くべき記事が掲載されていた。それは、遠軽町長の「令和4年度施政執行方針」の中に、「文化を守り、未来につなげるふるさとづくり」という項目のトップにあった。

【子ども教育】

遠軽高等学校に対する学習面・部活動面での支援や環境の整備、遠軽高等学校通学者等助成事業により、令和4年度入学者選抜における遠軽高等学校の通学区域外からの出願者数が、全道の道立高等学校で最高の54人となるなど、成果が確実に出てきていることから、引き続き、地域を担う人材とその人材を育てる教育環境の確保に努めるとともに、地域性を生かした特色ある教育を推進し、子どもの「生きる力」と「郷土を愛する心」を育み、安全・安心に学習できる環境づくりに努めます。

随分と、句読点が少ない文面であるが、この中に「通学区域外の出願者数54人」という数字に驚いたのだ。以前に、遠軽町は通学区域外から遠軽高校に通学する生徒の保護者に対し、通学や下宿費用を上限月額3万円として補助することを紹介したが、この制度によって生徒確保が思いのほか成功しているようだ。

今年の遠軽高校(定員数200人)の出願者数は182人であったが、最終的な入学者は173人という。そして、今年遠軽町の中学校を卒業した人数は140人であったので、全て遠軽高校に出願したとして42人多いことになる。しかし、隣町の湧別町佐呂間町遠軽高校の通学区域内であり、今年も20人ばかりは出願したと考えるし、それに遠軽町の中学校から学業や部活動を目的に、10人ばかりが北見市旭川市、札幌市の高校に進学したと推測すると、はっきりした内訳をはじき出すことは難しい。

だが、この54人の出願した理由は推測でき、まずは吹奏楽が25人、野球が10人、ラグビーが5人、学業が14人という内訳になる。そう考えると、遠軽高校の部活動は無視できない存在と言える。

それでは、2015年度から始まった遠軽町の助成事業は、今年度どの程度の財政負担額になるのか。今年度、大幅に増えて100人として、最大の金額は1人年間36万円×100人で3600万円である。何だー、これだけの負担額で、町の重要な機関・遠軽高校の規模(5クラス)を維持できるなら安いものだと考えるか、逆に「無駄金だ」「こんなにカネがあるなら俺にくれ」と考えるかだ。無駄金と考える輩や夢がない輩のことは無視すれば良いのだ。

しかし、今後10年、30年後も現在の補助事業を継続するためには、その金額を補う施策は今から考える必要はある。例えば、ふるさと資金、純粋な寄付金、さらに高校が存在していない町村からの支援金などが考えられる。

いずれにしても、遠軽町は戦前にいち早く遠紋地区に、旧制中学校を設立した自治体である。つまり、オホーツク管内北部地域の教育に責任を持った自治体であるのだ。

話しが変わり、「全日本吹奏楽コンクール」の話題。ある有力な吹奏楽関係者と面談した友人の話しによると、全国大会に出場するためには「地区大会にどのような人物が審査員に選ばれるか」が、最初の関門というのだ。遠軽高校も全国大会に計9回出場しているが、過去には“残念でした"で収まらないくらい悔しい落選もあったと聞いているので、無視できない話しである。どうしても採点で順位を決める競技では、一概に点数の出し方がおかしいとは言えないが、全国大会出場を掛けた勝負事である以上、やはり“公平公正"な審査は絶対に必要である。であるならば、皆が納得する審査方法を確立してほしい。

また、話しが変わるが、昨年11月に歌手・平原綾香の父親・平原まこと(日本を代表するサックス奏者の一人)が胃がんのため亡くなった。まこと氏は、遠軽高校吹奏楽部が1970年に初めて全国大会に初出場した際、天理高校吹奏楽部のクラリネットで出場したという。その話しは、娘・綾香と一緒にテレビ出演した際に本人が「1970年の全日本吹奏楽コンクールに出場した」と発言したことで知ったが、吾輩も圧倒的な存在の天理高校吹奏楽部の演奏を聴いていたのだ。

それにしても当時は、全国大会にわずか10校(現在は36校)の高校しか出場できず、この中に北海道代表として遠軽高校が出場したのだ。現在、柏市立柏、習志野市習志野などの活躍で、千葉県は「吹奏楽王国」と言われているが、このような王国に育てたのは、吾輩の5年くらい若い教員たちである。

ということで、オホーツク海側に所在する遠軽高校吹奏楽局は、それなりに歴史がある吹奏楽局と言える。そして、北海道の辺境にこのような素晴らしい吹奏楽局が存在することは、北海道の誇りであるとともに、日本の誇りとも言えるのではないか。そう考えると、永遠に遠軽町が「吹奏楽のマチ」として存在することを願わずにはいられない。