JR北海道の現状と改革案

筆者は、大の鉄道好きかもしれない。だからこそ、都内の書店で「全国鉄道事情大研究ー北海道篇」(著者・川島令三、2017年4月19日発行)という新刊を見つけると、迷わず購入してしまう。川島氏の著書は、以前に数冊読んでいるが、その知識の豊富さと、鉄道路線の改革案に対しては、大変驚いたものである。そのような経験から、川島氏がJR北海道に対して、どのような提案をするのか、期待と楽しみを持って熟読した。

筆者は以前、絶対に廃止してはならない路線として、札幌〜網走間、札幌〜稚内間、札幌〜根室間を挙げた。ところが、昨年11月、JR北海道が「当社単独では維持困難」とする10路線13線区を正式発表した中に、石北本線宗谷本線(名寄稚内間)、根室線(釧路〜根室間)、釧網線が入っていた。という訳で、上記4路線を取り上げて紹介することにした。

1.石北本線

◇高速バスの札幌〜網走間の所要時間は6時間、札幌IC〜丸瀬布IC間で高速道路を使うクルマの場合は4時間45分である。特急「オホーツク」は5時間20分程度だから、バスよりも速いが、クルマには完全に負けている。また、高速バスの運賃は6390円、特急「オホーツク」の運賃と料金の合計は通常期で9910円なので、時間がかかっても高速バスを選ぶ人は多い。今後、丸瀬布から北見に向けて高速道路が延びていく。高速バスよりも所要時間を圧倒的に短くしないと、特急「オホーツク」は利用されなくなってしまう。そのためにはスピードアップが必要である。

…上川〜白滝間の石北峠を一気に単線トンネルで貫通させ、160㌔運転をすれば35分は短縮する。新形気動車を走らせるのだから他の区間でも短縮することから札幌〜網走間の所要時間は4時間30分をきることは可能である。これで一気に利用者は増える。相当な費用が必要になるが、道路整備費に比べれば安いものである。◇

誠に、ごもっともな指摘・提案である。例えば、特急「オホーツク」が石北トンネルを越える際、上下線とも時速30〜40㌔くらいの速度でトンネルに向かって行く。そのため、筆者は若い頃に利用した際には、“走った方が速いのではないか"と思ったものである。多分、全国の特急列車の中で、“最も遅い区間がある"特急列車だと思う。

そこで筆者も提案したい。石北トンネルは、長さ4356㍍で、完成は1932年(昭和7年)である。当時としては、長大トンネルであったが、現在ではそれほど長いトンネルではない。ここは、15〜20㌔のトンネルを新たに建設するべきだ。更に、常紋トンネル(507㍍)は、完成が1914年(大正3年)であることで、構造物の老朽化が問題になっており、新たに5㌔前後のトンネルを建設するべきである。このほか、遠軽駅スイッチバックの解消も考えるべきだ。廃止されるくらいなら、地元は何でも協力するハズだ。

2.宗谷本線

◇クルマで札幌から稚内まで行くには道央自動車道と西海岸経由のオロロンラインを通ると5時間ほどかかる。スピードダウン前の「スーパー宗谷」も5時間弱と同じだが、クルマよりも列車が便利だと感じるためには4時間半以下にする必要がある。そのためには別ルートの高速線を建設しなくてはならない。これは大変な経費がかかり、現在のJR北海道では無理であり、その株主の鉄道運輸機構も、そんな予算を出せる余裕はまったくない。…結局、究極的には名寄稚内間の廃止か、一歩譲って冬期運休の観光鉄道にするしかない。その場合、JR北海道単独で運行する方法と、大手ツアー会社とのタイアップ、または大手ツアー会社が運営する第二種鉄道事業者の参入かである。◇

多少、悲観的な見方であるが、著書を読んでいると、名寄以北の路線は、天塩川に沿って建設されているので、カーブ・蛇行の連続である。例えば、筬島駅〜佐久駅間では、北に向かっている列車が、2回ほど南向きに走るという。そこで筆者は、音威子府駅幌延駅間は、新たに路線を建設するべきと提案したい。新路線であれば、確実に30分は時間短縮出来る。

3.根室線

根室本線が大きく変わる可能性が考えられる。北方四島のうちの歯舞、色丹島根室に近い。日本が何らかの形で、これらの島の開発にかかわるとすれば、その資材輸送の基地として根室港が使われる可能性がある。そうなると札幌貨物ターミナルから根室駅にはかっての貨物ヤードが空地のまま残っている。すぐに貨物ヤードは復活できる。◇

要するに、北方領土問題が解決した後の可能性を述べている。しかしながら、現実は無法国家・ロシアが相手である以上、簡単なことではない。

4.釧網線

釧網線は石勝・根室本線と函館・石北本線を結んで周遊ルートを形成している。釧網本線がなくなるとクルーズトレインを走らせても、石勝・根室本線あるいは函館・石北本線を往復するだけのつまらない観光クルーズになってしまう。

JR北海道が赤字のため、このようなクルーズトレインは運行できないというのならば、ツアー会社などが運営して、豪華な、あるいは大衆的な観光列車を走らせればいい。◇

多少、夢のある話しであるが、その通りと思う。補足するならば、釧路湿原と釧北トンネル(549㍍)付近は、釧網線に沿って道路が通っていないことを考慮するべきである。

以上、4路線の現状を紹介すると共に、廃止を避けるための提案をした。要は、いかにスピードアップするかなのだ。そうであるならば、新たに“直線的な新路線を建設する"ことは、避けて通れない問題と言える。また、北海道の鉄道の橋やトンネルの約1割が、築100年以上という現実を考えると、思い切った路線変更のチャンスと考える。

というものの、新たな路線建設や維持には、莫大な資金が必要である。だから、筆者は以前から「北海道開発費」を投入することを訴えている。多い時には、1兆円を超す「北海道開発費」は、どこに投入して消えてしまったのか。先見性のない人物が、北海道開発庁や道庁の幹部に就任していたから、今日のJR北海道の現状を招いた面もあるのではないのか。その意味で、現代を生きる者は、未来人から批判される“愚策"は避けなければならない。