JR北海道は毎年280億円の支援が必要

JR北海道は4月9日、北海道新幹線の札幌延伸初年度までの「長期経営ビジョン」(2019〜31年度)などを発表した。国は昨年7月、19、20年度にそれぞれ約200億円の支援を決めたが、その際、21年度以降も支援を受ける条件として、30年度までの長期経営ビジョンを作るように求めた。

そこで最初は、JR北海道の18年3月期の連結決算を押さえておきたい。売上高1737億円、営業利益416億円の赤字、最終利益87億円の赤字である。この中には、JR北海道が16年11月に「単独では維持困難」とした10路線13線区の約160億円、さらに16年3月に開業した新函館北斗までの新幹線100億円規模の赤字も含んでいる。

ということで、長期ビジョンでは、国や地元の自治体からの財政支援を受けられなければ、21年度以降は最終損益が170億円前後の赤字に陥り、収支を均衡させるには280億円規模の財政支援が必要だとした。そして、JR北海道の自助努力として、

○今年10月の運賃値上げで40億円の増収と業務の効率化で190億円の収益改善を図る。

○長期的には、札幌駅前の再開発で見込まれる複合ビルの推進、ホテル事業の拡大などで、31年度までに鉄道以外の売上高を現在の800億円から1200億円に伸ばす。

北海道新幹線の札幌延伸後の2031年度には、グループ全体で10億円の黒字を確保する。

という経営改善策を示した。

いってみれば、30年度まで国から年200億円の支援をうけることを前提に、長期経営ビジョンは作成された。今後の課題は、維持困難路線の中で存続を目指す石北線宗谷線根室線など7路線8区間に対する支援策だ。国は、国の8区間への支援額を「地元自治体側と同水準」との考えを示しており、これを単純に当てはめると、国が40億円、道と沿線自治体の負担額も計40億円になる。そして、島田修社長は記者会見で「北海道新幹線が札幌まで延伸され、経営自立のめどがたつとする2031年度以降も、8区間への支援は必要」と説明した。これでは、財政難の道や沿線自治体からは相当な不満が出て、支援額を巡る協議が難航すると思う。

それにしても、今更悔やんでも仕方がないが、北海道新幹線の赤字額100億円のことだ。つまり、北海道新幹線新青森新函館北斗間を先行して開業したが、札幌〜函館間を先に開通した方が良かったのでないか、と考えるのだ。当初から“札幌まで延伸しての北海道新幹線"ということは、誰でも理解していたことで、その意味で誰も函館までの新幹線には期待していなかった。その結果が、膨大な新幹線の赤字と、それなりに存在感があった長距離寝台車「北斗星」などの喪失である。

一方、九州新幹線の場合、2004年3月に新八代鹿児島中央間の開業、そして11年3月に博多〜新八代間を開通させた。つまり、あまり利用客の増加が見込めない新八代鹿児島中央間を先に開通させ、既成事実を盾に地元政治家たちは国に九州新幹線の建設を急がせ、7年後には全線開通させている。その経緯を知ると、北海道新幹線に携わる関係者は、九州人の“ずるさ"を見習うべきだ。

さて、今後は道と沿線自治体の支援額の割合に移っているが、吾輩は沿線自治体にだけ負担させることには反対だ。なぜなら、沿線自治体のほかの住民も鉄道を利用するし、鉄道がなくなれば地域一帯が寂れることは歴史が証明している。であるならば、濃淡の違いはあるものの、全ての自治体に負担させるべきだ。

それにしても、何回も書いているが、この程度の支援を「北海道開発予算」(19年度6250億円)から支出できないのか。北海道にとって、果たして鉄道を守る以上の公共事業があるのか、と北海道の公共事業に携わる関係者に訴えたい。