全日本吹奏楽連盟の理事長が替わった

まずは5月29日付け「朝日新聞」の記事から紹介する。

吹奏楽 新理事長に石津谷氏〉

全日本吹奏楽連盟は28日、千葉市内で総会を開いた。理事長を4期8年務めた丸谷明夫氏(75)が退任し、新理事長に千葉県の習志野高校吹奏楽部顧問の石津谷治法(いしづや・はるのり)氏(62)が選ばれた。任期は2年。総会では今年予算や事業計画が承認された。

今年度の全国大会の日程は次の通り(いずれも朝日新聞社と共催)。

全日本吹奏楽コンクール中学校、高校の部=10月23、24日(名古屋国際会議場)▽同大学、職場・一般の部=10月30、31日(高松市・レクザムホール)▽全日本小学生バンドフェスティバル=11月20日(大阪城ホール)▽全日本マーチングコンテスト=11月21日(同)▽全日本アンサンブルコンテスト=2022年3月19日(山形市・やまぎん県民ホール)

吾輩は、昨年3月28日に「全日本吹奏楽連盟の不正会計の結末は」と題する文章を作成し、その後も全日本吹奏楽連盟の動向をチェックしてきた。なぜなら、昨年1月27日に連盟が「事務局長と次長を1億5千万円の横領で解任した」というからだ。しかしながら、その後も一向に事件解明に繋がる情報が出ず、そして今回の丸谷理事長の退任が発表された。

そうはいうものの、連盟の機関誌「すいそうがく」(2021・1)を読むと、昨年12月15日には“不祥事に特化"した「臨時総会」を開いている。その中では、第三者委員会の「再発防止に関する報告書」(2020年6月5日付)が公表され、「本連盟は総額1億5509万9909円の損害を受けました」旨の内容が記されていた。だが、その損害金額の回収状況や、元職員に対する裁判の経緯等々が記されていない。つまり、この問題に関心を持つ人たちが知りたいことが、全く発信されていないのだ。

さらに、驚く一文があった。

ー①責任について

既にご報告いたしましたとおり、今回の不祥事の当事者は前事務局長及び前事務局次長であり、また、初期段階(2011年4月時点)において今回の不祥事を発見できなかった責任は前監事にもあると考えます(2011年4月に、前監事が二重決算報告書の存在を理事会に報告していれば、理事会はその時点で、2010年度における前事務局長及び前事務局次長による今回の不祥事を発見できたと思われます)。しかし、今回の不祥事が、前事務局長の事務局長就任直後から発生していることを考えると、その遠因は、本連盟の設立当初より、実務的な業務を事実上事務局に任せざるを得なかった本連盟の歴史的風土にあり、本理事会が挙げた上記各原因も、短期的・一過性のものではなく、前事務局長が事務局長に就任した2010年4月以前から存在する長期的・構造的なものに根ざしていると考えます。ー

ということは、連盟の不正経理は10年前からではなく、それ以前から全国の小・中・高の生徒から集めたカネを、事務局長などが懐に入れていた可能性があるという。これが“真っ当な組織"と言えるのか。そして、今年も以前と変わらずに、同じシステムで全国の学校からカネを集める気なのか(怒)。

以前から指摘していることだが、吹奏楽の全国大会は朝日新聞社と共催しているので、今回の人事も「朝日新聞」しか掲載されていない。どうして、他のメディアは報道しないのか。そこには、吹奏楽連盟に関しては「朝日新聞社」の゛独占゛に任せて、他の報道機関はタッチしないという掟があるのか、と疑ってしまう。また、連盟を所管している文部科学省文化庁の姿が全く見えないが、こんな“腐敗した組織"を放置して良いのか。

このような実態であるので、後任の石津谷氏の責任は重大である。そこで、習志野高校吹奏楽部が2017年3月下旬(8日間)、創部55周年記念としてニュージーランド(NZ)で特別公演を行った状況を、当時NZに滞在していた後輩からのメールがあるので紹介する。

ー結果をご報告させて頂こうと思っていましたが、ご連絡が遅れて大変失礼致しました。

習志野高校は、首都ウェリントン滞在中に、市役所前広場や学校等様々な場所で演奏をしましたが、メインイベントは、1900名収容のコンサートホールで行った特別公演です。

習志野高校側は600名ほど入れば良い方だろう、と考えていたようですが、実際は1600名以上の観客が入りました。大使館が準備していたVIP席は満席で入れない程でした。

演奏は第一部と第二部に分かれて行っていました。第一部では地元バンドとのセッションだったので大人しく演奏していたのですが、第二部に入り独壇場となってから、習志野高校の本領が発揮されたようです。

生徒は吹奏楽の演奏に留まらず、歌や踊り、マーチングや演劇、観客を交えたパフォーマンスを、慣れないですが堂々とした英語で2時間以上にわたって行い、大盛り上がりでした。

このようなイベントを無料で体験できたNZ人は本当に幸せだったと思います。残念だったのは、プレスによる報道が全くなかったことですね。

終了後のお客さんの反応や大使館に届いたコメントは、生徒が皆才能豊かで感激した。これまでない経験をさせてもらった等絶賛するものばかりでした。

習志野高校吹奏楽部関係者がウェリントンでの行事を写真とともに日々掲載していたウェブサイトがありますので,是非ご覧ください。

http://nhssbnz.sblo.jp/

同行していた先生に伺ったところ、海外公演は実施出来て5年に一度なので、今回の経験は生徒にとって貴重な財産となるだろう。国歌を演奏した際には、観客が皆起立して歌う等初めての経験であり、NZ人の反応は総じて素晴らしかった、と喜ばれていました。

これほど多才な生徒達ですが、卒業後に音楽関係の進路に進むのは2割程度だそうです。日本に戻ってから、すぐに東北の方に演奏に行ったそうです。若いエネルギーは素晴らしいですね。皆さん青春を謳歌していますよ。ー

以上のように、石津谷顧問は60歳定年前、以前から交流していたNZで特別公演を行うなど、吹奏楽部の指導者として有名人である。このメールについては、何らかの際に紹介したいと考え、今まで保存していたものである。以前にも記したが、千葉県は「吹奏楽王国」とも言われ、吹奏楽部の強豪校が多いが、習志野高校もその一角である。

そう言えば、もう一校・市立船橋高校吹奏楽部の話しもしたい。最近、新刊「20歳のソウル」(著者=中井由梨子、幻冬舎文庫)を購入したが、本の中身は肺癌のために20歳で亡くなった浅野大義(2014年3月卒業)の告別式(17年1月12日死亡)で、母校・市立船橋高校吹奏楽OB164名が駆けつけ、大義さんが作曲した応援歌「市船SOUI(いちふなソウル)」を演奏したというものである。さらに、この出来事は映画化されて、来年夏に全国で観られるという。そう言えば、来年は荒井退造(元沖縄県警察部長)の映画も完成すると思うので、来年の映画鑑賞が今から楽しみである。でも、映画の中身は“涙、涙"のストーリーになるので、何となく気分は重い感じだ。

いずれにしても、全国の吹奏楽関係者は、連盟に対して不信感を持っていることは間違いないので、石津谷新理事長に期待する面は大きい。それにしても吾輩のことであるが、これまで吹奏楽ラグビーに関することを書いてきたが、この分野は全くの素人である。ただ、母校・遠軽高校が北海道内で吹奏楽ラグビーが、それなりの伝統校であるので、それなりに以前から関心を持っていた。それを考えると、いかに教育環境が、その後の人生の関心事に影響を与えるか、ということは言えると思う。