中国に待ち受けているのは改革か崩壊か革命か

新型コロナウイルスによる感染が世界各国で猛威を振るっている中で、中国の国家衛生健康委員会は昨日、中国での流行のピークが「すでに過ぎた」との認識を示した。しかしながら、中国大陸には近い将来、自由、民主、格差是正を求めるウイルスが吹き荒れることは間違いない。そして最後は“中国共産党打倒"というところに行き着くかもしれない。

そこで最近、古本「次の中国はなりふり構わないー『趙紫陽の政治改革案』起草者の証言」(著者=呉国光〈1957年生まれ〉、2012年6月3日第1刷発行)を読了したので、その辺の見通しを紹介したい。著者の呉氏は、89年2月に出国して現在カナダに住んでいるが、北京大学卒業、中国社会科学院長・馬洪水の秘書、中国共産党機関紙「人民日報」の評論部を経て86年、29歳の若さで趙紫陽国務院総理(首相)の下の「中央政治体制改革研究討論チーム」(総理弁公室主任・鮑トウら十数名)の一員に選任された。

ー改革か崩壊か革命かー

変化の方式については、三本の道が考えられます。一本目の道は、改革です。つまり、上から下へ、指導者が主導的に変化に適応し、民衆の支持を得た後に順序的に漸進的に推し進めればいいのです。もちろんこれはかなり理想的な方式です。問題は、私が話したように、そのチャンスはすでに過ぎ去ったのです。89年以降では、各種の原因、要素があって、この道はもはや可能性は少なくなりました。

二本目の道は、崩壊、動乱です。つまり、現行の政治制度の枠組みが作用できなくなり、新たな政治制度の枠組みがまだつくられないでいると、社会は混乱状態に陥るのです。中国ではこのようなことは現れないと、私は思います。その理由は、中国には一つの政治体系というものが千年以上の歴史をもっており、中華文明も千年以上の歴史があります。中国は何千年も前からすでに「率土之濱莫非王土」(天下あまねく帝王の支配しない土地はない)ですよ。昔からすでに完全な政治コントロール体系のセットがありました。中国の歴史上、無政府主義の時代はなかったのです。いつもだれかが統治していましたよ。問題はだれがあるじ(主)になるかだけです。たとえて言えば、皇帝か、それとも諸侯が主になるかの問題です。だから、第二の道はないでしょう。

そこで、三本目の道は「革命」です。私の言う「革命」とは、毛沢東が言うような暴力革命ではありません。私の言う革命は、下から上へのパワーが主導作用を起こして政治制度を変更させることを指し、これを「革命」と呼んでいるのです。われわれが知っているように、現代の世界の革命の多くは平和革命です。「ビロード革命」または近いところでは「カラー革命」(オレンジ革命などを指す)のように、89年の東欧諸国ではいずれも「ビロード革命」で、政権の移転と民主化です。

じつは、「革命」と「改革」が違うのは主として、だれがその変化を主導するかというところにあるのです。現政権が上から下へ主導的に政治変革をやるのを「改革」と呼びますが、現政権が主導的ではなく、もっと下のほうの人物、社会のパワー、たとえば労働者の領袖、あるいはインテリ、あるいは共産党の一中級役人あるいは高官などが民衆を動員する方式で、もともとの官僚機関でない人たちがこの制度変化を押し動かしたならば「革命」です。エリツィンは元共産党の中央政治局委員で、党内ではゴルバチョフに次ぐ威信をもつ指導者です。彼が指導した運動がどうして「革命」であって「改革」ではないか。エリツィン共産党の各級の組織を放り出して、老百姓が立ち上がって共産党組織を変えたから、これは「革命」です。しかしゴルバチョフ共産党の各級組織を通して革新を押し動かし、共産党を変革しようと試みたから「改革」です。〜

私は、中国は比較的現実的な道、大体エリツィンのような道になるのではないかと思います。つまり、社会に危機が現れたとき、社会パワーが鎌首をもたげるころ、共産党の内側の、「ナンバーワン」ではなくて、最高層のさる人物でもない、だれか指導的人物が民心に順応して立ち上がり、民衆に入って一緒になって、合理的に政治変革を押し動かしていくようになるのではないかと考えています。このような光景はだれが望んでいるとか、見たくないとかの問題ではないのです。共産党が自らこのような情況を作り出しているのです。

非常に興味深い分裂と思いませんか。なぜなら、いずれ“中国共産党独裁体制は崩壊する"と見ている吾輩にとって、どのような経緯で崩壊するのかは、以前から非常に興味あるテーマであった。その意味で、この分析で示された内容は、非常に参考になる。

と同時に、以前にも紹介したが、米国は中国の民主化のほかに、中国大陸の分裂を“予測・希望"している。つまり、中国大陸が分裂することは、米国だけではなく、中国大陸周辺の国々も望んでいることだ。それを考えると、中国大陸で混乱が起きた時には、裏で米ロを中心とした「情報機関」(謀略機関)の動きにも注目する必要がある。

最後は、呉氏が2009年7月末に中国・山東省の故郷を訪問し、弟(大学講師)と対談した際の元総書記・趙紫陽に対する想いが記されているので紹介する。

趙紫陽が討論しているのを聞くと、彼は中国の実際状況を深く理解しているとうかがわせながら、同時に公民の自由拡大、人民の参与増加、党の権力制限、政府の能力引き上げなど、政治改革の基本もまた非常に透徹してしっかり把握されているのがよく表れていると感じる。知識も非常に広く、国際的視野があり、いずれもたいしたものだ。ー

ーあの政治改革を討論していたころ、趙紫陽は確かに視野があって、レベルのかなり高い指導者だとは認めていたが、敬服にまでには至らなかったが、89年事件の後初めて彼に敬服した。彼はわが民族の偉大なる政治家の一人だと認めた。ー