網走からオホーツクへ名称変更の経緯

ネットで、北見市の日刊フリーペーパー「経済の伝書鳩」(7月14日付け)を見たところ、年1回発行の地域文芸誌「文芸北見」(第51号、248ページで1250円)の内容が掲載されていた。そこで、まずは取り寄せた同誌の中から、「網走支庁」から名称を変更して、現在の「オホーツク総合振興局」に至った随筆「オホーツク管内の誕生」を紹介する。

オホーツク管内の誕生ー武田賢一郎(北見市)ー

新聞の地方版やTVのローカルニュースを見ると、「オホーツク」の文字や言葉が以前より多く見られるようになりました。

実は平成22年4月1日から、「網走支庁」の名称が「オホーツク総合振興局」に変わりました。

明治30年北海道庁の下に14支庁が置かれ、道庁の下部組織として地域の行政を担っておりました。

しかし時代の趨勢から、地方分権への対応や単なる下部組織からの脱却など、支庁制度改革が検討され、平成17年ごろ、「支庁制度改革プログラム案」の策定が具体化され、14支庁を9総合振興局と5振興局に名称が改められる事になりました。「網走支庁」は、「網走総合振興局」と名称が変更になる案です。

当時、私は常呂町を退職し、網走支庁管内町村会・議長会や三市も入った網走支庁管内総合開発期成会などの事務局長をしておりました。

常呂町の産業課や商工観光課時代には、物産展や観光イベントで本州へ出ることがたまたまあり、全国のデパートでの物産展では「北海道」の名が付くと来客が多く、特に「オホーツク」の名が付くと大変人気がある事を催場の賑わいや、報道から実感しておりました。

このころ、管内ではすでに「オホーツクビール」、「オホーツク紋別空港」、「オホーツクブランド」(優れた地場産加工食品の認証)など、結構名前が売れていたように思います。

こうした状況から私は、管内の名称を「網走」から「オホーツク」に変えられないかと、一人で模索していました。

なぜなら、全道で所在地の市の名称のついた支庁は、網走のほか釧路・根室・留萌しかなく、他の支庁は十勝(帯広市)・上川(旭川市)・渡島(函館市)などの名称であること、また網走管内には、管内の中核都市である北見市、そして紋別市もあり、支庁から総合振興局への名称変更に合わせて頭の部分もこの際変えられないかと考えたからです。

そこで、気心の知れた町村長らとの意見交換や根回しをして、管内町村長会議に諮り全会一致で網走管内町村会として、網走支庁長に「オホーツク」の名称に変更するよう要望書を提出しました。

支庁の親しくしている幹部などからの情報では、心配していた網走市の反対や道庁内部での反対はなく、道庁から各市町村へ支庁改革の意見照会も行いましたが、既に町村会で決議しており網走管内のみ名称が変わる可能性が出て来ました。(名称決定後に網走市民の一部から反対がありました)

私は平成20年3月で同職場を退職しましたが、正式に決定し、新聞でオホーツク管内誕生の記事を拝見したときは、大変うれしかったことを覚えています。

管内の名称が変わり、既に10年以上経過しましたが「オホーツク」の名がすっかり定着していることに安堵しています。

そもそも「オホーツク」は、ロシアのハバロフスク地方の町の名で、その名が旧樺太(サハリン)、千島列島、カムチャッカ半島等に囲まれた海の名称になったようです。

(以下、省略)

吾輩は、以前からどのような経緯で、管内の名称が網走から“オホーツク"に変更になったのか、と不思議に思っていた。その意味で、引用した文面は非常に参考になるが、一方で予想した範疇でもあった。

さらにいうと、2〜3年前か、雑誌か新聞紙上である人物が「最近、オホーツク沿岸地域では、オホーツク総合振興局と名称を変更したり、JR北海道の特急列車まで『オホーツク』と言わせたり、オホーツク海の辺鄙な町の名称を使う事例が多い。オホーツクとは、オホーツク海の北部に所在する小さな町で、どうしてそんな町の名前を使いたいのか」と指摘したことで、吾輩も意識し始めた問題でもあった。

吾輩も学生時代から、ロシアのことを勉強してきたので、オホーツクの位置や、ロシアの沿海州樺太侵略の拠点であったことは知っていた。さらに、スターリン独裁体制では近辺に強制収容所が点在し、ソルジェニーツィン(1918〜2008)の小説「収容所群島」の中で告発された地域でもある。それを考えると、けして明るい歴史がある地域でないのだ。

だからといって、これだけ定着した「オホーツク」という名称を、いまさら元に戻す必要はない。だが、ロシアはこれからもオホーツク海の権益を維持するために、利用できるものは何でも利用する。また、プーチン政権は、日本の北方領土を「大戦の戦利品」という歴史認識で不法占拠を正当化していることも忘れてはならない。そういう点を押さえて、今後も「オホーツク」という名称を利用して行けば良い。