全国高校野球選手権の主催者に物申す

1月31日の「朝日新聞」は、今夏の第101回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)では、準決勝と決勝の間に休養日を新設して、休養日を計2日にすると報道した。しかしながら、選手の健康を考えての決定というが、本当に休養が必要なのは、過去に過酷な連投で肩や肘を壊した、一人の絶対的なエースピッチャーである。それを考えると、投手の球数を制限する方法しかないのだ。

誤解を恐れずに言えば、人間にはそれほど多彩な才能がある者は、そうたくさんいるものではない。それを考えると、多くの好投手は、プロ野球で目が出なければ、日の目を見ないで生涯を終える。そういう意味で、将来的にはプロ野球で1億プレイヤーになれる可能性があるのに、真夏の甲子園大会での故障によって、その可能性を奪われることは絶対に避けなければならない。

これまでの球史を見ていると、優勝するチームには一人の絶対的なエースがいて、高校野球ファンも元選手たちも「大エースがいたから優勝した」ということを、いつまで経っても言っている。この現状は、まさに多くの好投手たちが、連投で肩や肘を消耗尽くされてきた歴史でもある。その意味で、今では誇れる球史でないことを認識し、野球本来の9人の団体スポーツにしなければならない。

確かに、野球は投手の力量が、勝負の行方を決定づけることは皆知っている。だからといって、あまりにも、一人の大エースの肩と肘に負担させてはならない。つまり、甲子園大会では、最低二人以上の投手がいなければ、優勝出来ないルールを確立すれば良いのだ。野球は投手だけのスポーツではないのだから、強打の四番バッターで優勝したとか、一番バッターの足で優勝したと言い伝えらる試合方式にしなければダメだ。

この考え方は、何も我が輩だけの考え方ではない。日本高野連も肩や肘への過度な負担を防ぐには連投禁止や球数の上限設定などの“投球制限"の方が有効と認める。さらに、元プロ野球選手の桑田真澄氏(PL学園ー巨人)は「投手の球数を制限しろ」と訴え、荒木大輔氏(早実ーヤクルト)も「1試合の球数よりも、連続する試合で同じ投手に多くの球数を投げさせることの方が問題だ」と記している。しかしながら、日本高野連は“投球制限"は「複数の投手が必要となり、強豪校と他校の格差が広がる」と導入を見送っている、と伝わる。

我々高校野球ファンも、甲子園大会で好投手を潰さないために、高校野球の見方を変えなければならない。つまり、「あの大エースがいたから、あの高校が優勝した」ではなく、「好投手が二人いたし、打撃も守備力も優れていたから優勝した」という見方にしなければダメだ。野球は一人の才能ある投手で勝負が決まるスポーツではなく、本当の意味で9人で行うスポーツにしなければならない。その意味で、投手の球数や投球間隔も、絶対に乗り越えなければならない課題である。

それでは、投手の球数をどう制限するのか。米国ではMLBが中心となって、2014年に「ピッチスマート」というガイドラインが作られた。それによると、日本の高校生世代であれば105球が上限で、76球以上投げた場合は中4日以上空けるべきだ、となっているという。それを考えると、1日目は80球、2日目は60球で、3連投は禁止。だから、試合日程も、それに合わせれば良いのだ。

最後にもう一度書く。夏の甲子園で、決勝前に1日くらい休養日を空けただけで、問題が解決したわけではない。一つしかない才能を、利害がある関係者が、よってたかって投手生命を奪う権利は、誰にもないことを自覚するべきだ。そして、野球もサッカーやラグビーと同じ団体スポーツということを忘れてはならないのだ。