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農協と農林水産省を解体すべき、との著書が出版!

最近出版された「農協解体」(著者=山下一仁・経済産業研究所上席研究員)を読んだ。著者は、1955年生まれで、77年に東大法学部を卒業して、同年農林省に入省しているので、全てストレート。相当に優秀な人物であるにも関わらず、2008年に農村振興局次長で退職している。多分、農林水産省の現状に嫌気がして、早期退職したのではないか?頭の中身は違うが、我が輩と同じだ。

ところで、この著書はJA農協が“禁書指定"にした書物であるらしく、それだけに現在の農協が抱える問題点を浮き彫りにしている。これから要点を紹介するが、長文なので腰を落ち着けて読んで欲しい。

○1965年以降、農家の所得は、勤労者世帯の収入を上回って推移している。今では、「農業者の経済的社会的地位の向上」を達成するために、農協組織は必要ではない。

○協同組合は、農家や中小企業などの小さな事業者が、株式会社に対抗するために作られ組織である。その農協が、ホームセンターより高い農業資材を組合員に購入させている。利用者のために作られた組織である協同組合が、利用者を搾取するという、主客転倒した状況になってしまった。農協が、農家のための組織ではなくなっていることを如実に物語っている。

○コメ作は機械化が進み、農作業に必要な時間が大幅に縮小。8時間労働として、1ヘクタール規模の標準的なコメ農家が、1951年には年間251日間働いていたのに、2010年ではたった30日しか働いていない。1ヘクタール未満の農家は、戸数では7割を超え、圧倒的に多数だが、作付面積では3割に満たない。

○零細兼業農家の農業所得は、ほとんどゼロなので、現状の高米価・減反政策は、零細兼業農家の所得のためには、全く役に立っていない。つまり、これらの農家を赤字で退出しないようにさせ、農家戸数を維持することが、農協、政治家、農林水産省にとってメリットになるのだ。兼業農家の維持は、兼業所得の農協への預け入れ、JAバンクの貯金額の増加につながり、農協経営にも大きなメリットとなった。

○農協は、高米価・減反政策を推進した。高米価政策は、零細な兼業農家を滞留させ、主業農家の発展を阻害して、コメ農家を衰退させた。例えば、この50年間で酪農家戸数は40万戸から2万戸に減少したが、生乳生産は200万トンから850万トンに4倍強も増加した。このように、兼業農家が退出した後は主業農家が引き受けるので、食料供給にはなんら問題はない。

○2009年に準組合員数が正組合員を上回り、11年では、組合員983万人中準組合員は517万人で、正組合員467万人を50万人も上回っている。準組合員の増加は、農協が“脱農家"で発展したことの一つの現れである。準組合員は、巨額の農協貯金の融資先として農協の発展を支えてきた。

○約1000万人の農協の組合員のうち、農業で生計を立てている人たちは、1割をかなり下回ると思われる。農業が主たる農家は32万戸にすぎないし、そのうえ主業農家の多くは農協をそれほど利用しない。農林水産省の農家の定義でさえ、現在の農家平均規模が2ヘクタールを超えているにも関わらず、その20分の1の10アール以上または年間農産物販売額15万円以上としている。結局のところ、コメの零細兼農家の維持が必要だというのは、多数のコメ農家の兼業所得をJAバンクの預金として集めたいという、農協組織の維持のためなのだろう。

JAバンクは預貯金量では、我が国第2位のメガバンクだが、農業への融資はその1〜2%程度に過ぎず、3割程度を準組合員への住宅・車・教育ローンや元農家へのアパート建設資金等に融資している。残りの資金は、JAバンクの全国団体である農林中金が、ウォール街等で運用して大きな利益を得ている。農協に信用事業を認めなければ、農業を犠牲にして、農協が繁栄するということもなかった。今の農協は、本籍地“農業"、住所“金融業"となっている。

○食料自給率向上という名目で、水田での麦や大豆の生産に3500億円もの税金を投入しているが、これで作られる麦は48万トン、大豆は21万トンにすぎない。同じ税金で2000万トンの輸入麦を国内備蓄できる。

○水田面積は戦後一貫して増加し、減反政策を開始した1970年には344万ヘクタールに達したが、その後は現在の247万ヘクタールまで年々減少している。食料安全保障に不可欠な農地資源を減少させ、農業を犠牲にすることで、農家・農協の利益を守ったのだ。

○農家戸数を維持したい農協は、農業の構造改革にも反対した。農協の存在や行為が、農業の発展、国民・消費者への食料の安定供給、食料安全保障、多面的機能の維持に、マイナスの影響を与えている。

○TPPに反対し、農産物の高関税の維持を主張する既得権グループの人たちは、農業の将来についての見通しやビジョンを持っているのだろか。高関税で守ってきた国内市場は、高齢化と人口減少が重なり、縮小していく。いくら高い関税を維持したとしても、我が国農業は安楽死するしかない。それが嫌なら、農業を一層効率化し、輸出市場を開拓するしかない。農業についても、規制や補助金で守られてきた既得権を解体し、農業発展への障害を取り除く必要があるのだ。

そして著者は、最後に日本農業発展のために、農協と農林水産省の解体を訴えている。

○今の農協の実体は、“農業"の組織でもないし、“協同組合"でもなくなっている。つまり農協法を廃止すれば、農協という存在自体なくなる。

○今の農協では、正組合員467万人を準組合員517万人が上回っている。正組合員のうち150万人はすでに農業やめた土地持ち非農家で、これを準組合員とすると、実際には正組合員300万人、準組合員700万人というのが、農協の本当の姿だろう。つまり農協は、もはや“農業"協同組合ではないのだ。

○最もドラスティックな農協解体の方法は、農林水産省の分割・解体である。かなり前から、農林水産省には優秀な人材が集まらなくなってきている。

既に30年前、評論家・立花隆氏が、農協が金融業や保険業まで営み、巨大化したことを問題視する著書「農協」を出版している。その後、政府は何らかの改革を農協に求めたのか?政府は、年間数兆円の財政資金を農業関連に投入しており、口を出す資格はあるはずだ。今の“にっちもさっちも"いかなくなった農業の現状を見るど、政府の責任放棄ではないかと感じてしまう。改革は“待ったなし"と思う。

思い返すと、確かに10年以上前から、農林水産省に“東大卒が入省しない"と新聞で報道されている。やはり、優秀な頭脳を持っている人間は、何らかの価値を生み出す仕事をしたいのだ。ところが、現在の農林水産省の仕事は、地方や農村に何らかの理由を付けて、税金をばらまくだけの存在と見られている。これでは、国の借金が1000兆円を突破した現状では、将来“国賊"と非難されかねない。政治家も同じだ。

そういえば、朝日新聞も今年、東大卒が一人も入社しなかったと、ネットで騒いでいた。一昔前、東京ぼん太という芸人が「夢もチボーもない」とのギャグで一世を風靡したが、農林水産省朝日新聞も、同じ状況ではないのか。目先が利いて、嗅覚が発達している東大生から見放された組織は、“夢も希望もない"とのレッテルを貼られたと同じだ!