旭川市の存在感を高めたい

吾輩は、北海道の中核市旭川市の地理な位置に注目して、以前に題名「旭川市をもっと重視したい」(2017年6月29日)という文章を記した。そうした中で、ネットで「北海道新聞」(11月12日付け)を見たら、見出し「旭川市の人口減 どう食い止める 旭川大経済学部2氏に聞く」という記事を見つけたので、旭川市の知人にお願いして、この「旭川上川版」の記事を送付してもらった。読んでみると、現在の旭川市の置かれている課題が良く理解できるので、紹介することにした。

旭川市の人口は出生が死亡を下回る自然減に加え、流出を止める「ダム」として道北の高齢者を吸収しながらも、それ以上の若者を札幌市などに流出させ、減少が続く。33万人の人口が40年後には18万人まで減る推計もある。人口減少を食い止めるために何ができるのか。地元企業の研究を通じて経営学を教える旭川大経済学部長の江口尚文教授と、旭川市の人口減少対策の方向性を示す「市まち・ひと・しごと創生総合戦略」検討懇談会進行役で同学部の木谷耕平准教授に聞いた。(聞き手・小林史明)

ー若者の流出を止めるため、何ができますか。

【江口】流出は1986年ごろから始まっていました。札幌や道外に進学したまま帰ってこない。旭川での就職先は賃金や条件などから限られるからです。若者が残り、外からも引きつける人材育成機能と競争力があり、「帰ってもいいな」と思える企業がなければ。

一方、小中学生には小さいころから地元の魅力を教える必要がある。そうすれば就職や転職で、いつか故郷に帰ってくる。私のゼミナールが2016年に始めた「ラーメン甲子園」は、高校生が地元ラーメン店での修業を通じてオリジナル商品を作ることで地元の魅力を再発見するきっかけになっている。商品開発などを通じて多くの地元企業を訪ね、「旭川で就職したい」と話すゼミ生は多く、道外の大手企業に就職した卒業生も「いつかは旭川に帰り(技術や知識を)還元したい」と言っています。

旭川市の18年の合計特殊出生率は1・31で、全国の1・42より低いです。

【木谷】出生率自治体レベルで上げるのは難しいと思います。中学生までの医療費が無料になっても、子どもを一人持とうという意思決定にまでは、それほど影響しない。男性の育休取得推進など働き方を根本から変えるよう、国が果たすべき役割の方が大きい。

子育て中の会員が子どもをお互いに預けられる「こども緊急さぼねっと」(1市8町で共同運営)をもっと使いやすくするとか、他の都市でやっている保育園などに送迎する子育てタクシーも需要は多いはず。ただ根本的には出生率向上にはやはり、ソフト事業よりも賃金や雇用だと思います。

ー市民所得を底上げするには。

【江口】旭川市内では医療や福祉、卸・小売りで働く人が多いですが、市場は限られる。旭川家具が成功しているように、製造業や農業など、外の大きな市場に売り出せる職種を伸ばすことが大事。旭川エリアの強みのおいしい農作物を、北海道ブランドで本州に売り出し、農家が自前で加工食品まで作って売る6次産業化で従業員の通年雇用もできる。その場になるのが近隣町の農地です。所得も底上げでき、住み続けられ、帰ってくる人も増える。

【木谷】農業は担い手不足を補うため、機械化や情報通信技術(ICT)化で効率化しないと勝てない。競争力強化のための工夫が大事。ロボットはお金がかかるが、ICTはセンサーやドローンなど、多額の費用をかけなくても可能で、アイデア次第で活用の幅はぐんと広がります。

旭川大が高等教育機関として果たせる役割は。

【江口】旭川で働くことや地元企業の良さを、企業が若者にPRすることが大切なので、旭川圏の企業を集めた合同企業説明会を、旭川大の呼び掛けで、10年前から開いています。近年は約90社が集まり、高校生、大学生も数百人が参加して、地元での就職へ橋渡しをしています。企業はビジネスを単なる生活の糧と捉えるのではなく、旭川圏の未来にどう貢献できるか、という視点で再考してほしい。

市立大学化で設置予定の「地域創造デザイン学部」は、デザイン思考を学びの柱にした学部です。単純な設計やデザインだけではなく、地域や産業をデザインする学生が育てば、地元企業の商品やサービスの高付加価値化につながる。

イノベーションをいかに地元に起こすかが大事。既存のものでも、何かと何かをくっつけたら新しいものができる。新結合です。歴史を顧みれば、買物公園もイノベーション。道路と公園と買い物がくっついた新結合です。旭川はそうした世界初にも近いことをやれたマチ。「旭川には何もない」という人が多いが、水はおいしいし、大雪山系の景色も美しい。人口減少を食い止めるために、魅力を再発見し、PRすることを皆さんにお勧めします。

多くの人は、どの地域でも急速な少子高齢化の影響で人口減少に悩んでいるので、別段旭川市だけの問題ではないと考える。ところが、旭川市の場合、稚内市名寄市を含む広大な道北地域、日本海側の留萌市オホーツク海側の紋別市遠軽町、そして北見市網走市など道東を含めた地域の中心都市であることを考えると、他の都府県の中心都市と同じ立ち位置ではない。

例えば、北海道は道内を6つの「3次医療圏」に分け、その中の一つである旭川市の基幹5病院が、先端的な医療を提供している。その中で一刻を争う患者や、最新治療を施す必要のある患者は、ドクターヘリなどで緊急対応している。とはいうものの、道内のおよそ3分の1(四国4県の広さに匹敵)のエリアをカバーするので、ドクターヘリの年間出動回数は400件以上という。そのほか、稚内市の場合には片道約285キロの距離があるが、それでも冬場も乗用車や列車で行くことになる。

さらに、旭川〜札幌間は、JR北海道の主要路線で、ドル箱路線でもある。それが旭川市の大幅な人口減少となると、当然のごとく旭川という「ダム」が崩壊しているので、周辺の市町村も大幅な人口減になり、JR北海道の主要路線も乗客減少に至る。

そして忘れてはならないのは、明治時代に屯田兵や開拓民の入植により、当時から北海道の開拓と防衛の拠点であったことだ。現在でも陸上自衛隊第2師団(旧陸軍第七師団)の駐屯地があり、その傘下に遠軽や名寄などに連隊が駐屯している。つまり、現在&未来に至るまで、日本の北部防衛の拠点でもあるのだ。

ということで、新聞記事でも記しているが、旭川市旭川圏の様々な問題に対応しなければならない立場にある。その意味で、少しでも人口減少を食い止めたいということが良く解る。皆様方には、ご理解いただけたでしょうか?