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北海道における“官尊民卑" の背景について

先般、図書館で月刊誌「WiLL」4月号を読んだ。そのの中に、著名な経済学者・日下公人の題名「繁栄のヒントー絵馬で分かる日本の常識」が掲載されていた。

「北海道に行って神社の絵馬を眺めてみると、ほとんどが『公務員になりたい』か『公的資格試験に合格したい』と書いてある。内地から北海道には毎年1兆円ずつの国家資金が①補助金か②交付金か③公共事業費用で何十年間も投下されているから、このように官尊民卑になったのかなと思った。…率直に見れば、北海道には役所にぶら下がる人が多くて自分で働く人が少ないことが分かる。多分、行政が肥大して過剰になっている」

全くもって、納得できる文章だ。さすが、短い文章の中で、的確に北海道の現状を分析している。そこで、日下氏が指摘した“官尊民卑"の背景を分析したい。

昨年の4月12日、人口規模がほぼ同じの北海道北見市(12.1万人)と千葉県我孫子市(13.3万人)の一般会計を比較する文章を作成した。その際には、北見市交付金補助金の多さ、そして公共事業費の多さを紹介して、道外の自治体との違いを浮き彫りにしたが、今回も同じ手法で説明したい。なお、()内の数字は、我孫子市の数字である。

先ずは、北見市の一般会計は746億円(385億円)。主な歳入は、市税=139.1億円(174.2億円)、地方交付税=193.2億円(27.3億円)、地方消費税交付金=22.9億円(15億円)、市債=135.1億円(38億円)である。

主な歳出は、人件費=90.7億円(84.8億円)、扶助費=106.3億円(83億円)、投資的経費<建設費>=148億円(43.5億円)である。

北見市我孫子市との比較で驚くことの第一は、予算規模が2倍近いこと、第二は地方交付税が7倍多いこと、第三は建設費が3倍多いことである。その背景には、北海道の開発予算(一般公共事業費)の存在もある。本年度は5188億円で、開発局の直轄事業として2726.3億円、自治体へは補助事業として2461.9億円が回る。この北海道開発費は、2000年ごろまでは1兆円近くあったが、今はかつての半分になっている。

北見市は、本年度も潤沢な建設費を確保して、公共施設を建設している。主な公共施設を上げると、中央図書館建設=26.5億円、端野小学校改築=20億円、北見赤十字病院改築支援=11.9億円、消防本部等建設=7.3億円、東陵公園整備=3億円などである。一方、我孫子市は、依然として約30億円の建設費を捻出できないためか、2008年に閉鎖・取り壊した「市民会館」(収容者約1000人)の建設が一向に進んでいない。そのため、市内には500人収容の会場しか存在しないので、毎年成人式は午前と午後の2回に分けて開催している。更に、市民のオーケストラや吹奏楽などの文化活動も、補助席を設営して500人収容の会場で開催している。

北見市の一般会計(建設費)の現状を見ると、同市での経済活動には、市役所抜きは考えられない感じを受ける。つまり、建設予算が多いので、地元の建設業者は、市役所が発注する公共事業に群がる状況になっている。そのような現状を見ると、大学や高校を優秀な成績で卒業した若者は、北見市など道内での就職を求める場合、圧倒的に“公務員志向"になることは、必然的なことである。最初の文章に戻るが、まさに日下氏が指摘した“官尊民卑"の背景には、北海道特有の経済状況がある。

しかしながら、国の借金が1000兆円を超える現状では、この先も公共工事を中心とする政府サービスに期待出来ないし、期待してはならない。そうであるならば、週刊誌「東洋経済」4月11日号の「北海道の窮状(貧困率16.4%、全国平均15.7%)は頑強で質のよい雇用を提供できる企業や産業の創出がいかに大事かを示唆する」という指摘を謙虚に受け入れるしかない。

要するに、この先も交付金補助金頼みで地元経済を維持していると、いつになっても地場資源を活用した産業は起きない。今こそ、地元のアイデアマンを支援するシステムを構築して、地元に産業を起こす時である。その意味では、自治体首長の志し、発想力、決断力、人脈などの資質は、非常に重要になってくる。