ISを巡る欧米諸国の動向など

今月発行の雑誌「選択」には、自称「イスラム国(IS)」を巡る欧米諸国の動向が、詳細に掲載されている。それもそのはず、11月13日金曜日夜、世界を震撼させた「パリ同時多発テロ事件」が起きたからである。そこで、「選択」の記事の中から、参考になる情報を転載させてもらいます。

○ISがイラク北部に侵入した際、都市部の銀行から紙幣を根こそぎ略奪したことは周知のとおりだが、石油の横流しによる財源獲得はテロ活動を支えている。米国防総省の推計では、月の収入は約4000万ドル、年間では5億ドルに上がるという。

○ISの思想的源流はサウジアラビアにあり、この国の最大の狙いはイランの打倒にある。…トルコもまた、ISを標的にするよりは、クルド族がISを圧倒し、独立するのを阻止するのが本音だろう。

○フランスの政治家は、無理難題を命じながら、都合が悪くなるとスパイを切り捨てるという伝統を持っている。仏国内にはイスラム教徒が500万人以上いると推計され、ISに加わるため、シリアやイラクに渡航した人は1400以上。…フランスの収監者の3分の1から半数がイスラム教徒という推計がある。

○武器密輸市場は、旧ソ連圏と旧ユーゴスラビアを主要供給源に、極右や極左武装集団を介して、イスラム過激派にまで広がっている。…旧ユーゴを中心にしたバルカン半島諸国には、400万丁の違法火器が出回っている。…セルビアの武器商人が、ベルギー人を介して、国際テロ組織アルカーイダに、大量の火器を売りさばいていたことも分かった。

プーチン政権が旅客機テロについて秘匿していたのは、「シリアでの空爆がテロを招いた」との構図が政権に不都合だと判断したからにほかならない。しかし、パリ多発テロを通じ、ロシア国民には「テロはどこでも起きうる」という感覚が醸成された。もはやひるむ理由はなく、プーチンは逆に「テロリストに容赦なく報復する力強い指導者」を演じ始めている。…当初はISと戦うつもりのなかったプーチンが、戦争の泥沼に足を突っ込んでいく可能性が高いと見ている。

アラビア語で書かれたテロの教科書「野蛮性の管理」は2004年、イスラム過激主義の理論家アブ・バクル・ナジがインターネットを通じて配布した、イスラム国家樹立のための指南本だ。…ISはアサド政権にとって利益をもたらす願ってもない「敵」だ。…ISの脅威は明らかに誇張されている。…今後進められるシリア分割の過程で最大の利益を得るのは、詰まるところ、イスラエルなのかもしれない。

以上の文章は、イスラム専門家が書いたものだが、東アジアの日本人には、なかなか理解出来ない内容もある。そこには、欧米諸国とイスラム諸国との攻防の歴史、地政学、民族問題、宗教問題、各国の国益などが絡み合っているからだ。しかしながら、世界が縮小している以上、日本人もISを巡る動向には注視していきたいものだ。