遠軽町白滝の黒曜石は何が凄いのか

遠軽町白滝の黒曜石が、6月27日の官報号外第134号の告示により、国宝に指定となったことは以前に伝えた。しかし、白滝産・黒曜石の何が凄いのかは、研究者以外の者には良くわからないので、7月8日付け地元紙「北海道新聞オホーツク版」の記事を紹介する。

〈国際会議遠軽大会ー魔術的魅力 特別な黒曜石〉

遠軽】町内で3〜6日に開催された国際黒曜石会議遠軽大会では、オーストラリア博物館のロビン・トーレンス考古学上級研究員が「黒曜石はどうして特別なのか?」をテーマに講演した。トーレンス博士は、ギリシャやロシア極東などの黒曜石の石器製作、利用、交易に関する研究チームを率いる専門家。会場では地元住民も耳を傾け、世界に誇る貴重な地域資源の価値を再認識した。その講演を振り返る。

ートーレンス博士講演ー

黒曜石は、火山溶岩が急激に冷却されて生成された均質な構造を持つガラスです。鉱物をほとんど含まないため、石を打ち割る時の形が予想しやすく、他の石材に比べ小さな力で複雑な形状に加工することができます。各地の石器製作者は、黒曜石を割るさまざまな方法を編み出し、多様な道具や装身具を作りました。

グアテマラパプアニューギニアで「異形石器」と呼ばれる、複雑で変わった見た目の石器が発見されたほか、鋭い刃先を生かし、ひげそりや入れ墨に使う道具となる石器が各地で用いられたことも分かっています。

また、黒曜石には神秘的、魔術的な魅力もあると言われます。石の表面を剥がして得られる、なめらかで輝きのある光沢面を利用して鏡のような遺物が作られた痕跡も残っています。日常的な道具とは違い、儀式や特別な行事に用いられたのではないかとみられています。

一方、黒曜石は火山噴火があった限られた場所でしか得られない特別な石材です。火山から離れた地域で破片が見つかることは、誰かが持ち運ぶか、交易で移動したと考えられます。火山近くの集落は、黒曜石の交易を通じ、遠隔地とのコミュニティーを維持したことが分かっており、黒曜石の遺物の分布を追跡することは、人間の移動パータンや交易システムを理解する上で重要な手がかりになります。

石や遺物に含まれる微量元素を調べるなどして、大規模な移動が確認された黒曜石について、研究者の間では「航海者が故郷の記憶を保持するために持ち歩いた」「植民地の人々が他人と同じ伝統を持っていることを示すために使った」といった見方も存在します。これらの黒曜石は道具として使われずに、当時の人々が大切に相続した「宝物」であったと考えられています。

また、黒曜石を手に入れることは、古代の人々が故郷から遠く離れた場所へ冒険に出て、帰還したことの象徴として利用されたのではないかという研究もあります。黒曜石を持ち帰った人には、特別な地位が与えられたのではないか。黒曜石を通じ、世界の過去の社会をまだまだ学ぶことができるでしょう。

どうですか、遠軽町白滝の黒曜石の価値を理解することができましたか?できれば、紹介しがいがありますが、今後の課題はいかに地元に人々を招き入れるかに掛かっています。それが交流人口や定住者の維持・増加に繋がるので、多種多様なアイデアを実施してもらいたいものだ。

※後記ー7月11日付け「北海道新聞オホーツク版」で、「国際黒曜石会議遠軽大会」を取材した記者2人が振り返っている。

○白滝の黒曜石の価値と地域の存在感をアピールする絶好の機会だった。欧米で開かれた過去3回の大会は開催国の博物館などが単独で主催し、行政や住民を巻き込んだ運営は今回が初めて。

○参加者からは白滝の黒曜石の埋蔵量や質の良さについて驚く声を何度も聞いた。期間中、黒曜石にちなんだ食事や飲み物を提供する飲食店もあった。「地元らしい食事を楽しめた」とうれしそうに話す研究者らが印象的だった。

○4日の講演会では、黒曜石が世界的に特別な存在であることを再認識した。こうした見方は、国宝指定と合わせ、地元住民が自分たちの財産の価値を見直すきっかけになると思った。「国宝のあるマチ」として発展していくためには、人員補充など官民の支援が必要だと思う。