北海道のバス運転手不足が深刻だ!

10月6日の夜、インターネットで「北海道新聞」の社説を見ると、見出し「バス運転手不足、路線網守る体制急務だ」が掲載されていた。

道内各地のバス路線で廃止や減便が相次いでいる。北海道新聞の調査では主要な20社のうち半数の10社が今年減便を行っていた。

深刻な運転手不足が理由だ。北海道バス協会加盟の運転手数は昨年5496人で30年前のピークから3割減った。厚生労働省によると平均年齢は55・3歳で10年前から10歳上がり高齢化も進む。

生活の足である路線バス網が機能しなくなれば地域の衰退は加速する。運転手不足は全国的な問題だが、面積が広大で集落が点在する道内はより影響が大きい。

住民の予約で運行する「デマンドバス」や乗り合いタクシー、自動運転など新たな動きも見える。

今が対策の正念場だ。バス会社と各市町村がメリットや改善点を共有して、国、道が広域支援する体制をつくり上げねばならない。

夕鉄バス(夕張)は夕張市など南空知5市町と札幌市を結ぶ計3路線を先月末廃止した。48年前の夕張鉄道廃線後を支えた路線だ。

北海道北見バス(北見)は7月から65便を減便中だ。北見地域で平日運行する便の12%に当たる。

札幌圏や都市間バスも例外ではない。4社共同運行だった函館ー札幌間は1社が撤退し、今月から1日4往復に半減してしまった。

バス運転手の年収は全職種平均より1割以上低いといい、若手採用は苦戦する。労働時間上限や休息を義務付ける2024年問題が業界に及び人手不足は加速する。

道は先月にバス協会と合同採用説明会を開いたが、従来型の取り組みだけでは限界があろう。

名寄市は来月から人口知能(AI)活用型のオンデマンドバスを運行する。利用者の予約からAIが最適な経路を算出し、乗り合い方式で効率的に走らせるという。

苫小牧市は先月から中心部で自動運転バスの実証運行を始めた。十勝管内上士幌町などは実施済みだが都市部では道内初となる。

いずれも先端技術で人手不足を補う試みだ。安全最優先を念頭に冬季路面などでの課題を洗い出し全道展開できるよう期待したい。

物流との協働も大切な視点だ。オホーツク管内斜里町の斜里バスはヤマト運輸と連携し、路線バスに宅配物を乗せて運ぶ「貨客混載」を今年から始めた。今後は都市間バスも検討する。

道内はJR北海道の経営難で鉄路廃止が相次ぎ、道も容認してきたが一部でバス転換のめどが立たない状態だ。これでは「住民の足」が消滅する。道は方向転換し鉄路とバス共存を図る必要がある。

バス運転手の不足は何も北海道だけの問題ではなく、そもそも「2024年問題」とは、働き方改革関連法により、2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間が原則960時間に制限され、退勤から出勤までの休息時間が8時間から9時間に拡大されることなどによって引き起こされる乗務員不足を指す。そのため、バス、トラック、タクシーなどの関係業界は運転手不足が一気に悪化すると恐れているのだ。そのほか、運転手の高齢化(大型2種免許保有者の83・3%が50代以上)もあり、その影響が北海道ではバス運転手不足という形で表面化したが、それがJR北海道の鉄路存続協議に影響を与えるような状況になってきた。

そうした中、政府は10月6日に「2024年問題」への対応を議論する関係閣僚会議を開き、トラックの代わりに船や鉄道で運ぶ貨物量を「今後10年で倍増(2020年度比)」させる目標を定めた。この会議で浮上した問題点を上げると、

〇来春から残業規制が適用されると、24年度にもトラックの輸送能力が14%不足すると試算される。

〇トラック運転手の年間労働時間は全産業平均より2割長いが、年収は1割低い。就業人数は30年、15年比で3割減るという推計値もある。

〇再配達の割合が1割程度の場合、年間約6万人の労働力が余計に必要となるので、現在12%の再配達率を24年度までに6%まで半減させる。

そういうことで「2024年問題」を具体的に解説したが、それが本題の本筋ではない。つまり、JR北海道の鉄路存廃問題を議論すると必ず「鉄道代替バス」に繋がるが、今後はバス運転手不足から簡単に「バス転換」というわけにはいかない現実が起きているのだ。例えば、北海道新幹線並行在来線となるJR函館線の山線区間(小樽ー長万部間)では、札幌市や小樽市への通勤・通学客が多い小樽ー余市間(約20㌔)まで地元の声を無視して、道庁が主導する協議会(道と経済団体などで構成)と地元自治体との協議の場において廃線が決定した。だが、道庁が示した「バス転換」案は運転手不足などを背景に、沿線が求める鉄道並みの輸送力維持が難しい状況となっている。

そもそもJRは利用者が1日あたり「2千人以上」であれば、鉄道の特性が発揮できると答えていたにも関わらず、2018年度の小樽ー余市間は「2144人」に達していた。だが協議会では、収支の赤字を過大に、売上高を過少に見積もり、バス会社との協議もなく決定したので、山線の「バス転換」が混迷する事態に陥った。そこには地域の足をどう保てばよいのか、という最も重要な未来像が抜け落ちていたからで、その原因は想像力や先見性がなく、土地勘や地域愛もない人物が議論をリードしているからだ。

欧州諸国では、定時・大量輸送ができる鉄道を脱炭素対策から広く公金で支えて利用促進を図っている。特にドイツでは道路の維持は安価ではないとして、連邦予算では鉄道には道路を上回る予算額が配分され、今後は廃止路線を復活させる計画も進められている。そういう意味から、北海道新聞「社説」は非常に重要な一石を投げかけたと言える。