大著「21世紀の資本」を読了!

本日、ついに仏経済学者トマ・ピケティ教授の大著「21世紀の資本」(日本語版約700P、税別5500円)を読み切った。昨年12月20日ころから読み始めたので、約40日かかった。何せ、頭の回転が悪いので、同じ文章を2〜3回読まないと理解出来ない部分が多かったからだ。

本の内容は、既に新聞、週刊誌、月刊誌などで紹介されているので、詳細な“格差問題"は省く。要するに、資本主義経済では、資産を運用して得られ利益率(資本収益率)が、働いて得られる所得の伸び(経済成長率)を上回るので、資本主義とは潜在的に格差を生み出す仕組みである。その結果、米国では最上位1%の人が、所得の20%、資産の30%を占め、ハーバード大学生の親の平均収入は、米国の最富裕層2%と一致するとのことだ。

それにしてもピケティ教授、欧米での300年にわたる租税資料を分析し、我が輩のような凡人でもよく理解出来る図表を作成したものだ。世界の経済学者の中には、自説を裏付けるために都合のいいデータを選んでいる、といった指摘もあるようだが、これから新たな統計資料が出てきても、図表の形が大きく変わることはないと感じている。

さて、これから新聞などが取り上げていない、重要な部分を3つ紹介したい。一つは、日本の財政問題を考える上で参考になる部分。「…巨大な公的債務を大幅に減らすにはどうすればいいだろう?手法は3つあり、…資本税、インフレ、緊縮財政だ。…歴史的には、ほとんどの巨大公的債務はインフレで解決されてきた」(568P)。やはり、日本の借金を減らすには、インフレが最善の方法であるのか…。

2つ目は増税政策だ。「正しい解決策は資本に対する年次累進税だ。…私は本書で100万ユーロ以下の財産には0・1か0・5%、100〜500万ユーロの財産には1%、500〜1000万ユーロに対しては2%、数億や数十億ユーロの財産には5か10%という資本税率表を支持した」(602〜603P)。この方法しか、21世紀のグローバル化した“世襲資本主義"に対する有効な規制はないというのか。

3つ目は、マルクス主義者に対する批判だ。「私は経済学が社会科学の下部分野だと思っており、歴史学社会学、人類学、政治学と並ぶものと考えている。…私は『経済科学』という表現が嫌いだ。この表現はとんでもなく傲慢に聞こえる。…私は『政治経済学』という言い方のほうがずっと気に入っている」(604P)。我が輩、以前からマルクス主義者が、唯物史観を「科学的社会主義」と言っていたことに怒りを感じていた。何が“科学"か…。

という訳で、久しぶりに読み応えのある大著を読んだ。これからは、政府が大著を参考にして、国民一人一人が「日本に生まれてきて良かった」という政策を実施する番だ!