米中対立から目を離すな!

中国の台湾政策や南シナ海問題に注視する者にとっては、米軍に対する対応は最も重視する視点だ。そうした中で、本日付け産経新聞に掲載された、平和安全保障研究所理事長・西原正の寄稿は非常に勉強になった。

〈西太平洋に迫る危機に対処せよ〉

昨年以来、西太平洋地域に2つの危機が同時に発生しつつある。それは南シナ海と台湾である。これらの地域の緊張はいずれも長い間ほぼ別個のものとして扱われてきたが、昨年末頃から一挙に同類視されるようになった。中国指導者の発言通り、中国の長期戦略が米軍を西太平洋から駆逐することにあり、そのために上記の2つの地域で一定の武力衝突を辞さない覚悟をしているようである。

近い将来、米中間の武力衝突の可能性を想定するとして、日本にはこれらへの対応策ができているのだろうか。

南シナ海ではすでに武力衝突に近い状況が生じている。昨年9月30日、米駆逐艦ディケーターがスプラトリー諸島海域を通航した際、中国の駆逐艦が同海域から離れるよう警告を発し、わずか40㍍までの距離に接近して「危険な操縦」を行ったという。トランプ政権はB52爆撃機を派遣していた。その後10月4日、ペンス副大統領も「われわれがこれで尻込みすることはない」と牽制した。

しかし軍事科学院元副院長の羅援海軍少将は、「米空母2隻を撃沈すれば、大量の乗務員を失う。人的損失は米国のもっとも避けたいことであるから、東シナ海南シナ海の問題はそれで解決する」と述べたといわれる。

本年1月、ジェームス・インホッフェ米上院軍事委員会委員長は、「中国は第三次世界大戦を準備しているかのようだ」と議会証言で述べた。

台湾海峡における緊張も同様に高まっている。トランプ氏が大統領就任後すぐに蔡英文総統に電話をしたり、政府高官の台湾訪問を促したりしたことも、習近平国家主席らを刺激したのだろうか。〜

南シナ海や台湾に関する中国側の恐喝は激しさを増している。これは米中双方が武力衝突を避けることを狙った虚勢と捉えるべきかもしれない。しかし中国は中国共産党創立100周年を迎える21年や建国100周年を迎える49年に対して、何らかの武力衝突をしてでも統一の成果を誇りたいと考えているのではないだろうか。

中国が尖閣諸島に対する領有権主張も「核心的利益である」としているのを考えれば、そこでもいずれ軍事行動を起こすだろうことは想定しておくべきである。

すでに昨年1月に中国の潜水艦が尖閣諸島の周辺を潜水航行した。もっとも米国が公式に「尖閣諸島の防衛は日米安保条約の適用対象である」と表面している以上、中国が手を出す優先順位は低いと見るべきであろうが、それでも警戒を怠るべきではない。

どうですか、米国の上院軍事委員会委員長が「中国は第三次世界大戦を準備しているかのようだ」という発言には驚いたでしょう。さらに、中国の覚悟・決意が記されており、現在の米中関係の対立が心配になってきた。

そもそも中国は、中華帝国・清(1636〜1912年)が、19世紀に西欧列強の砲艦外交に押され、領土や権益を奪われたので、それを奪い返すことが長期的な国家目標になっている。その第一段が、台湾を吸収しての国家統一である。そこに立ちはだかるのが米国である以上、米中関係が緊張するのは当然のことである。

だが、我が輩は「米中戦争」は起きないと見ている。なぜなら、中国にとって、もっとも領土や権益を奪った相手国はロシアであるから、長期的には「中ロ戦争」を起こす可能性はある。だから、米国とは多少の武力衝突はあるものの、全面的な戦争に発展することはないと考えるのが、我が輩の“歴史観"である。