日本の所得上位10 %の年収580 万円は本当か?

3月10日の読売新聞は、森口千晶・一橋大教授による日本の年収層の試算を掲載した。同氏は、格差問題を論じた「21世紀の資本」の著者、トマ・ピケティと共同研究したとのこと。それによると、

○日本の年収750万〜580万の層は、所得上位5〜10%に相当する。

○日本の所得上位1%は年収1270万円以上にあたる。

ーということである。試算は、同日発売の「中央公論」に掲載されているということで、さっそく同書を購入した。

中央公論では、9人の論文が掲載されていたが、どちらかというとピケティ氏の分析を批判するものが多かった。考えてみると、「中央公論」は読売新聞社の傘下にあるので、このような人選・内容になるのかと思った。

我が輩が、何事にこだわっているかというと、所得上位10%が580万円に疑問を持ったからである。だから、詳細が知りたくて、「中央公論」を購入したが、疑問は解消しなかった。

疑問の根拠は、ただ単に我が輩の感覚だけである。我が輩も長年国家公務員を務めてきたが、580万円という年収は40代始めころの数字と思う。退職するころには、ノンキャリアの友人たちでも、皆900万前後にはなっていた。

それを考えると、どう考えても580万円は低すぎる。ちなみに、米国の上位10%は「年収1335万円以上」(1ドル=119円換算)とのこと。我が輩の感覚では、年収900万円以上と考えるが、皆さんはどう考えるか?

ところで、月刊誌「選択」によると、昨年の東大法学部卒業生は約400人で、そのうち公務員の道に71人(1990年代まで毎年150人前後)が進み、このうち中央省庁に入ったのは66人とのこと。ある法学部准教授は「昔から上位層は司法試験に抜けていたが、その中からも上級試験を受けて霞ヶ関に入る者がいた。今はロースクールに抜けるのは同じだが、上位の人間は民間、特に外資系企業に進んでいる。公務員志向は減少している」と語っている。

この動きをどう見るのか。要するに、日本のために汗を流したいという“志し"よりも、年収に魅力を感じて外資系に流れているのではないか。もう一度紹介するが、日本は所得上位1%は年収1270万円以上、米国は所得上位10%は年収1335万円以上である。これが外資系に流れる原因ではないか。やはり、東大法学部のトップクラスは、世の中のことを良く見ている。なんだか、締まりの無い文章になってしまった。