今夏の出来事は遠軽町の歴史に刻まれる

今夏の遠軽町は、久しぶりに活気ある話題が豊富にあるので、その事実を歴史として書き残すため、地元紙「北海道新聞」や遠軽町のホームページなどを通じて紹介したい。まずは東大野球部の夏合宿に関してだ。

①7月19日付け「北海道新聞」(オホーツク版)

〈東大野球部、遠軽で夏合宿/部員が高校生に受験指導も〉

遠軽】東大硬式野球部が8月2から10日の9日間、町内のえんがる球場を拠点に夏合宿を行う。道内では室蘭市が長年合宿を受け入れ、オホーツク管内では初めて。指導者や部員から「東大流」の勉強方法などを学ぶ講演会に加え、中高生への受験指導も予定され、町は「子どもたちの学力向上にもつながる」と期待を寄せる。

同野球部は東京六大学連盟に加盟し、春と秋のリーグ戦では早大や慶大などと対戦。プロ野球選手も排出し、2017年には北海道日本ハムから当時エースの宮台康平投手(現東京ヤクルト)がドラフト7位指名を受けた。道内では室蘭での合宿が恒例だったが、20、21年は新型コロナウイルスの影響で中止していた。今年は主力のAチームが遠軽、Bチームが同14〜20日に室蘭で行う予定。

町教委によると、遠軽には選手55人とスタッフら計66人が滞在し、初日と最終回を除いて原則えんがる球場で練習を行う。5日は今春の北海道六大学リーグを制した東農大網走、地元・遠軽高と対戦するほか、関係者による講演会も開催。野球部の浜田一志前監督や現役部員が「東大流」の勉強方法や試験の模擬答案などを紹介するという。6日には部員が遠軽高生に受験勉強を直接教える。

関係者によると、同野球部が15年から春合宿を行う沖縄県では、現役東大生に刺激を受けた地元球児が19年から3年連続で東大合格を果たした。合宿誘致に奔走した佐々木修一町長は「7年越しの悲願がかなった。遠軽高は部活動で注目されることが多いが、これを機に学力面でも魅力ある学校になってほしい」と力を込める。

②8月7日付け「北海道新聞」(オホーツク版)

〈東大生、勉強法を披露/合宿中の野球部、中高生に〉

遠軽】町内で合宿中の部員が中高生や保護者に受験の心構えなどを伝える「遠軽東大塾」が5、6の両日、町内2カ所で行われた。現役東大生が明かす、部活動に没頭した高校生活や短期間での学力向上策に、参加者は真剣な表情で耳を傾けた。

遠軽高では5日夜、部員6人が講師役となり、希望する生徒に「(高校の)部活引退まで家庭学習は1日約1時間だけ。代わりに授業を無駄にしないよう集中した」「模試の結果に危機感を覚えることが勉強の契機になる」と経験談や受験生へのアドバイスを語った。大学入試共通テストの過去問を使って東大生の思考法を披露し、6日には生徒に直接学習指導もした。

ホテルサンシャインでは6日、同野球部前監督で学習塾顧問の浜田一志さん(57)が中学生や保護者に向けて講演。「まずは『地方から東大合格は無理』というレッテルをはがす。身近な手本(野球部員)をまねしてみて」と力説した。

東大塾には2日間で延べ約100人が参加した。

③8月12日付け「北海道新聞」(オホーツク版)

〈東大野球部合宿終了バーベキュー楽しむ/町民有志が企画〉

遠軽】町内で初めて合宿を行っていた東大硬式野球部が10日、全日程を終了して遠軽を離れた。練習最終日の9日夜には町民有志らの企画でバーベキューが開催され、部員らは遠軽ゆかりの味覚を堪能した。

バーベキューは、部員が宿泊するホテル駐車場で行われ、エゾシカ肉やアスパラ、ホタテなどが振る舞われた。主将の松岡泰希さん(22)は2日からの合宿を振り返り、「野球漬けの日々を送ることができて感謝しかない。ご飯もおいしかった」と話していた。

次は、遠軽高校吹奏楽局が、8月25日開催の「北海道吹奏楽コンクール」(全道大会)で、全国大会出場を決めたこと。

○8月26日付け「朝日新聞」(北海道版)

遠軽東海大札幌全国へー道吹奏楽コン開幕/高校C・A〉

第67回北海道吹奏楽コンクール(道吹奏楽連盟・朝日新聞社主催)が25日、札幌市中央区の札幌コンサートホールKitaraで始まった。客席の収容制限を設けない通常開催は3年ぶり。初日は25人以内で編成する高校Cに14団体、55人以内の高校Aに18団体が出場し、熱のこもった演奏を披露した。…高校Aの代表は名古屋市で10月23日に開かれる全日本吹奏楽コンクールに進む。

