JR北海道の“夢ある" 将来ビジョン

今回、再びJR北海道を取り上げる。なぜなら、昨日発売の「鉄道ジャーナル」(8月号)に、注目すべき記事が掲載されていたからだ。

今月号は、JR北海道の“特集"ということで、昨年11月に「当社単独では維持することが困難」と公表した根室本線(根室〜釧路)、釧網本線石北本線宗谷本線(名寄稚内)の旅行記(一泊二日)が掲載されていた。だが、面白い記事であったものの、改善策などが全く指摘されておらず、多少不満な内容であった。ところが、国鉄改革30年その3「新幹線物流が動き出すーJR貨物JR北海道の明日につながる」(九州旅客鉄道株式会社初代代表取締役社長・石井幸考) という記事には驚いてしまった。驚いた理由は、JR北海道の目指す方向性として4つ挙げ、その二番目に「②北海道新幹線を上手に物流に使って貨物輸送基盤提供企業の立場を重要視する。将来的には札幌以遠稚内、網走、釧路方面を標準軌改築して、コンテナ新幹線の乗り入れも視野に入れる」と提案していたからだ。

石井氏の提案には、北海道の鉄道は“旅客輸送よりも貨物輸送の方が圧倒的に比重が大きい"という背景がある。例えば、「青函トンネル北海道新幹線開業以前、列車本数81本(往復)のうち51本が20両(+機関車)編成のコンテナ列車であり、30本が3〜7両の旅客列車(特急「白鳥」とローカル)であったから、通過車両数で数えるとなんと85%の貨物大動脈なのである。この事情は、北海道新幹線も同じで、コンテナ新幹線が走れば、旅客列車よりはるかに多い貨物列車が走る新幹線であることを認識するべきである」と解説している。さらに、数年前から提唱してきた“新幹線物流の動き出す時がきた"という時代分析も行っている。

このほか、石井氏は「北海道新幹線も含め青函トンネル通過列車について、旅客輸送需要が少なく、貨物輸送のほうが圧倒的に多いという視点が欠落している」と指摘して、将来的には「フル新幹線とミニ新幹線(標準軌改築)の組み合わせによって、比較的廉価な投資で標準軌化・新幹線化ができる」と説明をしている。石井氏の改革案に対しては、筆者も簡単なことではないと重々承知しているが、将来ビジョンが新幹線の札幌延伸以降である以上、今から準備できることは、今から準備するべきと思う。石井氏の改革案は、鉄道好きの者に夢を与えるし、鉄道本来の大量輸送、定時性、安全性という優れた特徴を十分に発揮するものである。

そこで筆者は、もしも30年後に札幌以遠が標準軌化した時、北海道の特急列車はどのくらい時間短縮するのかを予想してみた。その際には、さらに石北本線の石北・常紋両トンネルの建設、遠軽駅スイッチバック解消、宗谷本線の音威子府駅幌延駅間の直線化、根室本線の新・新狩勝トンネルの建設、池田駅〜白糠駅間の直線化が実現したとして予想した。まさにミニ新幹線の完成で、旅客列車の最高速度は160㌔になり、札幌から旭川間は1時間、遠軽間は2時間、北見間は2時間半、網走間は3時間、名寄間は1時間半、稚内間は2時間半、帯広間は1時間半、釧路間は2時間半になる。現在よりも、大幅な時間短縮が実現する。

石井氏は、最後に「今や必要なのはスピードである」、「世界は『鉄道は国家なり』『鉄道は国力なり』の時代に、再び来ている」と解説して終了している。その意味で、北海道の公共事業に携わる者は、多少の“夢物語"を持ち、先見性のある将来ビジョンを打ち出して欲しいのだ。