中国の共産党独裁体制は崩壊するのか

吾輩は、学生時代からソ連経済を勉強してきたので、共産党独裁国家の統計データのデタラメさは良く知っている。だから、同じ土壌の中国の共産党独裁政権の統計データも同じようにデタラメではないか、と疑ってきた。

そういうことで、吾輩と同じように中国共産党政権の統計データに疑問をユーチューブや書物で発信してきた2人が、新刊書「中国経済崩壊宣言!-断末魔の数字が証明する」(著者=元財務官僚・高橋洋一〈1955年生まれ〉、北京大学哲学科卒・石平〈1962年生まれ〉、発行所=株式会社ビジネス社)を出版した。そこで最初に、中国共産党政権が建国当時にご指導を受けた旧ソ連のGDP(国内総生産)統計のデタラメさを、高橋氏が解説する。

ソ連が行っていた偽造は半端なレベルではありません。ソ連が崩壊してみて初めてわかったのは、そのGDPは実は偽造統計の4割ほどしかなかったということです。つまり偽造統計の数字の6割減が正しい数字だったのです。

ソ連の公式統計によると、1928年から1985年までの国民所得の伸びは90倍。ところが実際には6・5倍しかありませんでした。平均成長率に至っては8・3%も成長しているとされていたのに実際には3・3%しかなかったのです。こうした事実もソ連が崩壊して明るみに出たのです。

ソ連のGDPは全部ウソだったため、ソ連の後継国家となったロシアにもソ連時代のGDPのデータが全くないのです。つまり、ソ連ではずっとGDPのデータはあったのにロシアではそれを全部消してしまいました。ロシアのGDPのデータは1992年以降のものしかありません。ー

どうですか、いかにソ連の統計データがデタラメであったかが分かりましたか。

続いて、中国共産党政権の統計データのデタラメさを、著者の2人が明らかにする。

中国国家統計局が、2023年4月18日に発表した23年第1四半期(1〜3月)のGDPは前年同期比4・5%増。同日に発表された第1四半期の固定資産投資総額(10兆7282億元)は前年同期比5・1%増、社会消費品小売総額も同5・8%増で、これが本当ならば成長率4・5%も全然おかしくありません。

しかし、同じ国家統計局が発表した前年同期、すなわち22年第1四半期の固定資産投資総額は10兆4872億元だったので、この数字から「5・1%増」となれば、今年第1四半期の固定資産投資総額は11兆220億元にならなけばならない。要するに約3000億元足りません。

逆に言えば、もし今年第1四半期の固定資産投資総額が国家統計局の発表した通り10兆7282億元であれば、それは前年同期からの伸び率は5・1%ではなく2・3%程度であって、2・8%ほど水増しされたものだ。(石平氏の言)

○国家統計局は23年第1四半期の成長率を4・5%増だったとする一方で、6月15日に同時期の16歳から24歳までの若年層失業率は20・8%と発表(※6月は21・3%、7月は発表を取りやめ)。私は直感的に25%(最近では45%以上と発言)を超えていると思います。いずれにせよ近年、中国では毎年1000万人もの大学生が卒業していますが、そのうち就職できる大学卒業生はおそらくその3分の1になるかならないかというところです。

大事なポイントの1つは中国のGDPはウソであることがほぼ確定したということです。成長率自体もウソで、おそらく本当の経済規模は発表の数字よりも何割かは少ないのです。(石平氏の言)

○中国の統計が異常なのは、消費の割合が異常に低いことです。普通の国なら消費はだいたいGDPの6割(中国36%)。また、失業の統計を出すセクションとGDPの統計を出すセクションを分けるのが国際基準です(日本ではGDPは内閣府、失業率は総務省統計局が担当)。しかし中国では、国家統計局がGDPも失業率も扱っているので、どちらにも手心を加えることができる。(高橋洋一氏の言)

以上、中国共産党政権の統計データがいかにデタラメであるかを明らかにした。つまり、中国のGDPは2022年で121兆元(約2420兆円)と日本の4・2倍だが、国家統計局が発表するGDPは信用できないので、いずれ中国共産党一党独裁体制は崩壊するということだ。

中国の共産党独裁体制の崩壊論に関しては、米中央情報局(CIA)が1993年頃に「共産党独裁体制は、2010年頃に3つくらいに分裂する」という分析をしていたので、吾輩は以前に「中国共産党体制はいつ崩壊・分裂するのか」旨の文章を作成したことがある。だから、米国は「中国は豊かになれば、いずれ民主化する」という甘い見通しに立って、中共政権の動向を優しく見つめていたのだ。ところが2010年頃になって、いつまでも民主化しないので、慌てて厳しい対応に転換したというのが米国の対中政策の実情である。脇の甘い米国よ!、という感じである。

そもそも米国の対中国大陸政策の失敗で、1949年に中国共産党により中華人民共和国が成立した。しかも、毛沢東が主導権を得て大躍進政策(餓死者が2000万人前後)や文化大革命という2つの狂気を振り回し、国民を奈落の苦しみに落としたが、一向に政権は崩壊しなかった。はっきり言って、蒋介石の国民党が政権を奪取していたならば、もう少し早く現在の共産党独裁政権並みの経済規模になっていたと思う。そういう意味で、中国大陸の人々が中国共産党の政権奪取を許したことが、悲劇の始まりであるのだ。

それにしても、高橋氏が2016年に「中国GDPの大嘘」という本を出したところ、日本人の中国研究者たちが職場の大学まで抗議に来たというが、できればその名前を公表してほしいものだ。そこには、現実に無知で空虚な御託を述べるだけの、洞察力の欠けた人間や組織が想像でき、こんな輩が日本の主要な地位にいることを許してはならないからだ。

最後は、高橋氏が統計分析の結果、「平和の3要件」を見つけ、今年4月28日の衆議院安全保障委員会で話した内容を紹介しよう。

ー「自国と相手国の民主主義度を高くすること」「相手国との相対的な軍事力の差を小さくすること」「有効な同盟関係を結ぶこと」の各要素ごとに戦争のリスクを避けられる確率を出すと順に33%、36%、40%となりました。ー

この内容は、安倍元首相にも伝えたということで、なかなか面白い分析である。そして、「平和の3要件」のうち「自国と相手国の民主主義度を高くすること」については、民主主義国同士はほとんど戦争をしない、民主主義国と独裁国家は戦争をそこそこにやる、独裁国家同士はすごく戦争をしやすい、ということのようだ。なるほどという分析である。