各賞は次の通り(◎は全日本吹奏楽コンに出場)。

【高校A】∇金賞=◎遠軽旭川商、札幌白石、遺愛女子、札幌日大、◎東海大札幌

引き続き、総工費62億2400万円で完成した音楽ホール「遠軽町芸術文化交流プラザ」(メトロプラザ)が、8月26日にオープンにしたこと。

①8月27日付け「北海道新聞」(全道版)

〈響け吹奏楽、待望の大ホール〉

遠軽オホーツク管内遠軽町で26日、大ホールなどを備えた多目的の文化施設遠軽町芸術文化プラザ(愛称・メトロプラザ)がオープンし、記念式典が行われた。

同町は小中高の吹奏楽が全国レベルを誇る「吹奏楽のまち」として知られ、606席の大ホールも吹奏楽が主目的。式典では、前日に札幌で行われた第67回北海道吹奏楽コンクールで金賞を受賞し全国大会への切符を手にした遠軽吹奏楽局が記念演奏などを行い開館に花を添えた。

また、施設内にはアニメ「機動戦士ガンダム」の作画監督で同町出身の安彦良和さんが描いた巨大壁画が飾られ、お披露目された。佐々木修一町長は「地域文化を次世代に継承する役割を果たす施設。町のシンボルとして愛され続けるよう運営に努めたい」とあいさつした。

②8月27日付け「北海道新聞」(オホーツク版)

遠軽発展の新拠点に/「メトロプラザ」開館〉

遠軽】26日に開館した町芸術文化交流プラザ「メトロプラザ」の記念式典(町主催)では、地元の遠軽吹奏楽局が圧巻の演奏で開館を祝福し、町出身のアニメーター安彦良和さんが描いた巨大壁画が披露された。町民の念願だった施設が完成し、地域の文化や経済発展の新たな拠点として活用が進みそうだ。

道内屈指の実力を誇り、「吹奏楽のまち」をけん引する遠軽吹奏楽局は、25日札幌市で開かれた北海道吹奏楽コンクールで金賞を受賞し、10度目の全国大会出場を決めたばかり。その「凱旋」にもなったこけら落とし公演では、コンクール曲を含む計6曲を披露し、重厚感と迫力のある演奏で出席者を魅力した。

壁画は縦3㍍、横4㍍。館内北東側の出入り口近くに飾られ、安彦さんが作画を担うアニメ「機動戦士ガンダム」のキャラクターと町のシンボル瞰望岩、吹奏楽ラグビーに励む中高生を描いた。安彦さんは「音楽には詳しくないが、資料をたくさん頂いて何とか描くことができた」と明かした。

③8月30日の遠軽町ホームページ

吹奏楽のまちに新施設誕生〜遠軽町芸術文化交流プラザ開館記念式典〉

8月26日、遠軽町芸術文化交流プラザ「メトロプラザ」の開館記念式典が行われました。

この施設は、「吹奏楽のまち」遠軽町にとって念願であった音楽ホールを備えた施設であり、町民や団体の皆さんが芸術文化活動などで利用できる多目的室や、交流スペースなどを備えた「にぎわいと活気」を生み出す施設として誕生しました。

式典には、来賓の方々やメトロプラザの建設にかかわっていただいた方々など約200人が訪れ、施設紹介や感謝状の贈呈に加え、式典前日に全日本吹奏楽コンクールへの出場を決めて凱旋した遠軽高校吹奏楽局の記念演奏などが行われました。

また、遠軽町出身のアニメーター安彦良和さんが描いた巨大なアートパネルを披露。館内北東側の出入口付近に飾られているこの作品は、町のシンボルである瞰望岩を中心に機動戦士ガンダムのキャラクターのほか、吹奏楽ラグビー、野球に励む学生たちなどが描かれ、安彦さんから作品の解説や苦労話などが語られていました。

中心市街地に完成した「メトロプラザ」。皆さん、ぜひ芸術文化活動や交流の場としてご利用ください。

最後は、8月28日に行われた「開館記念コンサート」の開催状況。

①8月31日付け「北海道新聞」(オホーツク版)

吹奏楽、芸舞妓華やか/遠軽「メトロプラザ」開館記念〉

遠軽】町芸術文化交流プラザ「メトロプラザ」の大ホールで28日、開館記念コンサートが開催された。特別編成の陸上自衛隊合同音楽隊がクラシックやポップスの名曲約10曲を演奏したほか、京都の老舗茶屋「一力亭」が芸舞妓の祝舞を披露。真新しい606の客席は公募の町民らを中心に埋まり、華やかなスデージに大きな拍手が送られた。

