コロナ禍による経済的損失の甚大さよ

本日から7月、いよいよ今月末には「21年東京五輪」が始まる。これまでの一年半、新型コロナウイルスの感染拡大で、飲食業、宿泊業、運輸業のほか、文化芸術(音楽や演劇、映画、美術〈公演・展示収入前年比約50〜80%減〉)などが甚大な損失を受けているが、まずは地方経済の柱に育ってきた観光業の影響から見てみたい。

6月15日に公表された「観光白書」によると、全国の観光地は、日本人と訪日外国人(インバウンド)の宿泊客の大幅な減少で壊滅的な打撃を受けた。昨年の地域別宿泊者数の割合を前年と比べると、全国で48・9%減(日本人32・5%、外国人16・4%)であるが、それを落ち込みが大きい地域別に並べみる。

沖縄県…61・1%減(日本人40・5%、外国人20・6%)

②近畿…57・0%減(日本人30・1%、外国人27・0)

③関東…52・6%減(日本人32・8%、外国人19・9%)

④北海道…50・1%減(日本人31・1%、外国人19・0%)

⑤九州…43・8%減(日本人31・1%、外国人12・7%)

⑥中部…43・3%減(日本人32・0%、外国人11・2%)

⑦北陸信越…42・6%減(日本人36・7%、外国人5・9%)

⑧四国…41・2%減(日本人34・0%、外国人7・2%)

⑨中国…38・3%減(日本人31・4%、外国人6・9%)

⑩東北…34・0%減(日本人30・9%、外国人3・1%)

ということは、減り幅上位の沖縄県、近畿、関東、北海道では、下落幅の3〜5割近くをインバウンドが占めているが、逆に減り幅下位の東北、中国、四国、北陸信越は、下落幅に占めるインバウンドは数パーセントしかない。つまり、そもそもインバウンドの宿泊者が少なかった地域は、大きな地域よりも影響が小さいので、観光業の立ち直りも早いのではないか。

引き続き、日本人の国内延べ旅行者数を見ると、2年前は1年間で5億9千万人(日帰り旅行2億8千万人、宿泊旅行3億1千万人)であったが、昨年は2億9341万人(前年比50・0%減)であった。また、今年1〜3月期の旅行者数(速報値)も前年同期比46・1%減というから、まだまだ旅行業界へのダメージは厳しいと言える。

さらに日本人国内旅行消費額を、四半期別に見て行くと、昨年の1〜3月期3・2兆円(前年4・2兆円)、4〜6月期1・0兆円(前年5・9兆円)、7〜9月期2・9兆円(前年6・6兆円)、10〜12月期2・7兆円(前年5・0兆円)であったので、総額は9・8兆円(前年21・7兆円)であった。つまり、前年比54・8%減で金額的には11・9兆円減であるので、2年前のインバウンド消費額4・5兆円と比較すると、いかに大きな数字であるかが解る。また、今年1〜3月期(速報値)は1・6兆円というから、まだ昨年の半分ということになり、依然として観光業は感染拡大の影響を色濃く受けている。

そのような現状を考えると、当然銀行の貸出(昨年5月から今年3月まで「ゼロゼロ融資」は、130万件、22兆億円)が多くなる。日本銀行の「貸出先別貸出金」によると、銀行の今年3月末の中小業向け貸し出しは381兆2557億(前年比4・5%増)に伸び、業種別で見ると、製造業が前年比4・8%増、建設業16・6%増、卸売業4・0%増、小売業14・7%増、宿泊業18・9%増、飲食業36・4%増、医療・福祉業7・3%増だった。やはり、緊急事態宣言で休業や時短営業、酒類提供の自粛などを要請された飲食業の伸び率が高いと言える。

このような状況であるので、資金繰り支援の副作用として、当然の事に債務の超剰感を感じている企業が多い。例えば、大企業では17・1%、中小企業では35・0%にも達しているが、個人事業主の場合には、もっと超剰感を感じているハズだ。と同時に、地方銀行にとっても、飲食業や宿泊業への貸し出し増加は、将来のリスク要因の増大に繋がる。だから、銀行員の多くは「3年後、5年後がヤマ場」と見ているようだ。

とは言うものの、地方では新たな販売手法や他業種との連携などで、厳しい現状に立ち向かう地方企業も多いという。つまり、コロナ禍の先を見据えた創意工夫のためか、今年1〜3月の中小企業の売上高は、前年同期比4・0%減で、回復傾向がみられる。

でも、やはり政府が「高齢者への接種を7月末までに終える」と表明し、5月の連休明けの10日から全国で本格化したワクチン接種が、国民の意識に与えた影響は計り知れない。吾輩も6月21日に第1回目の接種を受けたが、翌日の新聞に「全国の高齢者の45%が1回目の接種を受けた」と記されていたので、それなりに早い段階での接種ではなかったと考えている。

いずれにしても、コロナ禍を脱する゛希望の光゛が見えてきたので、もう少しで「コロナ疲れ」から解放される。もう少しの辛抱だ!