古本「増補松浦武四郎」を購入した

今月1日、初めて柏市の某古本屋を訪ねた。この際、店主に「松浦武四郎の本はないですか」と尋ねたところ、店主は山積みの中から一冊の古本を取り出した。手に取ると、破れた外箱から「増補松浦武四郎」という書名の古本が出てきた。

さっそく奥付を見ると、昭和41年4月10日発行、非売品、著者兼発行者・吉田武三、印刷所・株式会社三省堂、発行所・松浦武四郎伝刊行会ーなどと印刷されていた。さらに、上部には、五百部限定版と印刷されていたほか、奥付の上に「頒価金五千五百円」という朱印の判が押されていた。次に、目次から見て行くと、前回の文章「松浦武四郎渚滑川&滝上町&アイヌ」で取り上げた「近世蝦夷人物誌」と、その中の「シコツアイノ」の文章が掲載されていた。この瞬間、この古本の購入(三千円)を決めた。

帰宅後、改めて古本を見直すと、最初の部分には、松浦武四郎が書いた地図や、北海道各地に設置された武四郎記念碑などの写真16ページが掲載され、序文には金田一京助(1882〜1971、言語学者)と、高倉新一郎(1902〜90、歴史学者)という日本のアイヌ言、及び北方文化研究の第一人者の文章が掲載されていた。最終ページを確認すると795ページもあった。

このほか、この古本には、下記のように印刷された紙が挿入されていた。

<御挨拶>

さきに各界各位・先輩・知已の厚き御支援のお陰をもって「評伝松浦武四郎」(三十八年三月)、「拾遺松浦武四郎」(三十九年六月)、「増補松浦武四郎」(四十一年四月)を未熟ながら自費刊行いたしましたところ、北海道、東京並び全国各方面より、なお続刊を出すようとの奨慂と激励の書面をいただきました。著者としてはしばらく研究だけに専念したい考えでおりましたが、前著に関連して十年余の間に傍証、発見しました北方に関する資料をこの際集成し、もって著者自身の北方への小論を述べることがなすべき有終の業であることを痛感いたしましたので、四度び不学を顧みずここに別紙の内容により少部数の限定版をもって自費刊行いたしたいと存じます。かさねて一層の厚い御支援と御痴愚をたまわれますれば残年の栄に存じ上げます。

昭和四十二年一月

吉田武三

即ち、この古本は1966年年4月10日に発行されたが、武四郎の研究者からの購入希望が多かったので、改めて翌67年1月に自費刊行したようだ。また、文面は原文に近いために、現代人にはなかなか理解出来ないので後日、更科源蔵氏などが現代文に訳して「アイヌ人物誌 近世蝦夷人物誌」(81年)を出版した。その文章が、前回紹介した「シコツアイノ」と推考した。

そのほか、著者・吉田武三のことを図書館で調べてみると、その中の一冊「現代日本執筆者大辞典」(日外アソシエーツ)に掲載されていた。

○作家、地方研究家。

○1902年6月22日生〜1978年6月29日没。

○最初の図書は「松浦武四郎」(吉川弘文館、'67)、最後の図書は「蝦夷から北海道へ」(北海道新聞社、'78)。

簡単な説明であったが、雑誌や図書に関しては、相当出版しており、市井の人ながら優れた業績を残した人物と推察した。その意味では、非常に貴重な古本を入手したと考えている。