全国高校駅伝のルール変更は遅きに失した

12月24日開催の「男子第74回、女子第35回全国高校駅伝競走大会」(毎日新聞社日本陸上競技連盟、全国高校体育連盟、京都府京都市、両教育委員会主催)をテレビ観戦した日の夜、インターネットを見ていたら「毎日新聞」電子版が「全国高校駅伝 来年から外国人留学生起用は3キロ区間だけに」と題して、次のように報じていた。

全国高校駅伝競走大会の実行委員会は24日、来年の大会から男女とも外国人留学生の起用を最短距離の3キロ区間のみに制限すると発表した。大会は男子が7区間42・195キロ、女子は5区間21・0975キロで争い、外国人留学生はこれまで最長の1区(男子10キロ、女子6キロ)を除いて起用できたが、留学生の走りで順位が大きく変わるケースが多かった。

来年の大会から、留学生が走れるのは男子が2区か5区、女子は3区か4区の3キロに限られる。

留学生の参加は高校教育のグローバル化、日本選手の競技力向上などの利点はあるものの、実行委は「留学生の特性も考慮し、男女とも最短区間の3キロとした」としている。都道府県高校体育連盟の陸上関係者に意見を求めるアンケートを実施したところ、留学生の区間制限に過半数が賛成したという。

全国高体連は1994年に留学生のエントリー数について「20%前後を原則」と定め、全国高校駅伝では95年に男女ともエントリーは2人、出場は1人と制限された。しかし、男子の最長区間の1区で留学生が飛び出し、日本選手と大差がつく展開が恒常化し、2008年から留学生は男女とも1区は走れないように規定が変更された。

また、来年大会から出場枠が増え、男女とも都道府県代表の47校に加えて、全国11地区代表を含めた各58校が出場すると発表した。都道府県予選の参加校数が減少傾向にあり、出場校も特定化されていることから、全国大会への出場機会を広げる。

これまでは都道府県代表の男女各47校が出場でき、5年に1度の記念大会では地区11校も出場するなどしていた。

思い返すと、吾輩は2013年12月25日付「全国高校駅伝大会とケニア人留学生」、翌14年12月22日付「全国高校駅伝が面白くなくなった!」と題して、いわゆる外国人留学生の起用に疑問を投げかける文章を作成した。そこには高校時代から、高校駅伝を半世紀にわたってラジオやテレビで楽しんだり、月刊誌「陸上競技」などの書物を購入して、いろいろと分析してきた経緯があったからだ。また、7~8年前には、高校駅伝の主催者「毎日新聞社」に電話をして、「運動部の記者」に疑問点をぶつけたことがある。さらに翌年にも、同じように毎日新聞社に電話をして、「運動部の記者」に繋いでもらったが、電話に出た記者が前回と同じ相手で「アー、確か昨年も電話しましたね」と嫌味を言われたりと、自分なりにルール変更に努力をしてきた(笑)。それくらい、外国人留学生の起用方法に異議を唱えてきたものの、この程度の"モノ申す″では何らの影響を与えることができず、この数年間はただただテレビ中継を観戦してきた。

だからこそ、ネットで「毎日新聞」を読んだ時には非常に驚いたのだが、外国人留学生の起用に関しては、既に30年前から〝安易な考え方″ということで、多くの関係者たちが反対意見を述べていた。例えば、全日本実業団対抗駅伝では、外国人選手はインターナショナル区間として、男子駅伝(総距離100㌔)では7・8㌔、女子駅伝(総距離42・195㌔)では3・6㌔と、共に最短区間しか走れない。そのような実態があるにも関わらず、高校教育の一環である部活動の駅伝で、長年にわたって「不平等この上ないルール」をほったらかし、なぜ今になって突然「男女とも最短の3キロ区間に限る」などと決定したのか。要するに、「吾輩の楽しみを30年間も奪っておいて、何食わぬ顔でルールを変更」というのだから、嬉しい半面怒りも大きいのだ。

※追加ー翌12月25日付け大手新聞の報道内容

毎日新聞小見出し〈見解さまざま〉

ー留学生の走りが勝負を大きく左右するなど、その起用はこれまでも議論を呼んでおり、関係者からはさまざまな見解が聞かれた。

女子・神村学園の有川哲蔵監督は「カリバが練習を引っ張ってくれることで、日本選手の強化につながり、カリバ自身も強くなる。そんな作用が今日の結果につながった。区間制限は国際化を重視する時代の流れに逆行しているのでは」と胸中を明かした。

