「地域おこし協力隊」に期待して

北海道新聞「オホーツク遠軽紋別」版(6月29日付け)に、オホーツク管内18市町村の「地域おこし協力隊」の特集記事が、4回にわたって連載された。協力隊については、以前からネットでオホーツク管内自治体広報誌を読んで関心を持っていたので、地元の後輩から北海道新聞の記事をFAXで送付して貰った。

そもそも「地域おこし協力隊」とは、総務省が2009年に創設したもので、主に都市部の人が過疎地域などの自治体から委嘱(1〜3年間)を受け、地域に住んで地域活性化に関する業務や農林水産業などに従事する制度である。待遇に関しては、総務省が隊員1人につき年間200〜250万円、活動費として年間150〜200万円をそれぞれ上限に地方自治体に特別交付税として措置し、隊員数は2020年度には全国で5464人、北海道では最多の699人が活躍している。

オホーツク管内の「地域おこし協力隊」の記事に話を戻すと、概要(5月末現在)は次の通りである。上から自治体名、募集開始年度、現在の人数、これまでの活動人数、定住人数である。

北見市…2015…5…8…5

網走市…2015…5…3…0

紋別市…2016…8…6…1

美幌町…2017…3…1…1

津別町…2013…3…20…9

斜里町…2017…2…1…1

清里町…2014…1…4…0

小清水町…2018…2…3…0

訓子府町…2021…空白

○置戸町…2016…2…2…1

佐呂間町…2021…空白

遠軽町…2015…3…8…2

湧別町…2017…4…3…1

滝上町…2014…2…11…7

興部町…2018…全てゼロ

西興部村…2012…5…12…0

雄武町…2016…4…1…1

大空町…2014…3…4…1

この一覧表を見ると、オホーツク管内では、2012年に西興部村が初めて採用し、今年5月末時点で訓子府、佐呂間、興部の3町を除いて、15市町村で50人が活躍している。また、これまでの活躍人数は87人、定住人数は30人という。

4回シリーズの記事の中では、西興部村紋別市美幌町斜里町網走市小清水町佐呂間町津別町の現状を取り上げ、いろんな課題を紹介している。その中で、隊員の発言として、

○「体のいい臨時職員扱い。定住につながらない活動をさせるのであれば、採用するべきではない」

○ICT(情報通信技術)支援員として働く1人が「IT経験を発揮できる場がない」。主な仕事は、コピー機の故障など機器のトラブル対応というのが現状という。

○「地域住民からパワハラにあった」

などという証言が気になった。

そうはいうものの、吾輩が少年時代を過ごした滝上町(人口約2千6百人)が、これまでの活躍人数11人のうち7人が定住、定住率が63・6%と管内で一番高いことには驚いた。地元の友人に尋ねると、「地元の観光協会NPOに就職しているが、やはり自立する意味で起業してほしい」との希望を述べていた。また、定住者が多い理由として、「都会にある便利さよりも、まちの持っている魅力や環境が、それを乗り越えているのではないか」と分析し、さらに東京の旅行会社「旅工房」に勤めていた女性に尋ねると、「住みやすい」との返事であった。確かに、学歴や貧しさを気にする風土もなく、生きやすい土地柄なのかもしれない。そうことで、過疎地の滝上町が「地域おこし協力隊」創設目的の一つである、多くの定住者を獲得したことは嬉しい限りである。

昔から地域活性化のために「よそ者、若者、バカ者」という言葉を聞いてきたが、その意味するところは、過去の成功体験に頼らないで組織を改革するためには、前述の人たちが必要ということのようだ。それを考えると、受け入れ側の待遇や態度は非常に重要で、10年後、20年後に地域の救世主になる“新たなヒントを与える人物"であるかもしれないからだ。と同時に、地域住民にとっても町を見直す一助になり、過疎地に一定の効果を生み出すからだ。

それにしても「地域おこし協力隊」といい、「道の駅」(93年末時点の115駅から今年6月には1193駅に増加)といい、霞ヶ関の官僚が企画した地域活性化政策は、今では地方にとっては重要な施策になった。特に「道の駅」は、どの地域でもなくてはならない施設・施策になった。

そこで最後は、遠軽町が整備して、一昨年12月末に開業した「道の駅遠軽森のオホーツク」を紹介する。この「道の駅」は、北海道内で初めてスキー場を併設し、さらに町が総事業費約1億1500万円をかけ、長さ300㍍、幅30㍍にわたる「サマーゲレンデ」を、今年6月26日にオープンさせた。このほか、この道の駅には、ツリートレッキング(地上約8㍍の高さがある木の上を空中散歩)、バンジートランポリン(5㍍の高さまで飛び上がる)、インモーション(体を傾いて加速・減速する乗り物)、そして建設中(8月14日オープン)のジップライン(空中に張ったワイヤーロープ<全長1154㍍>を専用の滑車を使用し、猛スピードで滑空するアクティビティー)など存在し、まさに町のレクリエーション施設を全部集めたような感じだ。その意味では、高規格道路網とリンクさせた好事例で、今後どこまで地域産業に貢献できるのか、関心が持たれるところである。ちょっと脱線したが、こんな施設がオホーツク沿岸に存在することを紹介して終わります。