知里幸恵の映画が製作されるという

ネットで12月11日付けの「北海道新聞」を見ると、見出し「東川を拠点に知里幸恵の映画製作 2023年公開へ 札幌出身・菅原監督」という記事が掲載されていた。そこで、例のごとく北海道の友人からその記事を送付してもらった。

知里幸恵の生涯映画化ー東川町企画23年秋公開目指す〉

ー札幌出身菅原監督「アイヌ民族の思い伝えたい」ー

【東川】明治、大正期のアイヌ文化伝承者、知里幸恵(1903〜22年)の生涯を題材にした映画「カムイのなげき(仮)」が製作される。上川管内東川町が企画し、札幌市出身の映画監督菅原浩志さん(66)が町から委託を受けてメガホンを取る。アイヌ民族が「カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)」とあがめる大雪山系の旭岳などでロケを行い、2023年秋の公開を目指す。

知里は現在の登別市に生まれ、旭川市で育った。「アイヌ神謡集」の著者として知られ、アイヌ民族口承文芸「カムイユカラ」(神謡)をローマ字で記述し、日本語に翻訳。アイヌ文化の伝承に大きな役割を果たした。映画は知里をモデルに、差別を受けて生きるアイヌ民族の少女が、言語学の第一人者に見いだされ、「カムイユカラ」の日本語訳に力を注ぐ姿を描く。

監督・脚本を務める菅原さんは、女優宮沢りえさんが主演した映画「ぼくらの七日間戦争」などの作品で知られる。昨年、東川町の依頼を受け、アイヌ民族が旭岳で行う山開きの儀式「ヌプリコロカムイノミ」の映像作品を1年かけて製作した。

その縁で、アイヌ民族の歴史や生き方を映像化することを検討していた菅原さんと、アイヌ文化の振興や共生社会の実現を東川町の理念に掲げていた松岡市郎町長が意気投合。2022年に没後100年となる知里の生涯を取り上げる映画を製作することにした。

菅原さんは現在、東川町を拠点に脚本と撮影の準備を進めており、文献調査やアイヌ民族への取材を重ねている。撮影は来年7月に始め、登別市や札幌市でも行う。製作費2億5千万円を集めることを目標に、東川町がふるさと納税で寄付を募る。金額に応じてエンドロールに名前を載せるなどの返礼を用意する。

胆振管内白老町の国立アイヌ民族博物館によると、知里を題材にした映画は珍しいという。菅原さんは「アイヌ民族の真の思いや生の声を残し、差別を無くすため、共生社会に向けたメッセージを若い人に伝えたい」と話した。

まずは、映画製作の音頭をとった東川町から紹介する。東川町は、旭川空港から車で約15分で、北海道のほぼ中央に位置する小さな町だ。しかしながら昨年の国勢調査によると、人口は8315人で前回から204人増加したが、それは道内179市町村の中で12市町村しかなし得なかった人口増加である。つまり、元気のある町であるのだ。

以前、旭川市の知人に「旭川市が人口減少で悩んでいる中で、ベッドタウンの東川町が増加している。そうであれば、東川町を吸収合併して人口減少に対処するべきだ」と述べたことがある。それに対して、知人は「それが東川町は財政が豊かであるので、旭川市に入っても何も良いことがない。それに、大雪山からの湧き水が豊富で、住民は地下水を生活水にしている。だから、東川町には上水道が無いのです。こんないい町はありませんよ」と言うのだ。

そう言えば昨年、水と米が抜群にいいということで、岐阜県中津川市で143年続いた蔵元「三千櫻(みちざくら)酒造」が、東川町に移転して来た。そして、昨年から「東川町公設酒蔵・三千櫻酒造」という名称で日本酒を売り出している。やはり、大雪山の湧き水は量と質が抜群であるのだ。

さて、本題の知里幸恵に入るが、登別で生まれ、6歳から19歳までの間、伯母である金成マツの元で、旭川で成長した。旭川市は、石狩川の上流地点の街であるが、昔からアイヌコタンが存在し、現在でも「川村カ子トアイヌ記念館」が所在する。それくらいアイヌの生活に関連する地域であるので、映画では多くの旭川付近の映像が出てくると思う。

実は吾輩は、登別市に所在する「知里幸恵 銀のしずく記念館 友の会」の会員に、6〜7年前に入会した。同「記念館」は、一般の募金により2010年に開館したので、その面で吾輩は新参者である。入会時に、多少多めの会費を送付したので、当時の記念館館長・横山むつみ(知里幸恵のめい)さんと話しをしたことがある。その後、むつみさんは死去(16年9月21日、68歳)したが、生前のむつみさんが西欧の先住民と交流したNHK番組(約1時間)を観たので本人に間違いない。

ということで、来年は島田叡と荒井退造を題材にした映画「島守の塔」、また市立船橋高校吹奏楽部を題材にした映画「20歳のソウル」、そして再来年には知里幸恵を題材にした映画「カムイのなげき(仮)」が公開されるので、今から楽しみである。でも、どの映画もあらすじを知っており、最後は「涙、涙のオンパレード」で終わるので、気分は多少重い。

その点を友人に伝えると、「涙は心の栄養だよ」と言ったので、調べて見ると「涙は心の汗だ」が出てきた。中村雅俊主演のテレビ青春ドラマ「われら青春」(1974年)の主題歌「帰らざる日のために」に出てくるフレーズという。いずれにしても、涙、涙の映画である。