一方、日本選手のみの男子・佐久長聖の高見沢勝監督は「留学生のいるチームにどうやって勝つか考えるのも一つの面白み」としつつ、「実業団などと比べると、高校駅伝は留学生の走る距離の割合が多かったと思っていた。(今回の決定で)他の駅伝と並んだのかな」と受け止めた。

仙台育英の千葉裕司監督は「どこかのタイミングで(競技レベルの)均一化は必要だと思っていた」と理解を示す。

また、教育的な視点から、留学生のあり方を見直すべきだとの意見も聞かれた。

今大会の女子で3位に入り、留学生のいない立命館宇治の萩野由信総監督は「日本語や日本の文化を学ぶなど、留学生の本分を全うさせた上で、駅伝があるのならいい。ただ勝つことだけを考えて留学生を呼ぶチームが有利になることは避けるべきだ」と強調する。

同じく留学生のいない浜松市立の杉井将彦監督は「留学というのは大きな決断。にもかかわらず、彼ら彼女らを(勝利のために)使っている大人がいる。(留学生を取り巻く)現状は彼ら彼女らにとってプラスとは思えない。『日本に来てよかったな』と思えるようなルール作りを考えるべきではないか」と訴える。

朝日新聞

ー~また、留学生の出場区間を男子が2区または5区、女子が3区または4区と規定した。近年、圧倒的な走りを見せる留学生が増えたため3㌔の最短区間に限定する。ー

〇読売新聞

ー~また、留学生の起用区間も来年から変更する。これまでは最長の1区(男子10㌔、女子6㌔)を除く区間に配置が可能だったが、今後は男女とも3㌔の最短区間(男子2、5区、女子3、4区)だけとなる。

実行委によると、全国高体連陸上競技専門部は2018年度以降に都道府県高体連を通じて加盟校にアンケートを実施。留学生の走力で勝負が決まる近年の傾向を危惧する回答が多くあったことから変更する。ー

産経新聞

ー~また次回から、外国人留学生の起用は男女ともに最短距離の3㌔区間のみに限ることも決めた。1995年から出場を1人に限定し、2008年からは最長区間の1区(男子10㌔、女子6㌔)での起用を禁じていた。

留学生の圧倒的な走力が大会結果に直結することを懸念する声が上がっていたが、全国高校体育連盟(高体連)は短い区間で留学生と競り合うことによる日本選手のスピード強化が狙いと説明。関係者は「留学生の活躍の場を奪うものではない」と話した。ー

以上が大手新聞の解説記事であるが、いくら説明を聞いても全然真相がわからない。これでは、再び高校駅伝が熱烈なファンに支持されるためには、真実を明らかにするしかないではないか。いずれにしても、来年1月13日には「月刊陸上競技2月号」が発売されるので、何らかの解説記事が掲載されていれば紹介したい。

 

※後記ー「月刊陸上競技2月号」より

全国高校駅伝の大会要項変更ー毎年地区代表も出場し58校、留学生は3㎞区間限定〉

日本陸連や全国高体連などで構成される全国高校駅伝大会実行委員会は12月24日、2024年12月22日に開催される次回以降の大会要項を発表した。原則5年に1回だった11の地区代表を毎年設け、47都道府県代表と合わせて58校が出場。また、外国人留学生の起用を3㎞(男子は2区と5区、女子は3区と4区)に限定すると決めた。

発表によると、毎年地区代表を設けることについては、都道府県大会出場校が年々減少し、全国大会出場校が特定化していることから、全国大会への出場機会を広げ、地区大会の開催意義を明確化するのが狙い。全国高体連では、「都大路へのチャンスを増やし、駅伝や中長距離の競技の普及やレベル向上に努めたい」としている。

全国高校駅伝での外国人留学生は2008年度大会から、現行の「1区を除く区間で出場は1名」と定めたが、その後も検討事項として継続。19年と21年には全国高体連陸上競技専門部の加盟校に対して、意見を求めるアンケートを2度実施した。いずれのアンケートでも、留学生区間のさらなる制限に過半数が賛成したという。

それに加えて、「ジュニア期のスピード育成を鑑みて、留学生の特性の1つであるスピードを短期区間で発揮してもらい、そこに挑む日本人高校生のスピード向上も期待したい」(全国高体連陸上専門部・土方賢作部長)として、留学生の3㎞区間限定を決めた。代表校を決める都道府県大会や地区大会にも適用される。

留学生にとっては、区間限定に加え、距離が短くなるが「高校駅伝への出場機会や部活動を含めた教育の機会を奪われることはないと考えている」と土方部長は説明。この変更については「今後も検証していく」とした。