朝日新聞に遠軽高吹奏楽局の特集記事

8月10日付「朝日新聞」は、〈♬遠軽高(北海道)吹奏楽コンクール北見地区代表ー4人の仲間、全国へ「殻を破れ」〉という見出しで、次のように報じた。

ーもう一緒に演奏できるのも最後かもー

吹奏楽コンクールのシーズンがやって来た。オホーツク海に近い北海道遠軽町でも、短い夏に青春が燃えている。

人口約1万9千人のこの町は、小学生から大人まで器楽が盛んだ。町内にある北海道遠軽高校吹奏楽局(北海道では「部」ではなく「局」とする学校が少なくない)はこれまで、全国大会である全日本吹奏楽コンクールに9回、全日本マーチングコンテストに19回出場している。

2020年は大会自体が中止となったが、21年と19年には町内の小学校と中学校、遠軽高校がそろって全日本小学生バンドフェスティバル・全日本マーチングコンテストに出場した。

今年のコンクールで遠軽高校は北見地区代表に選ばれ、8月下旬の北海道吹奏楽コンクールに出場する。

吹奏楽局の局長、3年生でトロンボーンを吹く米沢優希はこの町に生まれ、小学校で楽器を始めた。

♪♬

遠軽高校吹奏楽局62人の今年度のスローガンは、「殻を破れ」。この4文字が、全国大会の会場である名古屋国際会議場の写真とともに、練習場の指揮台近くに掲げられている。

優希は小学6年のとき、名古屋の会場で全国大会を見た。姉が北海道代表の東海大札幌高校のメンバーとして出場したのだ。ステージでサックスを吹く姿がまぶしかった。

「私もあんなキラキラした場所で演奏したい!」

優希は地元の仲間と全国大会をめざすことにした。

高2の昨年は全国に手が届いた、と思ったのに出場はかなわなかった。

しかし、よくよく思い返すと、「もっとやれたかも」という気持ちが残っていた。自由曲のクライマックスで、響きや表現が突き抜け切れなかったのだ。

局員の思いは同じで、22年度のスローガンは「殻を破れ」に決まった。

コンクールは課題曲が鈴木英史作曲《ジェネシス》、自由曲はチェザリーの《交響曲第1番「アークエンジェルズ》で臨む。

自由曲は壮大な世界観を崩さないよう、最後まで集中力を維持すること。強奏部分はもちろん、繊細な弱奏部分でも気持ちを込めて演奏すること……。殻を破る目標はいくつもある。

顧問の高橋利明にも最近心がけていることがある。「より楽しくしたい」と合奏のスタイルや雰囲気を変えた。練習場に笑い声が響くことが増えたという。

コンクールは、参加するそれぞれが「殻を破りたい」と思って積み上げてきた努力を1年に1度、持ち寄る場なのかも知れない。

♪♫

優希には「4姉妹」と言ってよい小学生のときからの仲間がいる。

ユーフォニアムの小林そらは副局長として優希を支え、トランペットの瀧口華菜はいつでも相談に乗ってくれる。引っ込み思案だったホルンの伊藤希々花(ののか)は音楽面のリーダーとして局員を引っぱる。

幼いころからコンクールで、学校や地域の活動で、数え切れないほど一緒に演奏してきた。その4人の高校卒業後の進路は別々になりそうな気配だ。

「小学校から楽器を始めて10年。次が一緒に演奏できる最後かも……」

そんな思いも、殻を破る力になっている。

4人のため、いや、局員みんなのために、大好きな町で育んだ絆を力にかえて、優希たちは次のステージへ向かう。(敬称略)

実は7月30日午前0時49分に打ち込まれた遠軽高校吹奏楽局のブログに、

吹奏楽作家、オザワ部長が2日間取材に来てくれました!初遠軽遠軽の良さもたくさん知って頂きました!コンクールに向けての練習見学や観光もしていただきました。またお待ちしております」

との文面が掲載されていたので、近かじか何らかの形で訪問記が発表されると期待していたが、まさかこんな形で朝日新聞に掲載されるとは考えてもいなかった。

それにしてもオホーツク海に面した地域に、このような伝統校が存在することは素晴らしいことだと思いませんか。しかしながら、この伝統もある程度の生徒数を確保しないと維持できないが、ご多聞に漏れず遠軽高校少子化の影響で、この先毎年何人の局員を確保できるのか、という問題に直面している。

町は現在、遠軽高校の区域外からの生徒に対して助成制度を続けているが、これも周辺地域の少子化で悪戦苦闘することが予想され、将来的には心もとない感じを受けている。現に局員62人のうち遠方から来た下宿生が25人で、今年の入学局員は20人というから、吹奏楽コンクールにおける大編成部門のA編成(55人以内)も“やっと"の時代になっている。だから、今のうちに“活気ある遠軽高校"の記録を残すという意味で、吾輩は色々と書いているのだ。寂しい限りです(泣)。

いずれにしても、8月25日(木)には「全日本吹奏楽コンクール」(全国大会)の出場権を獲得するための「第67回北海道吹奏楽コンクール」(全道大会)の高校の部(18団体)が開催されるので、注目して待ちたいと思う。