不動産屋の地位は昔から変わらず?

最近、友人と会った際に、不動産屋の悪口を散々言ったところ、友人が「君と同じことを言っている記事を見た。帰宅したら、調べて連絡する」と言った。この日の夕方、その友人からFAXが送付され、その記事を見ると11月3日付けの「夕刊フジ」であった。そこには、「本当は教えたくない業界の秘密」(榊淳司・住宅ジャーナリスト)という記事で、次のように記されていた。

ー〈10人中9人が悪徳不動産屋?〉

私は外国で暮らした経験はないが、アメリカにおける不動産業者の地位は、日本のそれとは比べものにならないくらい敬意を持たれいるらしい。何といっても不動産業界の出身である人物を、大統領に当選させてしまうくらいだから。

日本ではちょっと考えられないことではないか。この国では「あの人は不動産屋だから」という言い方には、幾分さげすみの成分が含まれている。「どうせ素人を言いくるめて金を稼いで…」という意味合いが混じるのだ。

先日、在京のテレビ局に呼ばれて、生放送の情報番組でコメンテーターを務めた。取り上げられたテーマの1つが「悪徳不動産屋にだまされない方法」。いかにも私が呼ばれそうなテーマだ。

そこで「世の中の不動産屋の10人に9人は悪い奴だと思って身構えてください」とコメントすると、スタジオ内がどよめいた。

「榊さん、それは本当ですか」

私は答えた。

「まぁ、そういうお気持ちで不動産屋さんと接した方がいい、ということです。実際には10人に8人でしょうかね」

そう言うと「8人ですか!」となって、今度は笑いが広がった。

この放送を懇意にしている不動産仲介業者が見ていたらしい。「見ましたよ」とメールをくれたので、私はやや恐縮して「不動産屋の悪口を言うのは私の芸の1つなのでご容赦を」と返信した。

そうしたら「10人に9人、8人というのはその通りです。だから自然と決まったメンツでの取引になります」と返ってきた。

私も知り合いや読者さんの不動産取引をお手伝いする機会があるが、決まったメンツにしか頼まない。彼らは信用できる相手である。

実のところ、不動産業界は低信用社会である。業者同士なら、だまされた方が悪い。だから、初対面でのコミュニケーションは自然に刺々しいものになる。

また、不動産業者の社会的地位も高いとは言えず、職業としても敬意をはらってもらいづらい傾向にある。

正直に書くと、一部の財閥系大手は除き、不動産業界の面々のモラルには「?」が付く。だからこそ、消費者保護を目的とした厳しい規制が設けられている。

残念ながら、この業界が社会の敬意を集められるような変革を遂げる兆しはない。依然として大学生の就職先の人気ランキングには、財閥系の最大手が、かろうじて30位台に入るか入らないかのレベルになっている。

この業界は裾野が広いという意味で底辺、つまり賃貸や中古売買の仲介業者から変わるべきだし、変わっていけると希望を抱いている。まじめに顧客の利益優先で業務を行っている業者も実は少なくない。

これからは人生で何度も住宅を借りたり買ったり、あるいは売ったり貸したりする時代だ。不動産の流通量が増えれば、市場のルールも健全化すると期待する。ー

以上の文章を読んで、納得する部分があると同時に、日本では不動産屋の地位が相当低いことが良くわかった。というのも、我が輩が若いころの1970年代、不動産トラブルが多かったようで、新聞は常に「悪徳不動産屋」という言葉を使って報道していた。でも、当時はカネもないし、自分とは“縁遠い世界"と考えていたので、最近まで不動産業の動向には関心はなかった。

ところが、我が輩もトシをとるに従い、貸家を得たことから不動産屋との付き合いがデキ、色々と不動産に関する知識を得ることになった。その中で、不動産屋に対する不信感や、商行為にも疑問を感じることがあり、その辺を皆さんに伝えたくなった。

まず最初は、某不動産屋に対する不信感から記す。

○昔、某不動産屋と女性事務員の3人で飲み屋に行ったが、事前に事務員の飲み代は、我が輩が支払うと言っておいた。ところが飲み代を支払う時、経営者は「自分は出したくない」と言って、飲み代の3分の1を出さないのだ。結局、我が輩が3人分の料金1万五千円を支払うことになった。後日、別の不動産屋に話したところ、「あの男は、自分の物は自分の物、他人の物も自分の物という人間だ。お金を支払わないという話しは、よく聞く」というのだ。以下、諸々の話があるが全てカット。つまり、こんな常識のない男が、街中で30年も40年も不動産屋をやっているのだ。

続いて、あこぎな商行為と考える出来事を記す。皆さんの中には、正統な商行為と考える人もいると思うが…。

○新車を購入する際、ディーラーから「車庫証明書」が必要と言われたので、居住地を管理する不動産屋に赴き「車庫証明書」の発行をお願いした。ところが、四千五百円の料金を請求されたので、既に「車庫証明書」の発行を得ている事柄であるので、「既存の保管場所を証明する書類なのに、なぜ、こんな高額を請求するのか」と抗議したが、新車購入に必要な書類であるので言い値の料金を支払った。後日、別の不動産屋に尋ねたところ、「高いところでは七千円も取る」と言う。つまり、若い人が乗用車を買わない理由の一つに、購入費や維持費に多額のカネがかかることを挙げているが、これなどは“警察行政"で解決できる問題ではないのか。不動産屋の商行為に、おかしな“お墨付き"を与えることは考え物と思う。

○知人家屋の施設工事のため、居住地を管理する不動産屋に、関連業者の派遣をお願いした。家屋修理後、業者に「不動産屋にお礼をするのか」と尋ねたところ、「工事代金の1割を支払う」という。そこで「それでは、五千円も支払うのか」と驚くと、業者は「1割なら良い方で、中には15%、20%要求する不動産屋がいる。この話は、秘密にして下さい」と述べ、「今度、工事を頼む時には直接連絡を下さい」と言って、名刺を差し出した。

○不動産屋の事務室で、某経営者と業者との対話を聞く機会があった。業者が「あの男の仕事はしたくない。なぜなら、バックマージンが高いからだ。おそらく、業者の十人中十人とも、私と同じ思いだと思う。だって、三千円の仕事にバックマージンを要求されたら、利益が出るはずがないではないか」といい、ある不動産屋を批判した。これに対し、某経営者は「こんなことだから、“悪徳不動産"という言葉が出てくるのだ」といい、ある不動産屋を差しているのか、自らの業界のことを差しているのかは判別しないが、大いに嘆くのである。

○不動産関連の書物を読むと、よく「見積もりは3か所くらいから取った方が良い」と書いてある。ところが、現実は違う。ある時、不動産屋から見積もりを見せられたので、我が輩は「検討する」と答えた。後日、不動産屋に顔を出すと、「業者から見れば、見積もりも“カネと時間"が掛かる仕事だ」といい、以前に「検討する」と答えたことを、皮肉たっぷり蒸し返すのだ。それ以後、不動産屋から「見積もり取る?」と言われても、素直に「お願いします」とは言いづらくなった。つまり、見積もりを取ることは、不動産屋の中には“即"契約と考えている人物がいるからだ。

というわけで、皆さんが不動産屋の商行為の実態を知り、不動産屋を安心して利用するために、ある程度具体的に書いた。いずれにしても、良心的で力量のある不動産屋と巡り会えば良いが、そうではない場合には、相当不利益を被ることを覚悟しなければならない。そのくらい、不動産屋選びの善し悪しは、重要なことと感じている。