NHK北見放送局の“業務縮小情報"は本当であった

やはり、NHK北見放送局の“業務縮小情報"は本当であった。それでは順序だって、この重要な情報の経緯を記していく。まずは、3月1日に配達されてきた情報誌「選択」(3月号)から紹介する。

ーNHKの経費削減で放送設備が縮小 公共放送の質低下を危ぶむ声ー

受信料で潤うNHKへの批判が強まる中、番組制作の現場や放送エリアにも影響が及んでいる。

計画が進んでいる渋谷にある放送センターの建替えについても内情がわかってきた。当初、建設費が三千四百億円だと報道されると、各方面から反発が出て計画を縮小。第一期として建設される報道スタジオなどが入る「情報棟」は約六百億円に抑え、第二期に整備される分も一千百億円に抑えられた。

そのため、「情報棟に設置されるニューススタジオが二つ削減されたほか、メインのスタジオから4K放送ができないなど技術的にも後退した」(NHK関係者)という。4Kを推進してきたNHKが、それを使えないというのも滑稽な話で、現場の不満も大きい。

また来年度からは、北海道の放送エリアを再編。これまで七つの地域に分けて独自ニュースなどを放送していたが、室蘭、釧路、北見の三局は停波となり近隣局に統合される。地域ごとの特色が薄れて視聴者の反発を買いそうだ。この統合を進めたのが元社会部長の伊藤浩経営企画局長。前田晃伸会長の覚えがめでたい局長に、現場からの冷視線が注がれている。

この情報を確認するために、オホーツク管内の友人に伝えたところ、友人は地元選出の国会議員に連絡したが、議員は「このような計画があることは知らない」という返事であったという。そのため、この情報の信憑性や停波も来年以降であるので、ひとまず注視して行くことにした。

ところが、ネットで4月10日の「北海道新聞」を観ると、次のような記事が掲載(その後、友人から全文入手)されていた。

ーNHK地方枠4エリアに/室蘭、北見、釧路隣接局と統合 関係自治体反発も/道内ニュース来春からー

NHKが来春、道内7局がそれぞれ担当するローカル枠の放送エリアを再編し、関係局の業務と体制の大幅な見直しを進める方針であることが9日分かった。室蘭、北見、釧路の3局のローカル枠を隣接する局に統合し放送時間を拡大。7局体制は維持し「地域サービスの強化」を掲げるが、エリアを統合される自治体では反発の声も出ている。

NHKの道内7局は、平日夕方の「ほっとニュース北海道」内で、天気やニュースを伝える5分の独自枠を設けている。計画では来年4月から、道央、道北・オホーツク、道東、道南の4エリアに再編する。札幌、旭川、帯広、函館の各局から15分に拡大して放送する。

これに伴ってNHKは、室蘭など3局の業務をスリム化し、技術部門や事業部門の人員の再配置を進める見通し。3局は記者やカメラマンなどの報道部門を中心に残すとみられ、「取材体制は維持する」という。

本年度は道東エリアで19日から5日間の試験放送を行うのを皮きりに、各エリアで拡大枠で地域情報を流し、視聴者の反応を探る。

NHKは関係自治体に対し、今回のエリア再編について説明を始めた。道東のある自治体幹部は「地元にとっては大変なことだ。到底受け入れられない」と人員の減少を危惧する。

NHKは1月に発表した中期経営計画で、2023年度の受信料値下げ方針とともにグループの業務や要員の見直しを打ち出した。

札幌拠点放送局の梅岡宏局長は「枠拡大で地域に合わせた気象情報や企画をおくることができる。あくまで地域サービスの向上を担保した上で、放送以外の部分はスリムで、強靭な体制を目指す」と話している。

ということで、情報誌の“情報"は間違いではなかった。ネットで調べると、NHKは1988年(昭和63年)に出された合理化案には、「北見放送局を支局として旭川放送局に統合する。同時に帯広放送局を釧路放送局に、室蘭放送局を札幌放送局に統合する」案もあったという。今回は、釧路が帯広に統合されるという違いがあるが、以前の再編案と同じ内容になっている。それを考えると、NHK内部では長年底流にあった計画であった可能性が高い。

とは言っても、現実的にこの計画を実施されると、北海道の“辺地地域"の情報発信基地の一つを失うことになる。それでなくとも、地域新聞がどんどん無くなっている中で、この“業務縮小"を黙って見過ごすことはできない。これでは、果たしてNHKは“公共放送と言えるのか"と問いたい。

今回、北海道新聞に掲載された4エリアの区分を見ると、

○道北・オホーツクエリア(上川・留萌・宗谷・北空知・オホーツク)→人口91万3千人〈北空知は8万1千人として〉、面積3万1173平方キロ〈北空知は1792平方キロとして〉

○道東エリア(十勝・釧路・根室)→人口62万4千人、面積2万326平方キロ

○道央エリア(石狩・中南空知・後志・胆振・日高)→人口323万8千人〈中南空知は20万人として〉、面積2万354平方キロ〈中南空知は4000平方キロとして〉

○道南エリア(渡島・檜山)→人口41万1千人、面積6568平方キロ

ということになる。

ということは、2016年に北海道議会の「自民党・道民会議」が、広大な北海道を複数の県に分ける「分県」案について議論を開始した時の有力な素案と、ほぼ同じ区割りになっている。つまり、北海道を道央、道南、道北、道東の4つの県に分けたが、どうしても道南の人口が少ないためにバランスが取れず、うやむやになった。それだけ、バランスのとれた地域割りは難しいのだ。

ここからは、主に北見放送局(開局1946年8月8日)の関連で見ていきたい。北見放送局のエリアのオホーツク管内(人口約27万人)の面積は1万690平方キロで、岐阜県とほぼ同じ面積である。そして、道北・オホーツクエリアの面積は九州8県(3万6782平方キロ)に近い面積である。これだけ広大な面積を、旭川放送局だけでカバーすることになるが、これで本当に国民が期待する情報を発信できるのか?

吾輩は毎晩、北海道のNHKニュースをネットで視聴している。この際に視聴するニュースは、札幌以外のニュースが多いが、それは札幌のニュースは都市計画のニュースが多いからだ。つまり、東京のローカルニュースには関心が持てないと同じで、札幌のローカルニュースも関心が持てないからだ。やはり、北海道のニュースは、札幌以外のニュースに価値があると言える。

いずれにしても、来春から北見放送局が停波ということになる。NHK側は、北見放送局には記者を置くというが、将来的にはオホーツク管内から記者やカメラマンが削減されることは間違いない。つまり、現在の稚内の取材状況と同じようになるのかもしれないが、どれだけ経費削減に繋がるのが分からず、まさに中途半端(受信料を支払う根拠・放送法の改正や高給体質の是正)な再編計画といわざるを得ない。これで本当に国民の知りたい情報を発信できるのか、はなはだ疑問に感じている。

あと1年、成り行きを注目していくが、国民のNHKへの批判が一番弱い地域に“飛び火"したことは間違いない。でも、嘆いてばかりいても仕方がないものの、やはり今後のNHKを注視していくしかないのか。