一町出身・今井3等陸曹、オーボエでソロ一

26日にオープンしたメトロプラザのこけら落とし公演で、大ホールの特長の一つである反響板を初めて使用した。あいさつで舞台に立った佐々木修一町長は「こんなに良い声だっけ?」と語りかけて客席から拍手を受けた後、「長い時間をかけて建てた町民の財産。大いに使ってほしい」と呼びかけた。

この日のために編成された陸自合同音楽隊は、中央音楽隊(東京)、北部方面音楽隊(札幌)

、第2音楽隊(旭川)、遠軽駐屯地音楽同好会の精鋭計47人。門出を祝う行進曲「威風堂々」で幕を開け、ソプラノ歌手の鶫真衣・3等陸曹が「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を歌い上げた。町出身で中央音楽隊に所属する今井花音・3等陸曹がオーボエで「風笛(あすかのテーマ)をソロ演奏し、会場を沸かせた。

続いて「一力亭」が芸舞妓のあでやかな舞を披露。一力亭が歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」にも登場する歴史ある茶屋であることや、舞妓修行や衣装の特徴も紹介された。

606の固定席は満員で、立ち見や小ホールで映像中継を見る人もいた。大ホールで妻と鑑賞した町内の杉本忠三郎さん(92)は「素晴らしいの一言に尽きる。今後たくさん鑑賞する機会があればいいなと思っている」と期待を口にした。

②9月1日の遠軽町ホームページ

〈素晴らしいホールで演奏できて幸せ〜遠軽町芸術文化交流プラザ開館記念コンサート〉

8月28日、遠軽町芸術文化交流プラザ「メトロプラザ」で開館記念コンサートが開催されました。

26日にオープンしたメトロプラザのこけら落とし公演として行われたコンサートには、陸上自衛隊中央音楽隊、北部方面音楽隊、第2音楽隊、遠軽駐屯地音楽同好会の特別編成された「陸上自衛隊合同音楽隊」が、クラシックやポップスなど約10曲を演奏したほか、祗園の中でも最も格式が高い由緒のあるお茶屋「一力亭」による祝舞が披露されました。

音楽隊による演奏では、中央音楽隊のソプラノ歌手である鶫真衣さんの透明感あふれる歌声や、遠軽高校の卒業生である中央音楽隊所属の今井花音さんのソロ演奏などが披露され、約600人のお客さんたちは音楽隊が奏でるメロディーに酔いしれていました。

続いて行われた「一力亭」による祝舞では、あでやかな着物を身にまとった芸舞妓の華麗な舞に、客席から大きな拍手が送られていました。

コンサートに来たお客さんたちは「鶫さんの歌声がすばらしかった」「初めて舞妓さんを見てすごくきれいでした」などと満足げな表情を見せていました。

また、演奏を終えた中央音楽隊の今井さんは「こんなに緊張したのは初めてです。音楽ホールの建設は私が小学生の頃からの念願で、木のにおいやぬくもりが感じられる素晴らしいホールで演奏できて幸せです」と話していました。

ということで、遠軽町の嬉しい出来事を長々と紹介したが、大都市に居住している賢人には、大したニュースではないと感じていると思う。しかし、北海道の地方は全国を上回るスピードで人口減少や高齢化が進んでおり、そのため小さな自治体では図書館や郷土館などの公共施設を維持することに四苦八苦している。そうした中で、オホーツク管内の人口1万9千人弱の自治体が、これだけの出来事を発信できることは凄いことであるのだ。

例えば、今年5月に北海道旅行を敢行した際の出来事を紹介すると、苫前町の「郷土資料館」(惨劇「三毛別羆(ヒグマ)事件」の状況を展示)には、15年前、そして5年前にも訪れたことがあるが、今回は入口に人が居ず、呼びかけても何の反応もない。しようがないので、町役場に戻って尋ねると「建物の裏に人がいるので、呼びかけて下さい」というので、資料館に戻って呼びかけると、裏から人が現れて室内の電灯を付けてくれた、というような実態であった。

また、湧別町の「郷土館」(「下湧別機雷爆発事件」の機雷の破片を展示)は過去に何回も訪れているが、今回は入口が閉まっていたので、隣接する「体育館」で尋ねると、女性職員が鍵を持って郷土館を開けてくれた。つまり「郷土館」には職員は居ず、体育館の職員が郷土館を管理しているというわけである。

以上のような現状を知ると、地方自治体が経費削減のために知恵を出していることがわかるが、それにしても寂しい限りである。そういう意味で、今夏の遠軽町の出来事は、記憶と歴史に残るニュースと言える。