もう、日本の財政破綻は免れないのか?

筆者は、以前から日本の財政事情を心配している人間である。そこで、日本の中で一番日本の財政事情を悲観している参院議員・藤巻健史の著書「迫り来る日本経済の崩壊」を読んだ。読後の感想は、日本の財政破綻は免れないのか、という事である。先ずは、赤字国債をめぐる解説を紹介する。

○日本が財政破綻や経済破綻を免れているのは、日本銀行が大量の国債を買っているから。すなわち、ゼロ金利といわれるほどの低金利に抑えているからである。

○現在の経済状況は、円安で株や不動産価格のような資産価格が上昇しているからだ。それを「資産インフレ」といい、それが景気回復に繋がっただけである。

○財政法第4条第1項では、国の歳入は「税金と税外収入」でまかない、やむを得ない場合は建設国債を発行しても構わない。ところが、平成26年度予算は史上最大の96兆円で、41兆円が国債。それも6兆円が建設国債、35兆円が「発行などとんでもない」はずの赤字国債

○財政法第5条では、日銀の「国債引き受け」を禁止している。これは、ハイパーインフレを防ぐ先人の知恵。ところが、黒田日銀総裁の異次元の量的緩和以降、日銀は毎月発行される10年物の国債の7割以上を市場で購入。これは実質的な「日銀の国債引き受け」と言える。

そして、藤巻氏は、このままの財政政策を続けると、ハイパーインフレは簡単にやってくると解説する。

ハイパーインフレになると、それを抑える穏やかな手段がなくなる。日本では、1927年と1946年には預金封鎖と新券発行という暴力的な方法を最終的にとった。

ハイパーインフレとは、まさに大増税と同じ。すなわちハイパーインフレとは、債権者から債務者への富の移行、お金を貸している人からお金を借りている人への富の移行である。

○所得の多い人はインフレが来そうだと思うと、現金預金から外貨資産、株、不動産などインフレに強い資産に転換する。一方、所得の低い人は、現金預金を資産にシフトする余裕がない。よって、ハイパーインフレでは低所得者層が苦しむ。

藤巻氏の財政破綻を避けるための提言は、下記の通り。

○消費税5%で10.5兆円ですから、40兆円をカバーするには19%ほど上げる必要がある。よって明日から消費税を29%にすれば、少しは展望が開ける。

○税金で50兆円集め、社会保障費で40兆円を再分配では、財政が破綻しないわけがない。財政健全化には、社会保障費の削減が不可欠である。具体的には、国民皆保険をやめるとか、年金支給額を4分の1にするとのレベル。

○年金とは正式には「年金保険」という。保険とは、保険金を受け取る人もいるし、受け取らない人もいるはずだ。ならば年金は、生命保険の「長生きしてしまう」ことに対する保険なので、支給開始年齢を大幅に引き上げるべきである。

最後に、藤巻氏の現在の日本認識を紹介する。

○日本の財政破綻の原因は、日本が社会主義国家だったからである。例えば、ゆうちょ銀行という世界最大の銀行が国営である。これを社会主義といわず、なんというのか?今の日本、結果平等主義を目指している。結果平等主義は、社会主義というより共産主義である。

ここからは、筆者の見解である。確かに、国の借金が1143兆円になったことを考えると、歴代の自民党政権社会主義政策を実施してきたと思う。だからこそ藤巻氏は、「今回予想される日本の財政破綻は、社会主義体制の終焉のように思えてなりません」と結んでいる。

財政破綻に関しては、1ヶ月前にも慶応大学教授・竹中平蔵財務省出身の法政大学教授・小黒一正がテレビに出演して、“5年後の財政破綻"を心配していた。何故、日本では多数の財政や金融の専門家が警告を発しているのに、緊張感のある政策が実施されないのか、不思議である。

筆者が感じることは、1945年2月に「ヤルタ秘密協定」が交わされて、ソ連の対日参戦が決まった。しかし、日本はこの情報を入手しながらも、何の対策を取らなかったことで、約300万人の人命、更に千島列島樺太という領土を失った。要するに、我が国は事前に国家の危機が迫っていても、何の対策もとれない国家なのか、という事である。これは、日本人の体質なのか、それとも文化なのか、と考えてしまうのだ。