観光白書から読み解くインバウンド

以前からインバウンド(訪日外国人旅行者)は、国籍的にはどの地方を多く訪れているのか、等々に関心を持っていたので、地元の図書館に備えていた「観光白書(令和元年版)」(令和元年10月30日発行)で勉強してみた。そこで、白書の資料一覧表(2018年〈平成30年〉)からインバウンドの数は、11年の622万人から右肩上がりで増加し、18年には11年の5倍となる、3119万人であることを確認すると共に、都道府県への波及効果を調べた。

まず最初は、上位都道府県別の延べ宿泊者数(万人泊)と外国人延べ宿泊者数(万人泊)及びその割合である。ちなみに、全国の宿泊者数は5億902万人泊で、外国人は8859万人泊である。

①東京都…6120万人のうち2177万人(35・6%)。

大阪府…3576万人のうち1389万人(38・8%)。

③北海道…3527万人のうち818万人(23・2%)。

京都府…1828万人のうち571万人(31・2%)。

沖縄県…2283万人のうち525万人(23%)。

⑥千葉県…2518万人のうち406万人(16・1%)。

⑦福岡県…1592万人のうち316万人(19・8%)。

⑧愛知県…1729万人のうち291万人(16・8%)。

続いて、全宿泊者数に対して外国人宿泊者数の占める割合が高い都道府県である。

大阪府…38・8%、②東京都…35・6%、③京都府…31・2%、④山梨県…25・9%、⑤北海道…23・2%、⑥沖縄県…23%、⑦岐阜県…20%、⑧福岡県…19・8%である。

ここでは、山梨県の4位が目を引くが、おそらく富士山登山と関係があるのかもしれない。

ちなみに、ワーストは島根県…281万人のうち6万人(2・1%)、高知県…287万人のうち8万人(2・8%)、福井県…402万人のうち8万人(2%)である。

以上の結果から言えることは、東京都、大阪府京都府がインバウンドの恩恵を一番受けていることがよくわかる。

引き続き、インバウンドが多い中国(838万人、26・9%)、韓国(754万人、24・2%)、台湾(478万人、15・3%)の宿泊者の割合が高い都道府県である。まず始めは中国である。

静岡県…65%、②奈良県…54%、③愛知県…49%、④千葉県…37%、⑤三重県…36%、⑥大阪府…32%である。

静岡県が断トツで多いのは、これまた富士山と関係があるのか?

同じく韓国の割合が高い都道府県は、

大分県…59%、②佐賀県…52%、③福岡県…48%、④山口県…46%、⑤宮崎県…44%、⑥長崎県…35%である。

大分県が断トツであるが、ここには韓国人旅行者に人気がある温泉地・由布市湯布院町がある。しかし、18年に訪れた約90万の外国人のうち、半分を韓国人が占めていたが、昨夏以降は日韓関係の悪化で急速に減少しているという。

同じく台湾の割合が高い都道府県は、

岩手県…59%、②山形県…46%、③秋田県…43%、④群馬県…42%、⑤宮城県…41%、⑥岡山県…35%である。

次はインバウンドの旅行消費額で、日本全体の消費額は、12年の1兆0846億円から、18年は4兆5000億円を超えた。また、主なインバウンドの一人当たりの旅行消費額は、豪州24・2万円、中国22・4万円、英国22・0万円、米国19・1万円、香港15・4万円、台湾12・7万円、韓国7・8万円という。そこで国籍別の旅行消費額を計算すると、豪州(55万人)1331億円、中国(838万人)1兆8771億円、英国(33万人)726億円、米国(153万人)2922億円、香港(221万人)3403億円、台湾(476万人)6045億円、韓国(754万人)5881億円となる。問題は、その旅行消費額が地方にどのくらい落ちているかだ。

例えば、北海道を取り上げると、外国人宿泊者数は818万人で、内訳は中国25%、台湾20%、韓国19%、香港10%、タイ6%、その他21%である。旅行消費額は、外国人宿泊者数が全宿泊者数の約9・2%であるので、約4140億円ということになる。

昔、インバウンドで一人当たり18万円を7人が消費すれば、日本人一人の消費額(126万円)と同じということを聴いた。つまり、北海道の旅行消費額約4140億円は、道民約33万人が増加したことと同じだ。また、日本全体のインバウンド消費額が4・5兆円であるから、国内の個人消費(約300兆円)の1・5%に相当するが、北海道の場合には個人消費額(約15兆円)の2・5%に相当する。その意味では、国内平均以上の数字をはじき出しているので、それなりに消費に貢献していると言える。

吾輩の分析もこの程度であるが、別の統計では、インバウンド全体の旅行消費額に占める中国人の消費額は34・2%である。中国人は買い物が大好きで、国別消費額で断トツで2位は韓国の13%という。それを考えると、全世界で猛威を振るう新型コロナウイルスの蔓延は、我が国の経済・消費活動に大きな影を落としつつある。と同時に、諸々の動きを見ると、今後の世界経済の生産・調達体制が大きく転換する機会になってきた。そして、中国人のインバウンド観光、消費を追い風として発展してきた地方経済の下押し圧力になった以上、どのように乗り越えていくのか、これからも関心を持って見ていきたい。