読売新聞は、8月19日付けと6月27日付けで、公立小中学校の非正規教員の多さと、給与の低さを大きく報道した。筆者も、この現実を見過ごせないので、文章を作成することにした。先ずは、非正規教員の実態を紹介したい。
○全国の教員定数は58万1357人(16年度)、このうち4万1030人が臨時的教員で、定員の約7%を占めている。
○臨時的教員の割合が高い都道府県は、沖縄県15.5%、奈良県12.4%、三重県12.3%、宮崎県11.7%、埼玉県11.7%で、低いのは東京都1.4%、新潟県3.1%、福井県3.8%、長崎県4.2%、富山県4.7%である。
○給与は正規教員の5〜8割程度で、育児休業は原則取れず、通勤手当や扶養手当は出ない地域もある。
さらに、個別の事象を紹介すると、
○富山県の小学校の臨時教員(30歳代後半)は、午前7時過ぎに登校して、帰宅は午後10時前後。給与は正規教員の6割強で、昇給の見通しもなし。
○熊本県、茨城県など38都県は、給料表とは別に条例や内規などで上限を設けている。そのため、鹿児島の給料表の最高は月40万5600円だが、規定により20歳代後半の給料と同程度の月22万1200円を上限としている。
○教員歴10年で九州地方の臨時的教員女性(40歳代)の年収は、上限の約250万円。そのため「低収入のため自分の子供は就学援助を受けている」と嘆く。
以上のような実態を知ると、果たして日本の教育現場は、これで良いのかと考えざる得ない。新聞紙上でも、非正規公務員問題に詳しい地方自治総合研究所の上林陽治氏は「臨時的教員が人件費抑制の手段に使われているということ」と話し、日本福祉大の山口正教授は「臨時的教員らの処遇はあまりにも低く、放置できない状態だ。短期雇用が繰り返される現状は、教師として子どもを継続的に見守れず、教員の力量の向上を困難にするなど、安定的な教育を保障するうえで、支障が出ている。教員といえども、労働者としての権利を守る法律を整えるべきだ」と指摘している。また、文科省も臨時的教員ではなく、正規教員を採用するように各教育委員会に要請しているという。
そもそも、本来は「臨時的教員」という以上、“臨時的に教員を務める人"のことを言うのであろう。ところが、実態は正規教員として採用されない人が、臨時的教員として働いている場合が多いようだ。その背景には、各地の教育委員会が、将来の子どもの減少に備え、正規教員の採用数を抑えている影響が大きい。ある教育委員会幹部は「正規教員は将来、子どもの数が大きく減っても解雇できず、財政を圧迫しかねない。そこで新卒の教員採用を抑え、臨時的教員を雇用を増やした」と語っている。つまり、臨時的教員を雇用の「調整弁」にしているのだ。
このような状況を放置していて良いのか。これでは、志のある教員も、身を削って教育に邁進することは出来ない。一方、生徒側から見ると、尊敬も出来ず、同情すらしてしまう。その結果、逆に生徒側から蔑まされ、精神に異常をきたし、自殺に至る教員もいるのではないかと想像してしまう。生徒側から同情される実態は、絶対に避けなければならない。
いずれにしても、正規教員の採用数の増減に関して、最終的には議会が決議する。この現実を考えると、これまで何度も指摘したが、地方議会費四千億円はどうなっているのだ。教員の仕事は、長期的には莫大な価値を生み出すが、地方議会はほとんど経済成長に貢献出来ず、さらに何ら価値を生み出さない。その意味で、議員報酬を削減して、正規教員数を増やすべきなのだ。
日本では長年、子どもたちに対して、「日本には地下資源がないので、人材育成に力を入れてきた」旨の教育をしてきたハズだ。そうであるならば、教育現場の劣化は絶対に許されないのだ。