菅義偉首相の「地方の銀行は数が多すぎる」(9月2日の総裁選への出馬会見)という発言だけではないと思うが、10〜11月に発売された「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」などの週刊誌は、地方銀行(105行)や信用金庫(全255信金)の特集記事を組んだ。吾輩は、以前にも銀行のこと取り上げたが、別段銀行に関心があるわけではないし、金融機関の知識があるわけではない。だが、銀行というと吾輩世代のエリート職場であったし、今後も地方経済を支える企業であるから多少は関心を持っている。
ということで、それらの記事を一通り読んで、皆様方に紹介したくなったのは「週刊ダイヤモンド」(20・11・21)の生き残れる「地銀ランキング」である。その前に、金融庁の有識者会議が2018年にまとめた地方銀行に関する報告書では、県内1行単独になっても23県は「不採算地域」とされ、1行単独なら生き残れるのは13道府県、2行でも存続可能なのは10府県にとどまると明記した。
それでは、東日本で生き残れる19行と、西日本で生き残れる14行を紹介する。
◎東日本
ー北洋銀行、岩手銀行、七十七銀行、仙台銀行、山形銀行、東邦銀行、常陽銀行、埼玉りそな銀行、武蔵野銀行、千葉銀行、京葉銀行、横浜銀行、神奈川銀行、第四銀行、八十二銀行、静岡銀行、スルガ銀行、名古屋銀行、愛知銀行ー
◎西日本
ー滋賀銀行、京都銀行、関西みらい銀行、池田泉州銀行、みなと銀行、広島銀行、もみじ銀行、伊予銀行、福岡銀行、西日本シティ銀行、肥後銀行、鹿児島銀行、南日本銀行、沖縄銀行ー
ということであるが、だからといって他の地方銀行が無くなるわけではない。要は、生き残るためには、大手グループの傘下に入るか、地域ナンバーワンを目指すか、収益源を多角化するしかないということだ。その意味で、栃木県トップの足利銀行が2016年に、茨城県トップの常陽銀行と経営統合し、めぶき“フィナンシャル・グループ"の傘下に入ることは、ある面では最もオーソドックスな組織図と言える。
だが、雑誌の対談では、30代地方銀行員が「正直いってグループになった第二地銀とはレベルが違いすぎます。同じ課長でも、こちらは30代で年収が900万〜1000万円程度なのに対し、相手の第二地銀は40代で700万円程度。課長同士の飲み会で割り勘の仕方が難しい」と言っていることを知ると、合併してもなかなか難しい問題が横たわっていると感じる。また、横浜銀行、千葉銀行、静岡銀行は「三大地銀」というが、首都圏の地銀である横浜と千葉はメガバンクを目指す可能性が高いというから、地銀の先行きは“千差万別"とも言える。
次は、もう一つの地域金融機関である「信用金庫」にも触れてみたい。信金は「相互扶助」を理念とする非営利の協同組織で、会員の出資で成り立ち、営業地域が限定されている。一方の地銀は、営利の株式会社組織で、貸し出し需要が見込める大都市部には簡単に店舗を出すことができる。しかしながら、本当にこのような決まり事で信金は店舗展開しているのか。
例えば、北海道の場合、道内20信金のうち、なんと札幌市内に本店がある北海道信金を含め、14信金(渡島、室蘭、苫小牧、日高、空知、北門、北空知、留萌、旭川、遠軽、北星、大地みらい、稚内)が札幌に店舗展開している。特に、遠軽信金の場合には、札幌市内に4店舗、旭川市内に5店舗の支店を展開している。道内の金融専門家は「進出当初は情報収集や札幌に拠点を持つ地場企業との関係維持を重視していたが、最近は相続時の資産運用などに軸足を移している」と解説している。
何を言いたいかというと、北海道は東北6県+新潟県の面積がある中で、札幌〜稚内間が約420㌔、札幌〜根室間が約480㌔、札幌〜遠軽間が約270㌔という距離がある。この距離感を考えると、果たして北海道の信金は“営業地域が限定されている"と言えるのか。おそらく、都道府県という単位で“営業範囲を指定した"と考えるが、北海道では全く無視された“営業範囲"に感じる。
ところで、今は地方銀行ばかり注目されているが、地銀は信金・信用組合と合併することが可能である以上、将来的には信金・信用組合を巻き込んだ合併に至っても何らおかしくない。それを考えると、いずれ「地銀は20行くらいのグループに収斂する」と言われる中では、信金・信用組合も“ぼーっと"はしていられない。ましてや少子・高齢化で人口減少が激しい中では、辺鄙な地域の信金や信用組合は、今から準備しなければ地銀の“草刈り場"になる。その意味では、地方の経済人は地元金融機関から目を離してはならない。いずれにしても地方金融機関は、地域を支える役割が期待されている以上、常に主導的な役割で、地元繁栄の責任を果たしてほしい。