「近世蝦夷人物誌」が再々刊された

松浦武四郎の原著「近世蝦夷人物誌」が、再々刊された。10月1日の「朝日新聞」朝刊を見たところ、一面の下の広告欄に、「青土社 アイヌ人物誌 松浦武四郎 更科源蔵吉田豊[訳] 山本命解説 1800円ー北海道命名150年。アイヌに寄り添い続けた著者の稀有なヒューマンドキュメント。」という広告文面が目に留まった。なぜ故に、この広告に目が留まったかというと、現代語訳として出版された「近世蝦夷人物誌」が、既に絶版となっていたからだ。我が輩はすぐに、近所の書店に注文したところ、2日後の本日手に入った。

さっそく、新刊書のページ数を見ると368Pであった。続いて、解説(山本命)を見ると、次のように書かれていた。

ー本書は「近世蝦夷人物誌」の現代語訳として、1981年に農山漁村文化協会から出版され、その後絶版となっていたものを2002年に平凡社から平凡社ライブラリーにて再刊され、また絶版となっていたところ、松浦武四郎が生誕200、北海道命名から150年目の節目を迎えた2018年に青土社より再刊されたものである。

原著である「近世蝦夷人物誌」は、初編・二編・三編に分かれ、さらに各編とも上巻・中巻・下巻があり、全部で9巻からなる。初編は、上巻の凡例から安政4年(1857)に行われた5度目の蝦夷地調査を終えた後に箱館で執筆している。ー

引き続き、最初のページを見ると、更科源蔵の解説が掲載されていたので紹介する。

ー…この書(近世蝦夷人物誌)の出版は、幕末の箱館(函館)奉行所でもゆるさなかった。彼の歯に衣を着せない記述が、時の為政者の出版禁止となったものであることにちがいない。

これがはじめて活字になったのは、彼の死後20余年後の明治45年(1912)から、雑誌『世界』に2年にわたって連載されたのにはじまる。そのために奉行所の都合のよいように手が加えられない、彼の意志がある程度通っているものが、そのまま発表されたといえよう。ー

以上の解説文などを読むと、どうやら松浦武四郎の著書は、生誕100年、150年、200年ごとに出版されてきたことがわかる。その意味では、武四郎の代表的な著書「近世蝦夷人物誌」の現代語訳の新刊書が、生誕200年と北海道命名150年の年に出版されたことは、重ねて誠に嬉しい限りである。