北方領土問題に対する日本人の心構え

ウクライナ戦争に関連して、2月28日にホワイトハウスで開かれた首脳会談で、ドナルド・トランプ米大統領ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を公然と𠮟りつけた上に、対ウクライナ軍事支援を停止すると発表した。このようにアメリカが急激な方向転換を図ったことから、今後の行方を知りたくて在日ウクライナ国際政治学者の新刊書「ロシア・ウクライナ戦争の行方/世界の運命の分岐点」(著者=グレンコ・アンドリー〈1987年生まれ〉、2025年3月1日初版第1刷発行、扶桑社新書)を読了したものの、著書の中では北方領土に関する認識が非常に参考になったので、その部分を紹介することにした。

北方領土解放のために日本が準備すべきこと〉

だが、もし日本の政界や日本社会全体が北方領土に関する認識を根本的に改めなければ、機会が訪れても、領土を解放するのは100%不可能だ。日本政府や日本社会全体は、北方領土を必ず取り戻さなければならないという強い信念を持つ必要がある。日本の政治家、メディア、言論人、学者などは、北方領土の解放を国家の最優先課題の一つとして制定し、日常的にこれに関する議論をしなければならない。

ロシアと交渉するとか、北方領土在住のロシア人と民間交流を深めるとか、そういった無意味どころか、北方領土解放を遠ざける有害な話を一切なくし、具体的にどのように取り返せるのか議論するべきだ。

当然、精神的な準備だけではなく、物理的な準備も必要だ。戦争して取り返すわけではないが、強い立場で返還させる、もしくはいざとなれば実力行使で解放するための強い軍事力が必要だ。先述したように、北方領土問題とは関係なく日本の抜本的な防衛力強化が必要だが、北方領土解放を考える上でも、強化が不可欠だ。日本の自衛隊に、北方領土解放専用部隊を創設し、常に解放を想定した訓練を行うことも望ましい。

領土解放に向けて、他にもさまざまな準備が必要だ。解放を実行する人材や装備だけではなく、解放の直後に復帰した領土の統治を行う人材も、荒れ果てた土地の復興を行う物資なども必要だ。だから、北方領土と隣接している北海道を、解放に必要なものが集中されている根拠にしなければならない。

結局、日本が精神的にも物理的にも北方領土解放のために努力しない限り、永遠に取り戻せない。今から準備を始めないと、突然現れる北方領土を取り戻す機会を活かせず、その時こそ取り返しのつかないことになる。だから、日本の政治家と専門家に求められることは、取り返す機会が現れた時に、情勢を正確に見極め、「チャンスは今だ」と気づく能力だ。そして、取り返す機会を見極めた時に、瞬時に動く能力だ。

もちろん、「機会を持つ」だけでは不十分だ。機会を近づけるための努力が必要だ。だから、ロシアが混乱に陥るための政策が必要だ。諜報、特に対外謀略は戦後日本の苦手分野だが、自国の領土を解放し、主権を回復するにはこれも必要なことだ。日本は諜報能力を持ち、ロシアを混乱させる必要がある。

混乱させる方法はさまざまだが、ロシア人同士の対立を誘発するのは基本的な方針になると思われる。ロシア国内で、社会階級、地域、思想、宗教などのベースでロシア人同士が対立し、その対立が暴動や武力衝突につながることが望ましい。

また、ロシア人同士の対立以外に、ロシアが支配している諸民族の独立運動を支援する必要がある。今の「ロシア連邦」とは、統一している国ではなく、ロシア人によって支配されている植民地の集合体だ。「ロシア連邦」は21の共和国、1つの自治州(ユダヤ自治州)、10の自治管区、6つの地方、49の州、そしてモスクワ市とサンクト・ペテルブルグ市の89の連邦構成主体から成り立つ。

この場合、ロシア人は本土がどうなるかということに精一杯になり、遠く離れた島に構う余裕がない。だから、日本は戦争することなく、無血で北方領土を解放できる。ちなみに、このシナリオでは、いわゆる北方四島だけではなく、ロシアが不法占領しているすべての領土、つまり千島列島と南樺太も解放できる。

もしロシア政府が機能不全に陥り、解放を妨害する力がない場合、北方四島を無血で解放することと、千島列島と南樺太を解放することに、大した差はない。物理的にすることはまったく同じで、上陸する範囲が広くなるだけだ。だから、日本はわざわざ遠慮して、北方四島だけに止まる必要はない。不当に奪われた領土をすべて取り戻せばいい。

千島と南樺太をどのような根拠で取り返すのか、という疑問もある。たしかに、日本は一度、千島列島と南樺太を放棄している。しかし、それらをロシアに割譲したこともないし、日本に勝ったアメリカも千島と南樺太ソ連への編入を認めていない。だから、少なくとも、ロシアにそれらを支配する権利はない。ロシアの支配が不当となれば、どの国が支配するのか。中国もアメリカもそこを統治する根拠がない。独立国家を作る能力のある先住民もいない。そうなれば、千島と南樺太で何百年にもわたって生活をしていた日本人の統治課下に戻すのが最も自然な解決だろう。

さらに、この領土が日本から奪われた経緯を考えれば、なおさら日本に戻す以外の解決策はないというのは明らかだ。ソ連は1945年8月9日、突如、日ソ中立条約を破棄し、対日参戦した。日本の領土を奪い、日本の民間人を大量に虐殺した。そのまま北方四島を不法占拠し、80年が過ぎようとしている。

これほどの戦争犯罪をロシアから受けた日本は、損害賠償という観点からも千島と南樺太を復帰させる権利があるだろう。筆者の意見では、ロシアによる対日犯罪の規模を考えれば、千島と南樺太返還だけでも不十分なぐらいだ。

吾輩も、これまで同じようなことを書いてきたが、ここまでロシアに挑戦的なことは書けなかった。なぜなら、相手は「核兵器大国」であるので、軽々しく挑戦的なことは書けなかったのだ。しかしながら、ウクライナ人は、今まさにロシアと戦っているので、気持ちの高ぶりからか、日本に対しても同じような認識を持つべきと書いている。

昔、吾輩が親しい友人にアンドリー氏と同じようなことを言ったところ、「あんな島のことで、ロシアから核兵器を落とされたらどうするのか」と言い返されたことがある。その時には言い返すことができなかったので、それ以後は挑戦的なことは言わないようにしてきた。しかしながら、解決できる「チャンス」が訪れた時には、果敢に攻めなければ、いつまでたっても北方領土の奪還は難しいと言える。

いずれにしても、吾輩は生存しているあいだに、国後島択捉島を訪れて温泉に入る可能性は99%無理と考えている。しかし、領土問題は100年とか300年とかで対応しなければならないので、国民に対する教育は非常に重要である。そういう意味から、吾輩は何回も北方領土の問題点を取り上げて、全ての国民がいつまでも関心を持ち続けるように努めているのだ。