安倍首相は憲政史上最長の政権に値するのか?

北方領土問題の解決に向けて、安倍首相はロシアのプーチン大統領と会談を重ねてきたが、最近のメディアは北方領土について触れなくなった。多くの外交専門家やロシア問題専門家と同じように我が輩も、危なっかしい安倍首相の対ロシア政策を見つめていたので、その面では安心している。そうした中で、3月27日付け産経新聞に掲載された、新潟県立大学教授・袴田茂樹の寄稿文「原点に戻り露と平和条約交渉を」は非常に参考になる。

筆者は何年も前から、プーチン氏は小さな2島でさえも日本に返還するつもりはないと指摘し続けてきた。日米安保条約離脱云々は、もちろん日本が受け入れる筈がないことを百も承知の上での発言だ。わが国には、米軍基地の問題が最大の障害になっているとの見解もあるが、これは返還拒否の単なる口実にすぎない。基地問題が万一解決したとしても、露側は別の口実をすぐ持ち出すだろう。

興味深いのは、筆者の知る限り日本では報じられていないが、プーチン発言の翌日に露語メディアがプーチン氏のホンネを極めて率直に伝えていることだ。以下、重要なのでそれを紹介しょう。

〈兵法三十六計の罠だと気づけ〉

「露大統領府筋も外務省筋も、日本への島の引き渡し計画はないとし、さらに次のように述べた。大統領の原則は、日本側が受け入れられない条件を出して日本にそれを拒否させることだ。露当局は、島の引き渡しを直接拒否することは『外交的配慮から控えている』。大統領は島の問題を外交手段として利用しているからだ。つまり平和条約の話し合いを始めたと見せかけて、実際には他の目的、つまり経済その他の協力を得ようとしている。これは古代中国の諺にも通じる『外交の罠』だ。

兵法三十六計の第6計は『声東撃西』、すなわち相手の関心をあらぬ方向に向けさせ、実際には全く別の目的を追求することにある。第7計は『無中生有』、即ち相手に現実的には何の根拠も無いのに期待(幻想)だけは抱かせることだ」(NTS 3月15日)。

わが国には「2島プラスα」で日露首脳が実質的に合意したとの一部報道もあるが、眉唾だし交渉「進展」を装う情報操作ではないか。「2島プラスα」とは、歯舞、色丹で国境線引きをし、国後、択捉は露領と認めて経済協力などを進めるというものだ。露の不法占拠を批判し続け、数十年後に北方領土のわずか7%、歯舞、色丹だけで譲歩し妥協したとなると、わが国は他国の主権侵害を批判する権利を失う。さらに、竹島尖閣問題で韓国、中国は一挙に勢いづき、尖閣問題が将来「琉球列島問題」に発展しないという保証は全くなくなる。

保守系産経新聞は、安倍首相を批判しないが、一連の対ロシア政策に対しては、相当“ストレス"がたまったことは想像出来る。だから、我が輩が変わって安倍首相を批判する。

安倍首相は、平成24年の第2次内閣発足から丸6年を超えた。そして、本年に入って在職日数は2月23日に吉田茂を抜いて歴代4位、6月7日には伊藤博文を抜いて3位、8月24日には佐藤栄作を抜いて2位(戦後1位)、11月20日には歴代1位の桂太郎(2886日)を抜き、憲政史上最長の政権になる。

要するに、国際感覚のある人たちを散々心配させた安倍首相は、果たして憲政史上最長の政権を担当するに値する人物なのか。思い出して欲しい。今から10〜15年前、新聞、雑誌、そして与野党の政治家などが、散々「安倍晋三は頭が悪い」と言っていたことを…。だから、一連の対ロシア政策を見て、やっぱり「宰相の器の人物ではなかったのか」と感じたのだ。ところが、散々「頭が悪い」と言われた人物が、本年中に憲政史上最長の政権になるという。安倍首相の批判は、これで終了する。安心できない野党が喜ぶ文章を長々と書きたくないからだ。