オウム事件に対する朝日新聞の無責任さ

毎年、この季節になると、暑さのために気力が衰えて、物を書く気にもならない。どうも、北海道出身者というよりも、体質的に暑さに弱い感じを受けている。だが、一昨日の6日(金曜日)に、死刑が確定していたオウム真理教の教祖・松本智津夫ら7人の教団元幹部の死刑が執行されたので、改めてオウム事件を考えてみたい。

先ずは、何故にあれほど未曽有の凶悪犯罪が起きるまで、公安当局は動かなかったのか?それは、公安が宗教団体を調査することに抵抗があったからだ。例えば、某宗教団体などは1960年代、70年代、規模拡大のために全国各地で、今なら家宅捜索が入るような事態を起こしても、国民から「宗教弾圧だ」との反発を恐れて、見逃す時代があった。つまり、戦前の宗教団体弾圧の反省から、戦後は逆に宗教団体に対する対応が甘くなったという背景がある。

次に、当局は何故にオウム真理教の動向把握が不十分であったのか。これについても、戦後の憲法によって、宗教団体を過剰なくらい保護してきたという歴史がある。だから、当局のオウム真理教に対する情報収集も、後手後手に回ってきた面がある。また、当局も国民一般も「宗教団体があれほどの悪事を起こすハズがない」という性善説があった。つまり、宗教団体に対する“勝手な思い込み"が、あれほど悲惨な事件に繋がった。

我が輩も、自らのお粗末な宗教観をを記したい。地下鉄サリン事件が起きて、テレビ番組を見ていたところ、ある司会者が「宗教団体が、あれほどの事件を起こす理由がわからない」と述べたところ、某宗教学者が「宗教団体だからこそ、あのような重大事件を起こすのです」という発言をした。それを聞いて、我が輩は「そうか」と驚き、納得した瞬間であった。つまり、我が輩も司会者と同じように、宗教観を性善説で見つめていたのだ。

しかしながら、ここまで国民の宗教意識を低下させた背景には、メディアの責任もある。例えば、現在でも、これだけ朝鮮半島情勢が緊迫しているにも関わらず、日本の左翼系新聞は「憲法には一切手を触れるな」と主張している。つまり、他国は性善説で見て、我々が攻撃しなければ、戦争は起きないという“勝手な思い込み"で安全保障政策を見ている。

さて、今回の教団元幹部の死刑執行について、新聞各紙は多彩な有識者の意見を掲載している。その中で、有意義な意見を2つ紹介したい。

○元検事総長但木敬一

ーテロ組織を抑え込む制度の制度も十分とはいえない。事件後、団体を強制的に解散させられる「破壊活動防止法」が適用されず、教団が存続することになったのには違和感がある。テロを起こしかねない団体活動を監視するために創設された「オウム新法」はこれまで教団しか対象としておらず、別の団体が無差別テロを起こそうとしても有効に機能するとは限らない。

オウム事件が突き付けた課題を過去のものとせず、社会全体で教訓にしていく必要がある。ー

○元警視総監・池田克彦

ー教団は各地でトラブルを起こし、警察としても「怪しい宗教団体」という認識はあったが、大規模テロを起こす能力があるとは思っていなかった。宗教団体という看板に尻込みし、教団に対するインテリジェンス(情報)が欠け、危機感を持つことができなかった。

サリンがテロに使われることも想定していなかった。爆弾や銃器などには、神経をとがらせていたが、科学兵器を現実的な脅威とはとらえていなかった。ー

以上の新聞記事は、読売新聞(7月7日付け)から引用したが、有力紙の朝日新聞からは参考になる意見は見いだせなかった。つまり、朝日新聞は、当時から「破壊活動防止法」の適用に反対しているが、未だに何を読者に訴えたいのか、さっぱりわからない。新聞に掲載された有識者も、それなりの人物であるが、具体性がなく、何を伝えたいのか、全く解らなかった。問われているのは、オウム犯罪の動機ではなく、犯罪行為に対する応報刑である。これが、一流大学を卒業してきた記者たちの紙面作り方なのか、と言いたい。

こんな調子であるので、先週月曜日発売の週刊ポストの新聞広告には「英オックスフォード大発表『信頼度ランキング』の衝撃ー朝日は最下位!この現実を直視しないのは朝日記者だけー1位・日経、2位・地方紙、そして読、産、毎」という文字が掲載されていた。この「週刊ポスト」掲載記事について、7月7日付け産経新聞の「花田紀凱の週刊誌ウォッチング」は、

ー「週刊ポスト」(7・13)のタイトルにはギョッとした(快哉を叫んだ)。

「英オックスフォード大「新聞の信頼度ランキング」の衝撃 朝日は最下位6位!」

同大ロイター・ジャーナリズム研究所が毎年行っている国際的なメディア調査レポートによるものだがそうだが、〈朝日新聞の信頼度は日本の有力紙の中で最下位〉。

ちなみに1位は日経、産経は4位。ー

オウム事件のことを記すつもりであったが、何故か最後は「朝日新聞」批判になった。その理由は、若い人にはわからないが、「破壊活動防止法」の適用に一番反対したのは「朝日新聞」である。そして教団は現在、オウム後継団体として「アレフ」(信者数約1500人)と分派「ひかりの輪」(信者数約150人)など3団体といった形で残存し、勢力維持・拡大に努めているという現実がある。何だか、まとまりのない文章になったが、我が輩には「破壊活動防止法」適用に一番反対したのが「朝日新聞」という怒りが大きいのだ。