深刻化するオホーツク北部の医療体制

昨日、オホーツク管内の友人から、遠軽・紋別地区の医療体制を嘆くメールが送られてきた。そこで、地方の医師不足の現状を知らせるべきと考え、先ずは友人の了解を得て、同人作成のメールから紹介する。

○本日、朝の降雪は40センチ。この地に移住して7年目になるが、この時期の大雪は初めてだ。しかも、湿った雪であるので、除雪が大変だ。

○遠紋地区は、人口減少が進み、50年後には自治機能が消滅するのではないか、と皆が心配している。愛知県や千葉県とほぼ同じ面積を有するオホーツク管内であるが、オホーツク北部の遠紋地区(8市町村)は、婦人科やお産ができる医療機関遠軽町のみである。加えて脳神経外科はゼロ。ちなみに、札幌市では41施設、213人の医師がいる。子を安心して産めなく、仕事もない不便な辺地に、若者が住むはずがないだろう。

紋別市の妊婦の話しを書くと、3年前に遠軽厚生病院に向かう途中、救急車内で長男を出産した。さらに、昨年9月に3人目を産んだが、長男を出産した時の恐怖が忘れられず、姉のいる札幌市に予定日の1ヶ月前から滞在した。この背景には、2015年10月、遠軽厚生病院の産婦人科医師3人が、派遣元の旭川医大に引き上げたことから一時、遠紋地区での出産が出来なくなったからだ。

○私自身、家内の通院で毎週北見の病院に行くが、冬場の悪路往復130キ ロ、運転時間の3時間は、気が抜けない恐ろしい時間だ。道路がアイスバンになっているからだ。何故に、地方の医療体制がこんな状態になったのか。つまり、戦時中までは、内務省がしっかりと国民の健康管理に努めてきた。その背景には、医師は国の命令により、何処へでも問答無用で派遣されたからだ。しかし戦後は、日本医師会が幅を利かせ、政権 与党の自民党に莫大な選挙資金を献金し、票集 めの支援をして絶大な権限を有した。その結果、厚生労働省の権限は地に落ちた。即ち、地方自治体の貧困医療対策に、眼を瞑ることに繋がった。

○このほか、地域の医療に貢献するために設立された北大医学部や札幌医科大学旭川医科大学の卒業生が、オホーツク北部の医療活動に奉仕することなく、首都圏や大都市で勤務する医師が続出したからだ。こんなことが、許されて良いのか。首都圏であろうが、オホーツク北部であろうが、国民の健康維持に関しては、一律でなければならない。

○現在、緊急な課題は、医師が積極的に地方に勤務する制度を作り上げることだ。これを守らない医師は、国民の税金から支払われた授業料の返還と医師免許の剥奪を強化すべきである。

以上のような内容であったが、と同時に、3月13日付け「朝日新聞」(夕刊)を思い出した。見出しは「地方の医師増へー認定制度を新設」(閣議決定)で、記事内容は全文下記の通りである。

政府は13日、医師の地域偏在の解消を目的とする医療法と医師法の改正案を閣議決定した。医師が少ない地域で勤務した経験者を厚生労働相が認定する制度を新設し、地方で働く医師の増加を促す。

厚労省が今後、医師偏在の指標を定め、それに基づき都道府県が「医師少数区域」を設ける。この区域で一定期間勤めると、地域医療に詳しい医師として評価され認定を受ける。開業の際に広告や看板に認定医をうたいPRできるようになる。全国に約500ある地域支援病院の管理者になる際の要件の一つにもする。

法改正案では、医師確保に関する都道府県の権限を強化する。都道府県は「医師確保計画」を策定。目標数や対策を盛り込み、大学に地元出身者の定員枠の創設や増加を求めることができるようになる。臨床研修を実施する病院の指定や定員決定の権限も国から都道府県に移す。2020年4月までに施行する。

要するに、政府も人口減少に悩む地方が、医師不足に陥っていることは把握している。我が輩も以前(15年7月26日付け)に、遠軽厚生病院産婦人科の常勤医師の退職問題を取り上げたが、依然としてオホーツク北部では、医師不足が大きな問題として残っているようだ。昨夜のネットを見ると、オホーツク北部の宗谷管内枝幸町の病院で今月、入院患者23人と職員8人がインフルエンザに集団感染し、うち患者4人が死亡したという。この事案も、貧困な医療体制が原因かと考えるが、いずれにしても、政府の計画が速やかに実施されることを願うだけである。