町村の図書館設置状況はこれで良いのか

謹賀新年。本年も変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

先ずは年始めに報告することは、吾輩のネットであるが、昨年は75本の文章を発信した。過去の発信件数は、2013年70本、14年51本、15年48本、16年52本、17年51本、18年56本であるから、昨年は最も多く発信したことになる。その意味では、昨年は“頑張った年"と言え、今年も昨年に負けないくらい頑張りたいと思う。

さて、今年最初となる今回は、主に町村の図書館の状況を書きたい。吾輩は毎週2回、地元の我孫子市立図書館に赴き、週刊誌や月刊誌に目を通し、じっくり読みたい記事はコピーしている。その関係で、図書館の職員と話をする機会もある。

昨年末、女性職員が「この図書館は、人口10万から15万人の自治体の中では、個人貸出数は全国で10位以内に入っている。その背景には、千葉県立図書館との相互利用がある」と説明した。そこで、全国各地の図書館の状況を知りたくなり、図書館備え付けの本「日本の図書館 統計と名簿 2018」(2019年2月28日発行、本体14000円)を借りた。

本書を読んで、全国各地の図書館の状況を把握したが、先ずは国立国会図書館の東京本部を簡略に紹介する。職員数は888人、館内閲覧人数は58万人、予算額は約203億円で、さすがに日本最大の図書館である。

続いて、中央官庁27の図書館であるが、数字が多い3つだけ紹介する。職員数は、最高裁判所図書館が専任21人と兼任1人、農林水産省図書館が専任10人と兼任8人、総務省統計図書館と外務省図書館が共に専任11人と兼任1人。蔵書冊数は農林水産省図書館が約58万、国土交通省図書館が約37万、法務図書館が31万。予算額最高裁判所図書館が約4581万円、農林水産省図書館が4269万円、総務省図書館が798万円である。

次は、人口規模がほぼ同じの我孫子市(約13万人)と北見市(約12万人)の図書館を比較する。職員数は、我孫子が専任10人と非常勤26人、北見は専任9人と非常勤21人。蔵書冊数は我孫子が約26万、北見が約32万。雑誌購入種数は我孫子が159、北見は120。個人貸出数は我孫子が約76万点、北見は49万点。予算額我孫子が約7621万円、北見は8568万円である。

また、人口が少ない町村の状況を知るために、吾輩と縁のある遠軽町(人口約2万人)と滝上町(人口約2千7百人)の図書館を紹介する。職員数は遠軽が専任1人と非常勤7人、滝上が専任1人と非常勤1人。蔵書冊数は遠軽が約17万、滝上が7万。雑誌購入種数は遠軽が51、滝上は39。個人貸出数は遠軽が約10万点、滝上が約2万点。予算額遠軽が924万円、滝上が397万円である。

以上、全国各地の図書館を把握したが、実は吾輩が一番驚いたのは、全国の町村の中には図書館を設置していない自治体が多いことだった。市区の自治体は、ほぼ図書館が設置されているが、町村には図書館が設置されていないのだ。例えば、北海道では、市の設置率は97・1%(35自治体のうち34)であるが、町村の設置率は45・8%(144自治体のうち66)である。ちなみに、都道府県の中で、図書館の設置率が低いのは千葉県の29・4%(17自治体のうち5)、熊本県の35・5%(31自治体のうち11)、宮城県の38・1%(21自治体のうち8)であるから、別段北海道の設置率が低いわけではない。

そのような状況を知ると、北海道の市町村の中で図書館を設置していない自治体を知りたくなった。本書には、公共図書館名簿が掲載されているので、北海道の市町村とを見比べて、図書館がない自治体(79)を突き止めた。それを報告すると、市では当然のことに財政再建団体に転落した夕張市、町村では当別町新篠津村、福島町、知内町木古内町七飯町(約2万8千人)、鹿部町上ノ国町乙部町奥尻町、今金町、島牧村寿都町黒松内町蘭越町ニセコ町真狩村留寿都村喜茂別町京極町倶知安町(1万5千人)、共和町、岩内町(1万3千人)、泊村、神恵内村積丹町、古平町、仁木町、赤井川村南幌町上砂川町浦臼町妹背牛町雨竜町鷹栖町愛別町、上川町、東川町、南富良野町占冠村、剣淵町、下川町、美深町音威子府村、中川町、幌加内町増毛町小平町苫前町羽幌町初山別村遠別町天塩町、猿払村、中頓別町豊富町礼文町利尻町利尻富士町幌延町、津別町西興部村、豊浦町

壮瞥町厚真町洞爺湖町、安平町、新冠町、えりも町中札内村更別村足寄町陸別町釧路町(約2万人)、浜中町鶴居村白糠町羅臼町であった。この状況を管内別で見ると、留萌管内(7町村)と石狩管内(2町村〈札幌市が存在〉)は設置率は共に0%で、一方、オホーツク管内は設置率が86・7%(15自治体のうち13)であるので、北海道14管内では最も設置率が高いことになる。その意味では、オホーツク管内の町村は、住民の教育向上に努力していると言える。

また、人口一万人以上の自治体に対して、あえて人口を書き込んだのは、図書館を設置して当然と考えたからだ。特に、七飯町の隣りには函館市釧路町の隣りには釧路市という都会が存在するので、敢えて設置しないのかとも考えた。つまり、首長などは函館市釧路市からの合併の誘いに“自立する"と言って拒否し、その一方で図書館設置を希望する町民に対しては「隣町の図書館を利用せよ」と言っているのではないか、と意地悪く考えてしまう。

いずれにしても、吾輩の見方は甘く、町村には「集会所」と「図書館」は最低限設置しているものだ、と思い込んでいた。その背景には、人口3千人程度の滝上町が、立派な図書館を設置し、毎週日曜日に放送される「NHKのど自慢」をそれなりの会場で開催していたからだ。

今回、町村の図書館の状況を取り上げたのは、新聞や雑誌の大幅な販売不振がある。新聞は、発行部数が1997年のピーク時の5376万部から2018年の3990万部と、率にして25・8%も減少している。また、雑誌類も最大部数の「週刊文春」が、19年上半期は前年同期比14・4%減(2万6千部)の28万7千部に減らしている。さらに地方では、書籍の販売不振で書店の廃業が続いており、紙媒体の業界は死線をさまよっている。そのような状況下で、町村で唯一文字にふれる場所・図書館が存在しないで良いのかと思ったのだ。要は、地方で紙媒体に触れる機会がないと、ますます国民間の教育格差や情報格差が広がることを心配したのだ。