証券業界に厳しい目を向ける金融庁とメディア

吾輩は、2016年6月10日に題名「証券会社の営業マンに騙されるな」という文章を作成した。その後も5回くらい、証券業界の悪事な商行為を取り上げてきたが、最近では金融庁もメディアも、この業界に厳しい目を向けてきた。その辺りのことを新聞報道から確認したい。

まず最初は、7月24日付け「朝日新聞」からで、見出し「投資手数料適切か■顧客の利益優先にー証券業界へ去り際の警告」ということで、7月20日の退任直前に遠藤俊英・前金融庁長官が、顧客本位の販売を求めて証券業界へ「去り際の警告」を発したという記事だ。具体的な例として、

ー「残念ながら一部証券会社が、営業員主導で高齢顧客に外国株取引などを高頻度で繰り返させていた」

7月14日の金融庁と証券界との定例意見交換会。非公開の場だが、関係者によると、遠藤氏はある大手証券を念頭にこう苦言を呈した。この会社は頻繁な米国株売買で収益を稼ぐ一方で、顧客に重いコストを負担させて相場が堅調なのに大きな損を与えていた。会社側は「最終的に顧客は納得していた」との立場だという。ー

という内容などで、6段のスペースを使用して報道し、最後は「高齢期のお金のトラブルや勧誘被害を、〒104・8011(住所不要)朝日新聞東京本社経済部『シニアマネー取材班』にお寄せ下さい」という文章で締めている。つまり、朝日新聞は今後、証券業界の悪事を集めて、具体的な悪徳商行為を報道するつもりのようだ。

引き続き、8月2日付け「読売新聞」で、大見出し「金融庁ー投信運用『顧客優先に』」、副見出しは「銀行や証券 手数料収入を重視」であるが、記事がコンパクトにまとめられているので全文紹介する。

金融庁が投信信託などを開発・運用する資産運用会社にガバナンス(企業統治)の改善を求めている。証券会社や銀行などを傘下に持つ親会社の意向に影響されて、運用成績が伸び悩んでいるとみるからだ。金融庁は顧客を最優先した商品開発を促し、「貯蓄から投資」の流れを進めたい考えだ。

資産運用会社は開発・運用した投資信託の販売を証券会社や銀行などに任せることが多い。野村アセットマネジメントの親会社は野村ホールディングスであるように、大手の多くは証券会社や銀行など金融グループに属している。

金融庁は6月に公表したリポートで、資産運用会社について「顧客の利益を最優先し、長期運用の視点を重視する経営体制が整っていない」と批判した。

証券会社や銀行では顧客の投資信託の残高拡大より、手数料収入の獲得を優先する傾向が根強い。資産運用会社でも、販売しやすいとされる市場平均よりも高い運用成績を目指すタイプの投資信託の開発に力点が置かれ、資産残高は市場平均を目指すタイプの約8倍の規模がある。ところが、運用成績は市場平均タイプの投資を下回っていた。リポートは「顧客の支持を得られていない」と指摘した。

また、米国と比べ、日本では1本当たりの資産規模が小さい投資信託が多い。金融庁は、「新商品」を次から次へと投入した方が売りやすいという販売側の事情が重視されているとみる。

販売側の意見が強く通る背景にあるのが、投資運用会社の役員構成だ。取締役には親会社の出身者が多く、金融庁は独立性が十分に確保されていないとみて、外部人材を経営の中枢に招くことなどを要求している。金融庁幹部は「資産運用業は将来性のある分野。顧客層を広げて成長させていくには、独立性を確保して、戦略を描く必要がある」と指摘している。

次は、昨日郵送されてきた証券会社の書類の一部である。

○お取引内容に関するご確認・ご相談や苦情等につきましては、お取引店またはお客様相談室(電話番号・03-○○○○-○○○○)までお申し出ください。なお、お取引についてのトラブル等は、金融ADR(注)機関における苦情処理・紛争解決の枠組みのご利用も可能です。

■指定紛争解決機関(金融ADR機関)

特定非営利活動法人 証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)

電話番号 0120ー64−○○○○(フリーダイヤル 通話料無料)

(注)ADRとは、裁判外紛争解決制度のことで、訴訟手続によらず、民事上の紛争を解決しようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続をいいます。

要するに、あまりにも不誠実な商行為を証券業界が長年行ってきたので、裁判外紛争の機関まで紹介する事態に陥っている。それを考えると、格好の生贄として証券会社の1〜2社を解散させなければダメだ。そんな存在価値のない会社をいつまで存続させるのか、というのが証券会社の“いいカモ"になっていた吾輩の心境である。

それにしても、今後の朝日新聞経済部の報道が楽しみになってきた。きっと、異常な手数料収入めあての「回転売買」など、驚くような証券業界の悪事が明らかになると思う。そのほか、証券会社職員の意識が、顧客より上司、そして親会社やグループの方ばかり見ている実態が明らかになると見ている。吾輩の訴えや嘆きが、このような動きに繋がったのであれば、嬉しい限りである。