遠軽高校を盛り上げる地元企業

いよいよ明日から、コロナ禍での2年目の新年度が始まるが、まずは3月29日付け「北海道新聞」を紹介する。

〈「寮の新生活楽しみ」遠軽高 球児向け施設完成〉

遠軽】町内の建設業、菅野組(菅野伸一会長)が建設、運営する遠軽高野球部向けの寮「フォルシティア メンズドミトリー」(南町3)が完成し、28日に寮内でオープニングセレモニーが行われた。

佐々木修一町長や入居予定の野球部員ら約30人が玉串をささげて寮の安全を祈った。遠軽高の同窓会長も務める菅野会長があいさつし、「遠方からの生徒も確保し、現状の1学年5学級を維持したい」と狙いを説明した。寮名を考えた遠軽高の金本美穏さん(新2年)の表彰式や、寮の内覧会も行われた。

建物は木造2階建てで延べ床面積639平方㍍。2人用の居屋16部屋に共用の食堂やトイレ、風呂を備える。寮母の木内幸さんが常駐する。食事、光熱費込みで月額7万円。4月からは20人が入居する。

入居予定の上坂渓さん(新3年)は「建物全体が広く、風呂も大きくて、新生活が楽しみ」と話していた。

この記事を読んで、以前ネットで読んだ「北海道建設新聞」(2018年7月24日付け)を思い出した。

〈「高校生活支えたい」渡辺組が遠軽町で下宿開設〉

高校生活を支える一助になればー渡辺組(本社・遠軽)が準備を進めてきた生徒向け下宿「ミライロッジ」が完成し、21日に遠軽町福路の現地で開設セレモニーが行われた。地元の遠軽高に越境入学した生徒を受け入れるためのもので入居数は18人。順次受け入れる。

遠軽高は吹奏楽部など各種部活動が盛んで、道内の他地域から入学を希望する生徒が毎年20人前後いるが、生徒を受け入れる下宿が少なく入学を断念するケースがあるという。こうした事情を知った同社は、地域振興や子どもたちの役に立てればと下宿を建設し直接運営に当たることとした。

規模はW造、2階、延べ475平方㍍。各室6畳1間で、室内にはベッドや机、冷蔵庫が完備されており、共用の食堂や浴室なども備える。

21日のセレモニーには渡辺博行社長や佐々木修一町長、渋川誠一遠軽高校長のほか同校の生徒らが参加。テープカットで開設を祝った。

渡辺社長は「ここにいる生徒の未来のためになれば」と話し、佐々木町長は「高校が抱える課題について、意識を共有しすぐ行動に移してくれた渡辺社長にはとても感謝している」と話していた。

ということで、遠軽町には高校の野球部と吹奏楽部のための下宿先が、それぞれ備えられた。そこで、以前から吹奏楽部のことは書いてきたので、今回は野球部のことを記す。

野球部は、平成25年(2013年)開催の選抜高校野球大会21世紀枠で出場し、一回戦で同じ21世紀枠で出場した「いわき海星高校」に3ー0で勝利した。しかしながら、相手チームは出場選手が18名ベンチ入りのところ、16名しかベンチ入りしないというので、なんだか力が入らなかった記憶がある。

とは言っても、甲子園大会に出場したことで、遠軽高OBで東京都在住の会社経営者(佐呂間町出身)が「野球部の室内練習場を作ってほしい」と、2500万円もの大金を寄付した。そこで、甲子園出場時に野球部後援会が集めた寄付の余剰金4200万円を活用して、総工費6700万円で室内練習場を翌年8月7日に完成させた。雨天練習場は、鉄筋コンクリート造り平屋で、広さは600平方㍍もあり、私立校に勝るとも劣らない施設という。

その後、遠軽町は遠方からの入学者遠距離に対して、町独自の助成事業を平成27年10月1日から始めた。それは、町内と湧別町佐呂間町以外から通う生徒に対して、通学定期券の半分、また下宿費用の上限3万円を町が負担する制度である。つまり、下宿では、費用7万円のうち3万円を町が負担するというものだ。

吾輩も以前から、生徒数の減少を心配して、町行政の応援を訴えてきたが、その背景には吹奏楽部やラグビー部の生徒の中に、遠く美幌町北見市から特急列車「オホーツク」で通学する生徒がいたからだ。そのため、下宿先を充実させると共に、夏場のスポーツ合宿にも対応できる下宿先とは、などなどと考えてきた。

いずれにしても、公立高校でこれだけ充実した教育環境にある高校は、全国的にも珍しいと思う。それも北海道の“辺地"に所在する道公立高校に置いてだ…。オホーツク管内の地図を見ると解るが、遠軽町が街の賑わいを失うと、オホーツク管内北部は本当に過疎地域が広がる。その意味では、交通の要所である遠軽町の高校は、街の賑わいを失わないための“最後の砦"と言える。だから、これだけ行政側も企業経営者も、そしてOBも将来を心配して応援しているのだ。

今年町内の各中学校を卒業した人数は155人で、遠軽高校の出願者数は174人であるから、町独自の助成事業(一人36万円×40人として年間1440万円)は成功していると言える。また、今年3月に卒業した吹奏楽部員の中から、音大卒業生に負けずに「陸上自衛隊音楽隊」の試験に合格した女子生徒(網走市出身)がいることを考えると、オホーツク地域の音楽教育にも貢献していることが解る。だが、抜本的な人口減少を食い止める施策は、地元の資源を生かした産業を起こすことである以上、これからも諦めない気持ちだけは持ちたいものだ!