渚滑川を新たな観光資源としたい紋別市と滝上町

昨夜、新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を出した中であるが、最近の「北海道新聞」オホーツク版は、吾輩の関心事を取り上げている。今回は、4月7日付けの見出し「渚滑川下り注目のレジャーにー『水質抜群』観光に生かす」(紋別5月から定期開催/滝上「農泊」メニュー検討)を紹介する。

紋別、滝上】全国に17河川しかない「水質が最も良好な河川」の一つに選ばれた渚滑川を新たな観光資源にしようと、紋別市滝上町がボートで川下りするレジャーに注目している。紋別市では5月からラフティングツアーがスタートし、滝上町では昨秋にカヌーによるモニターツアーが実施された。観光関係者は「新型コロナウイルスの感染防止で室内の娯楽が敬遠されがちな今、自然体験型のレジャーは人気になるのではないか」と期待する。

透き通る水面。空には野鳥が飛び交い、手つかずの山林に挟まれた川を進んでいく。昨年9月末、紋別市上渚滑町内を流れる渚滑川で試験的に実施されたラフティングツアー。15人の参加者が、滝上町との境の開明橋から上渚滑の太陽牧場まで約5㌔を1時間かけて下った。息子と参加した紋別市内の主婦山田純子さんは「紋別にこんないいところがあったんだ。水も風も気持ちいい」と笑顔で話した。

渚滑川北見山地の最高峰である天塩岳が源流で、本流の長さは約84㌔。昨年7月、国土交通省が全国に164ある1級河川を対象にした2018年の水質調査で、渚滑川は「水質が最も良好な河川」に道内の3河川とともに選ばれた。

市の観光振興を担う地域おこし協力隊員の井上正之さん(49)は「この素晴らしい評価を観光に生かしたい」と、すぐに川下りを企画。秋の試験ツアーが好評だったことから、今年5〜9月までの毎週土日と祝日、定期開催されることになった。井上さんは「人の手が加わっていない自然本来の魅力が渚滑川にはある。流れも緩やかなので初心者向きだし、老若男女が楽しめる」と語る。

フライフィッシングの聖地」として渚滑川を観光資源に利用してきた滝上町でも、川下りに期待感を高めている。長屋栄一町長は3月の町政執行方針で、渚滑川の水質の良さが認められたことに言及し、「自然環境を生かした体験観光に取り組む」と述べた。

昨年11月に町観光協会が主催したカヌーによるモニターツアーは、コースが滝上の景勝地・錦仙峡に挟まれ、雄大な渓谷を望めることが好評だった。カヌーで川を遡上してから下り、距離は往復約1・5㌔。上流のため、揺れや水しぶきといったダイナミックさも特徴だ。町観光協会は「コースが町中心部にあり、町内のホテルや道の駅に近く、手軽に利用しやすいのが強み」という。

また、観光客が農家に宿泊して畑作や酪農体験する「農泊」のメニューにも採用できないか検討されている。農泊は滝上町内が一体となって推進していることもあり、協会は今夏から秋にかけてモニターツアーを実施し、事業化に向けた課題を洗い出す方針だ。

「今こそ、オホーツクの大自然を利用したレジャーを全面に売り出す時」と紋別市の井上さん。屋外での川下りは、新型コロナウイルスの感染防止対策として政府が国民に避けるよう要請する密閉・密集・密接の「3密」に当たらないと強調し、「楽しみながらストレスを解消してほしい」とPRしている。

というわけで、吾輩が少年時代を過ごした滝上町を主に紹介する。新聞でも触れているが昨年7月、渚滑川が「水質が最も良好な河川」に初めて選ばれたので、地元の同級生に連絡したところ、

渚滑川が水質日本一の仲間入りしたことは、酪農主体の地域であることを考えれば、大いに評価されるべきことです。酪農には家畜糞尿、牛乳を搾った機械の洗浄など河川を汚す物質が沢山出ます。下流の漁業者から水質汚濁によって被害を受ける紛争もあるのです。家畜糞尿の適切な処理法ができ、努力していますが、現実はパーフェクトかというと、中々そうはいきません。今回の評価は、酪農地帯の河川が水質日本一の仲間入りを果たしたことに、大きな意味があるのです。ちなみに、渚滑川は釣りマニアには一度は行ってみたい垂涎の的となっている川でもあります」

とのメールが返ってきた。つまり、渚滑川流域は酪農が盛んであるので、これまでは水質に問題が生じていたようだ。しかし、今回の快挙によって、滝上町と友好交流町である高知県越知町仁淀川は、過去10年で7回も清流日本一に選ばれているので、これからは「清流友好交流町」と謳うことができる。

また、新聞でも「フライフィッシングの聖地」と記されているが、今でも釣りを楽しむ者たちが多いようだ。もう半世紀前のことだが、魚釣りが好きな大人が、休日に早朝から夕方まで出掛け、帰宅した時にはバケツ一杯に川魚が入っていることを数回見たことがある。だから、今でも川魚が多いようで、平成7年には日本で初めて「キャッチ&リリース」を宣言して、市街地を中心に区間30㌔を釣り人“垂涎の川"にした。

このほか、新聞で景勝地・錦仙峡が紹介されているが、この渚滑川沿いの渓谷は以前、日本ウォーキング協会(東京)の「美しい日本の歩きたくなるみち500選」に選ばれている。この渓谷の遊歩道は、両岸約6㌔が整備されて、秋の紅葉時期には多数の人たちが散策を楽しんでいる。

いずれにしても、渚滑川の上流部(滝上町中心部)は滝が多いが、下流部は流れがそれなりに緩やかになるので、知恵を出せば観光資源になるようだ。その意味では、どれだけ渚滑川を観光資源として利用して行けるか、そしてそれがうまくいけば、人口減少に多少なりとも貢献できるので、地元住民の奮闘に期待して見ていきたい。