戦後70年の沖縄経済の現状について

いよいよ、6月24日から、栃木県一行(10人)の一員として、沖縄県を訪問する。同地では、元沖縄県知事・島田叡の「顕彰碑の除幕式」や、沖縄県との交流に参加する。そこで、最近になって、沖縄戦の関連本「沖縄の島守」(著者・田村洋三、中公文庫)と、「10万人を超す命を救った沖縄県知事・島田叡」(著者・TBSテレビ報道局『生きろ』取材班、ポプラ新書)を読んだ。

更に、現在の沖縄県の現状を知りたくて、「沖縄の不都合な真実」(著者・大久保潤、篠原章新潮新書)という本を読んだ。朝日新聞によると、この本は今年1月の刊行で、9刷、5万1千部のヒット作品とのこと。本では、鋭く沖縄経済の問題点を指摘しているので、一部抜粋することにした。

沖縄県の振興資金は、毎年3000億円以上である。復帰以来、11兆円という巨額の振興資金が投じられてきた。

○沖縄全基地の借地料は、米軍と自衛隊を合わせて年間900億円(米軍基地は約811億)以上である。基地関連収入の県経済に占める割合は、復帰直後である1972年度は15.5%、2009年度は5.2%となり、一人当たり市町村民所得ランキング(沖縄本島26市町村)の上位は、全て基地のある市町村で占められている。

○嘉手納基地のある嘉手納町は、軍用地料(賃貸料)は年間約125億円で、町民分配所得は387億円である。つまり、町民所得の32.2%が軍用地料である。

○資産所得比率は大阪、東京を引き離してダントツの1位である。総額2336億円の資産所得のうち、4割に相当する約900億円が基地使用料で、地主約4万人のうち年間100万円以上の使用料を受け取る地主が46.2%(約18000人)存在する。

○日本ーの格差社会である。年収300万円未満の家計は50.14%(全国平均は26.03%、最低は福井県の14.39%)で、全国で最も悪い数値である。一方、所得が1000万円を超える納税者の割合が10.2%で全国9位で、地方都市では最も金持ちが多い。

○公務員は富裕層である。雇用者一般の平均月額報酬は約24万8800円、地方公務員の平均月額報酬は41万1300円で、その格差1.65という数値。全国平均は1.22であるので、沖縄県は最悪の“公民給与格差"を持つ県である。

○県民雇用者報酬全体に占める公務員人件費は、23.75%で全国ーである。全国平均は11.74%、最低は神奈川県の7.66%である。細かくみると、地方公務員と国家公務員の総数約4万7000人、米軍基地従業員約9000人を加えると合計約5万6000人で、沖縄県の雇用者総数52万人に占める比率は10.7%(全国平均6.4%)である。つまり、雇用者総数の約1割しかいない公的サービス従業者が、県民雇用者報酬総額の約4分の1を受け取っている。

北海道出身者としては、何だか北海道の“官尊民卑"を思い出して、身に詰まされてしまった。著者は、沖縄経済の分析と提言を示しているので、最後に紹介する。

沖縄県にとって最大の経済的な課題は何よりも「貧困」にあります。が、この問題をさらに掘り下げてみると、①所得(雇用者報酬または労働分配)が公務員に偏在している。②所得上の著しい公民格差が存在する。③政治的な影響力のある公務員が経済的イニシアティブも握っている。④結果として「民」優位ではなく、琉球王朝以来の「公」優位の経済社会が温存されている、といった問題点が浮き彫りになります。失業率や沖縄を悩ます他の経済的・社会的課題の大部分も「公」優位の、言い換えれば「公が支配する社会経済体制」に起因すると考えて良いでしょう。基地問題だけに目を向けて、公務員によるこのような「支配体制」から目をそむけているようでは、現状はけっして改善されませんー

ー沖縄をいつまでも子供扱いしてお金を注ぐこういう人たちは、本当は沖縄の自立など、どうでもいいのではないかと思います。沖縄への贖罪意識からの解放と自己満足が本当の目的ではないのか。…どうでも関わりたい時、支援したい時は、沖縄観光に行くか沖縄産のものを買い、きちんと対価としてお金を落とす。これで十分ではないでしょうか。「沖縄を助ける」とか「沖縄のために」などという不遜で傲慢なアプローチではなく対等に接するべきです。過度な振興策や民間の支援は、自身の努力でお金が島に落ちる当たり前の経済活動の仕組みを破壊し、自立心と創造力を奪うだけですー

と指摘している。沖縄県の理解力が不足している我が輩としては、まさに“目から鱗が落ちる"という一冊であった。